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246.滅ぼすも残すも胸ひとつ

 謁見の間に集まった面々を眺め、玉座に座る。ばさりとマントを揺らすオレの前に、種族も世界も異なる者達が並んでいた。


 アガレスがモノクルの縁を弄る。珍しく緊張していた。彼らがその気になれば、世界を取るどころか滅ぼすことも可能なのだ。ごくりと喉を鳴らしたアガレスが、ことさら時間をかけて目を閉じて開いた。その間に覚悟を決めたのだろう。彼の表情が引き締められる。


「ご報告申し上げます」


 口火を切ったアガレスから報告された内容は、グリュポス跡地に入植した民が無事に到着した話から始まる。ビフレスト王宮を滅ぼした民が国家併合を申し入れたこと、イザヴェルと同盟を組んだユーダリルが一時撤退を選んだことが告げられた。このあたりまでは予定通りだ。


 山岳民族のキララウスは動かず。テッサリアから大量の食糧が送られる手筈が整ったことも付け加えられた。この大陸に存在した人間の国は7つ――現在時点で国としての体面を保っているのは4か国である。


 魔王が支配するかつての聖国バシレイア、同盟を結んだテッサリア、敗走したユーダリル、沈黙のキララウス。肘をついて姿勢を崩すことで、他の者が口を開いた。


「ユーダリルを滅ぼすなら、弱体化した今がよろしいかと」


 侵略を進言するのは黒竜王アルシエルである。彼の隣で少年姿のウラノスが唸った。


「しかし、難民をどうする」


 ユーダリルを滅ぼせば、さらに難民が増える。イザヴェルに関しては王都の民を滅ぼしたため、流れてくるのは農民ばかりとなった。兵士はすでに戦場で散らしてある。農民ならば難民として受け入れても、開拓の即戦力として数えることが出来た。


 ユーダリルは本国が無傷のため、国を亡ぼす際の民の処理方法が問題だと告げるウラノスは、銀髪をくしゃりとかき乱した。


「同じ方法でいいじゃない」


「ここは人間が多すぎるわ」


 双子神のバアルとアナトは簡単そうに皆殺しを主張する。邪魔者は排除すればいい――簡単すぎるルールだった。前の世界ならとっくに滅ぼしている。しかしこの世界が思いのほか甘く温いと知り、こうして議論に応じる余裕を見せた。


「私が戦う」


 身体を動かしたいのだとククルが主張した。翼ある蛇はこの世界で見かけていないが、彼女も堕落した神に連なる実力者だ。好戦的な彼女は双子に先を越されたのが悔しいのか、唇を尖らせて抗議した。その隣でクリスティーヌはにこにこと機嫌がいい。


「話し合いの余地はありませんか? 滅ぼさずとも従えて管理させる方法もあると思います」


「王族を管理人として残せば、確かに難民は出にくいわ」


 ロゼマリアの提案に、オリヴィエラは賛同した。これ以上難民を受け入れる余裕がない以上、最初から難民を出さない方法を検討するのもひとつだ。頷いてそれぞれの意見を聞くオレの耳に、リリアーナが声をあげた。


「私はお留守番がいい。この城を守る」


 今までの彼女から想像も出来ない発言に、彼女を知る全員が言葉を失った。

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