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【完結】魔王なのに、勇者と間違えて召喚されたんだが?  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第7章 踊る道化の足元は

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180.オレの躾が悪かったらしい

 流れていく魔力が目に見えるほど、急速にウラノスから力が失われていく。伸ばした手を触れ、ウラノスの残った僅かな魔力に波長を合わせる。難しい調整に眉をひそめ、目を閉じて集中した。変換効率が悪いが、多少のロスは仕方ない。事前に準備をしなかったこちらが悪いのだ。


 大量に流し込んだ魔力がウラノスを後押ししたのか。彼はアナトの額から手を離した。ほっとした様子で覗き込んだ直後、ウラノスは倒れ込んだ。


「……ぐ、うっ」


 うつ伏せて腹を押さえて蹲る。何事かと抱き起すが、ムッとした顔のアナトが彼の腹に拳を叩き込んでいた。目覚めたばかりなのに好戦的な彼女に溜め息をつく。一応命の恩人という形なのに、恩を仇で返すのは躾が悪かったのだろうか。


 過去の己の言動を振り返り、オレはウラノスに治癒を施した。


「酷いですな……まったく、親の顔が見たいものです」


「悪かった。オレが育てた」


 アナトとバアルは双子で、落とした砦に置き去りにされた幼子だった。実際に面倒を見たのは軍魔達だが、拾った責任者がオレである事実は揺るがない。前世界ではオレの養い子として認識されていた。


 ウラノスを攻撃したのは、アナトはバアルに比べて情緒が発達している。目が覚めた状態で見知らぬ少年が覆いかぶさっていれば、攻撃するのは当然だろう。これが双子のバアルなら殴りつけたと思われた。彼女はアナトより攻撃的で、身体能力も長けている。


「なるほど。我が君の養い子なら納得です……痛っ」


 途中で身を起こしたウラノスは呻くが、すぐに治癒で痛みや傷が消えた。礼を言って身を起こしたウラノスが、そっと手を差し伸べる。状況が理解できずにきょとんとした顔のアナトは、瞬きしてからウラノスの手を取った。起き上がって、頭痛を耐えるように顔を顰めたあと……ようやく気付く。


「あ、シャイターン様! 私、来られたの? お側に……う、っう」


「落ち着け」


 涙を零して抱き着いたアナトを受け止め、彼女の背中を叩いてやる。よく夜中に起きて泣いたのを宥めた記憶が蘇った。抱き上げて一緒に眠っても、悪夢を見たと泣きながらしがみ付かれた。あの頃から時間は経過したのに、何も変わっていない気がする。


 リズムよく叩いてやると、ようやく落ち着いてきた。泣きながら服に顔を埋めるアナトは、疲れからか眠ってしまう。この世界に来る前と同じように、片腕で抱き上げた。


「我が君、彼女だけですかな?」


 何かを感じ取ったらしいウラノスの指摘に、首を横に振った。腕の少女は首に手を回して抱きつくが、色っぽさはない。感じるのは、幼子の頃と同じ感情だった。


「あと3人だ」


「でしたら、あちらの4人のフォローをよろしくお願いしますぞ。あの様子では、明日の勉学に身が入らぬでしょう」


 言われて視線を向けた先で、地面に尻尾でヒビを入れながら鼻水や涙を流すリリアーナに気づき、苦笑いが浮かぶ。途端に頬を染めるオリヴィエラ、リリアーナを慰めながら困った顔のロゼマリア。むっと唇を尖らせたクリスティーヌ……確かに説明が必要だった。

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