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【完結】魔王なのに、勇者と間違えて召喚されたんだが?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第7章 踊る道化の足元は

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181.まだ実験段階の理論だぞ

 謁見の間を使おうと考えたが、アガレスに拒否された。せっかく直したのに、壊されるのは困るらしい。リリアーナの尻尾の揺れの激しさに、アガレスの懸念を拭うのは無理だと判断した。


 執務室も書類があるため、消去法で中庭に集まる。しかし噴水が被害に遭わないよう、離れた場所に椅子を並べた。


 オレが先に腰を下ろす。まだ目が覚めないアナトを長椅子へ横たえた。少し機嫌が直ったリリアーナが一番近くに座り、その隣にクリスティーヌ、ウラノス。反対側にアガレス、マルファス、正面はオリヴィエラとロゼマリアとなった。


 真ん中に置いた円卓に身を乗り出すリリアーナの尻尾が、ぴたぴたと地面を叩く音がする。貧乏ゆすりと同じでマナー違反なので、あとで注意しておこう。人前で注意されると、上位魔族は機嫌を損ねてしまうため、そこは最低限の気遣いが必要だった。


 ふらふらとレーシーが中庭を歩き回っている。あれは説明を求めるタイプではないので、事後報告で済ませることにした。基本的に欲に忠実なリシュヤも後で構わない。


「サタン様、その子は誰?」


 直球で駆け引きのないリリアーナの言葉に、オリヴィエラが吹き出した。ドラゴンの金瞳に睨まれて、口元を押さえて誤魔化す。


「召喚前の世界で部下だったアナトだ」


 簡単すぎる説明に、ウラノスがにやにやと笑う。少年の外見だが、中身はかなり長く生きた吸血種だ。厄介な相手だが、吸血種の忠誠心の激しさはアースティルティトで懲りていた。疑う余地はない。


「ふーん、なんで抱っこするの」


 自分だって滅多にしてもらえないと唇を尖らせるリリアーナに、クリスティーヌも頷いた。愛玩動物の嫉妬は養い子にも向かうのか、凄まじい感情に驚く。魔族は喜怒哀楽や執着が激しい種族ばかりだった。それでもペット同士の嫉妬から始まり、この世界の魔族が持つ独占欲は激しい気がする。


 今後のために覚えて、気を付けてやらねばならない。愛玩動物はストレスに弱いと聞くからな。


 納得するオレを、ウラノスは楽しそうに見つめ指先で魔法陣を描いていた。それを見たクリスティーヌが別の魔法陣を描いて重ねる。正解だったらしく、ウラノスは子供の手でクリスティーヌの黒髪を撫でた。


 微笑ましい一角をよそに、ロゼマリアは眉尻を下げて複雑そうな顔をしていた。


「どうした? ロゼマリア」


「ローザで構いません。部下の方はどうやってこの世界に来られたのですか? もう召喚魔法陣は壊したはずですわ」


 もっともな疑問だ。召喚された対象が仮死状態ということも、まずあり得ない現象だった。椅子に寄り掛かったオリヴィエラは、隣のロゼマリアの金髪の毛先を弄りながら、それでも話に興味があるらしい。こちらから視線を外さなかった。


「収納の亜空間を使った、物資の転送だ。互いの持ち物を終点とした手紙のやり取りはあったが……先日仮死状態の魔物が送られてきた」


 そこで言葉を切って額を押さえる。


「まさか、実験段階でアナトを転送するとは思わなかった」

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