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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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金鬼の出動でござる

 オフィス内ではたらいている黒瀬くろせには、新たななやみが増えていた。

 日本テクノロジーコーポレーションは、鬼が牛耳ぎゅうじっているとはいえ、9割以上の職員は普通の人間であり、黒瀬が鬼武者おにむしゃであることを知っている者は、ほんのわずかしかない。

 最近、どうも女性職員が、よそよそしいので、鬼特有おにとくゆう地獄耳じごくみみで女性たちの噂話うわさばなしいてみると、黒瀬が未成年みせいねんと思われる若いむすめを連れまわしており、ロリコンと淫行いんこううたがいを、かけられているらしい。

 確かに、あれから何度か虎之助とらのすけから呼び出され、そのつど食事をおごらせれている。

 それを女性職員の誰かに見られたらしい。

ーーなんで俺がこんな目に。殺すと、おどされながらおごらされているだけなのに、本当に俺はついていないーー

 落ちんでいる黒瀬のディスクの内線ないせんった。

鬼塚おにずかだ。手がいたら、すぐに社長室に来てくれ」



 社長室に呼び出された黒瀬は以前の自分とはちがって、おどおどしている事に気がき、意識いしきして背筋せすじばしながら社長室に入っていった。

 もしかして、虎之助と会っていることが社長の耳に入ったのでは、と警戒けいかいしていると。

「来たか黒瀬。お前にたのみたい事があるんやが」

 どうやら、思っていたのとちが要件ようけんらしい。

「なんでしょうか?」

牛鬼ぎゅうきの力をためしてみたい。DSPのさむらい陰陽師おんみょうじが良いと思うんだが、若林わかばやし一人では、良くわからんやろうから、一緒いっしょに行ってもらいたいんや」

「私と若林の2人で、ですか?」

「そうや。ただ、今回は牛鬼ぎゅうきの実力を見るのが目的やから、お前は手を出さなくても良いからな」

「わかりました。それで、あの小娘こむすめはどうします?」

「よっぽど、あの小娘こむすめこわいみたいやな。安心して良いで、小娘こむすめ金鬼きんき始末しまつすることになったから」

「そうですか、わかりました」

 社長室を出ると、安堵あんどの気持ちと同時に、不安がおそって来た。

 あの金鬼きんきか、四天王の中でも最強さいきょうというより最狂さいきょうの鬼じゃないか。残虐ざんにんおそろしく強い。

 女子供おんなこどもであろうと平然へいぜんと、なぶり殺してかららう悪鬼あっきだ。

 しかも身体からだはがねよりかたく、刀など武器での攻撃こうげき通用つうようしないとなると、さすがの虎之助でも勝ち目は無いだろう。

 まあ、虎之助が消えてくれるのは、黒瀬にとってよろこばしい事ではあるのだが。



 営業部えいぎょうぶの部長である日下くさかは、ご機嫌きげんであった。なぜなら、ひさしぶりに若い娘がえるのだから。

 日頃ひごろは、メガネが似合にあ堅物かたぶつイケメン部長で通っているが、正体は四天王最狂してんのうさいきょう人食ひとくい鬼『金鬼きんき』である。

 最強さいきょう最悪さいあくではなく、最狂さいきょうと言われるのには理由がある。人食ひとくいにかんしては、四天王で一番イカれているからだ。

 普段ふだんは『大阪鬼連合団体おおさかおにれんごうだんたい』から派手はで人食ひとくいはひかえるようにと言われており、我慢がまんしているのだが、今日は社長から直々に転生者てんせいしゃの娘をって来い、という指示しじがあった。

 それも、とびきりの美少女らしい。どうやって殺して、どこからうのか、想像そうぞうしただけでもヨダレが出てくる。

 黒瀬から、その娘が良くあらわれる商店街も聞いている。娘は商店街のコンビニで、お菓子かしを買うのが日課にっからしい。

 早く行っていたい。

「部長、今日はご機嫌きげんがよろしいみたいですね、なにか良いことでもありましたか?」

 あまりにも日下くさかがニヤついているので、営業課長えいぎょうかちょう増田ますだが、たずねてきた。

「ちょっとね。別にたいした事はないザンスよ」

ーー出た。一年に一度、出るか出ないかの、超ご機嫌きげんの時にしか出ない、日下くさか部長のザンスぶしがーー

 増田ますだひさしぶりに、ザンスぶしを聞いた。

「そうだ。僕はこれから得意先とくいさきの所に行って直帰ちょっきするから、後は、よろしくザンス」

ーーさっそく、今から、おたのしみかよーー

「わかりました。お気を付けて」

 増田ますだに後をまかせて、日下くさかむすめがよく立ちる商店街へと、ニヤつきながら向かった。



 岩法師いわほうし人気ひとけの無いグラウンドで、稽古けいこしょうした立ち合いをおこなっていた。

 相手は、当然とうぜんのことながら、狂四郎きょうしろうである。

 見届みとどけ人として左近さこんさそったが、左近はことわり一人で出掛でかけてしまった。

 また、剣の稽古けいこにでも行ったのであろう。

「では、まいるぞ狂四郎」

 岩法師は薙刀なぎなたを狂四郎に向けた。

「来い!坊主ぼうず

 対する狂四郎は、日本刀にほんとうである。

 岩法師の薙刀なぎなたが、狂四郎の顔をねらってりかざされた。

 狂四郎は、難無なんなくかわして、逆に岩法師をりつける。

 岩法師は、すぐさま身をかわす。

 双方そうほう互角ごかくに戦っていたが、やや狂四郎が優勢ゆうせいになって来た。

「おぬしのような若造わかぞうに使うのはひかえておったのだが、法力ほうりきを使わせてもらうぞ」

 と言なり、岩法師の姿すがたがスッと消えた。

「消えた。これが法力ほうりきか」

 狂四郎は気配けはいを感じ取ろうと、五感ごかんました。が、岩法師の居所いどころはわからない。

「ならば、俺も仙道せんどうを使わねばならないな」

 狂四郎はかまえを変えた。

「オッサンに使うのは始めてだが、やむをない。新田流仙道にったりゅうせんどう透視術とうしじゅつ』」

 両手の指を眼鏡めがねのように丸くして、のぞきんだ。

「あれっ、なにも見えないや」

ポカッ!

「痛っ!」

 狂四郎は、頭を軽く岩法師になぐられた。

「バカ者!」

 岩法師が姿をあらわしている。

拙僧せっそうの姿くらましのじゅつを、透視術とうしじゅつで見つけるのは、間違まちがってるだろ!」

「そうかなぁ?」

透視術とうしじゅつってものは、邪魔じゃま物体ぶったいかして見るじゅつだろう。消えている拙僧せっそうを、さらにかしてどうする、よけい見にくくなるわ!」

「そう言われれば、そうなのか。俺は幼少ようしょうころからいくさばかりで、勉学をするひまが無かったからむずしいことは、わからないや」

ーー最近の転生者てんせいしゃはアホばかりなのかーー

 岩法師は、狂四郎のアホさ加減かげんに、あきれてしまった。

「いや、たいしてむずかしくないと思うが。それに、さっきお前『オッサンに使うのは始めて』と言っていたが、もしや女性に使ったことは無いだろうな?」

「ある!」

 狂四郎は、むねって堂々と答えた。

ボカッ!

 狂四郎は、頭を強くなぐった。

「何しやがる、この生臭なまぐさ坊主ぼうず!」

えらそうに言うな!現代では犯罪はんざいだぞ。われらはかりにも警官だ、女性を透視とうしなんかしたら、桜田刑事さくらだけいじ射殺しゃさつされるぞ」

「そうなのか?」

「そうである」

 その時、式神しきがみのヤモリが岩法師のもとり、なにやら報告ほうこくした。

「なんと!それはマズい」

 岩法師がヤモリと話しているのを、狂四郎は不思議ふしぎそうに見ている。

急用きゅうようができた。稽古けいこは、また今度だ」

 岩法師は、素早すばやく走りって行ってしまった。

 一人になった狂四郎は

「今から良い所なのに、なんだあのクソ坊主ぼうず

 と、ふくれるのであった。

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