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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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ハリセン・ポッターとダンスパートナー

 鬼一きいち遺体いたいが警察署に運ばれて行き、DSPデビルスペシャルポリスのメンバー達がった後の現場では、一羽のカラスが飛び立とうとしていた。

 が、いきなり何者かにつかまれて、グシャとにぎつぶされてしまった。

「そのカラスは、なんや?」

 にぎりつぶされたカラスからは血が流れず、金属片きんぞくへんがパラパラとくずれ落ちていく。

偵察用ていさつようのロボットですよ。おそらく、この現場で起こった事は、すべて白鬼はっきさんの元に送られているはずです」

 鬼塚おにづか川島かわしまであった。

「しかし、あの死の魔神ってのは恐ろしいやつやな。俺は、ちょっとビビって出したらアカンもんが出てもうたわ」

「あれは、そうとう優秀な術者じゅつしゃだけが、命と引きえに呼び出せる魔神です。もう二度と見ることは無いでしょう」

「そうなんや、それやったら良いんやけど」

「それよりも、早く夜叉やしゃさんに今回のことを伝えましょう」

「えっ、今からか?」

「そうですよ。白鬼はっきさんの事は、すぐに伝えろって言われてたでしょ」

「明日じゃ、ダメかな」

「ダメでしよ」

「アカン、おなかが痛なって来た」

 鬼塚は、腹部ふくぶを押さえて、うずくまった。

「アンタは小学生ですか、まったく。しっかりして下さいよ、スマホで電話すれば良いだけじゃないですか」

「お前は簡単に言うけど。俺には、それがむずかしいんや。夜叉やしゃさんに電話しないとアカンと思っただけで、食欲しょくよくと戦闘力とスマホの指紋認識能力しもんにんしきのうりょくが落ちるんや」

「食欲と戦闘力までは、わからんでもないですが、なんでスマホの指紋認識能力しもんにんしきのうりょくまで落ちるんですか?」

「いや、なんでか指紋しもん萎縮いしゅくしてもうて、スマホが起動しないんや。だから電話がかけられへんのや」

鬼塚は、よくわからない言いわけをして、夜叉やしゃへ電話をかける事をこばんでいる。

わけのわからない事を言ってないで、さっさと電話して下さい!」

 そろそろ川島がキレかけて来た。

「そんなに怒るなや。今から、かけるがな」

 という具合ぐあいに、川島にキレられながら、しぶしぶ夜叉やしゃに報告する鬼塚であった。



 大阪の北区で行われた鬼一きいち葬式そうしきには、東京から安倍康晴あべやすはるけつけて来た。

 東京から鬼一きいちを、大阪DSPに連れて来た責任を感じているのであろう。

 参列者さんれつしゃは、ほとんどが警察関係者である。

「あのは確か」

 まだ10代だと思われる女の子が泣いているのが見えた。

ーー確か虎之助とらのすけというDSPの転生者だ、鬼一きいち君が付き合っているとメールで言ってたな。鬼一きいち君が死んでつらいだろうなーー

 しばらく、泣いている虎之助をながめていた安倍康晴あべやすはる

ーー兄に続いて鬼一きいち君まで亡くなるとは。さいわい東京は落ち着いている事だし、次の顧問こもんが決まるまでは自分は大阪に残ろうーー

 と決心した。



 葬式そうしきの翌日に、桜田刑事と共に安倍康晴あべやすはる宿舎しゅくしゃにやって来た。

「今日から、しばらくの間、臨時りんじ顧問こもんつとめさせてもらう安倍康晴あべやすはるです」

 安倍は、みんなに挨拶あいさつした。とはいっても武蔵むさしと少年である左近さこん以外とは、以前に会ったことがある。

臨時りんじということは、短期間ということですか」

 岩法師いわほうしが聞いた。

「私は一応いちおう、東京DSPの顧問こもんなので。それに、正式に大阪の顧問こもんになってもらいたい人が居るんだ。まだ交渉中こうしょうちゅうなんだが」

「へえ、どんな人やろ?」

 小太郎こたろうは、興味きょうみがありそうにしている。

「まだ言えないが、たよりになる人だ。それまでは私が代理をつとめるので、よろしくたのみます」

 安倍は軽く頭を下げた。

「こちらに、よろしくお願いします」

 DSPのメンバーたちも頭を下げる。

 しかし、虎之助の姿が見えない。

「虎之助が居ないようだが」

 気になって、安倍がたずねた。

「どこかに出掛でかけてしまいました。鬼一きいちさんが亡くなってから、姉さんはれてるんですわ」

「そうか、恋人を亡くしたのだから無理もないな」

 自身も鬼一きいち前任ぜんにん顧問こもんであった兄を亡くしている安倍は、虎之助にひどく同情した。



 そのころ鬼一きいちうしなった虎之助は、連日ゲームセンターに入りびたり、UFOキャッチャーとプリクラに熱中していた。

ーーショッピングセンターにあるゲームセンターは、子供向けのゲームしか置いてないので、つまらないでござるーー

 と、不満に思いながらもグレていた。

「ちょっと、お姉さん」

 不意ふいに声をかけられて振り向いて見ると、なんとハリセン・ポッターである。

「おぬしは、魔法学校に帰ったんじゃなかったのござるか」

 疑問ぎもんに思い虎之助が聞くと。

 下を向きながらハリセン・ポッターは

「一度、帰ったけど。今夜、魔法学校でダンスパーティーがあるんだ」

 とずかしそうに言った。

「そうなのでござるか。それで拙者せっしゃに、何か用でござるか」

「それが、その」

 ハリセン・ポッターは赤くなって、うつむいている。

「何でござるか」

「実は、その……」

 ハリセン・ポッターは、モジモジしてハッキリと話さない。

「用が無いのなら、拙者せっしゃはもう帰るでござる」

 虎之助は席を立ち、ゲームセンターから出ようとした。 

「僕のダンスパートナーに、なってしいんです」

 思い切ってハリセン・ポッターは、大きな声でたのんだ。

「ダンスパートナー?」

「実は、僕だけダンスパーティーのパートナーが居ないんです。あなたのような美しい女性が来てくれるとうれしいのですが」

拙者せっしゃが、でござるか?」

 ハリセン・ポッターから、いきなりのさそいに戸惑とまどう虎之助であった。

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