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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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夜刀神

 川島かわしまがグッピーちゃんと一緒いっしょに、スーパーゼウス人にっ飛ばされた処刑鬼隊しょけいおにたいさがしていると、携帯に電話がかかって来た。

「はい、川島です。ああ夜叉やしゃさんですか。社長があんまりいやがるんで、ゼウスは私一人でりました。えっ、あの鬼教官おにきょうかんを社長につけるんですか?大丈夫だいじょうぶですかね。はい、わかりました」

 電話を切ると「はぁ」と、ため息をつく川島。

「どうしたの、専務せんむさん?」

 横で聞いていたグッピーちゃんが、心配して、たずねてきた。

ーー社長の不甲斐ふがいなさに、ごうやした夜叉やしゃさんが、大阪に鬼神直属きしんちょくぞくの鬼教官を送り込んで来るとの事だが、グッピーちゃんに話すと、すぐにSNSで拡散かくさんされるからなぁ。適当てきとう誤魔化ごまかしておこうーー

「いや、ちょっと京都から人が来ることになってね。それよりも残りのメンバーを探さないと」

「そうね、風鬼ふうき水鬼すいきがまだ見つかってないし」

「水鬼は日本海まで飛ばされたらしいから、自分で帰って来るだろう。とりあえず風鬼を見つけたら、本社にもどろう」

 2人は、風鬼の捜索そうさくを続けることにした。



 ロマノフ議員とラスプーチンが去った国際電器保安協会こくさいでんきほあんきょうかいギリシャ本部では

「ロマノフ議員って何者なんですか?あのラスプーチンが素直すなおに言うことを聞くなんて」

 ハルバトスは不思議ふしぎがっている。

「君は知らなかったのか。ロマノフ議員っていうのは表向おもてむきの名で、彼はスヴェントヴィトと呼ばれるロシアの神だ」

 グリゴリオス局長が、説明する。

「へえ、ロシアの神だったのですか。でも、ラスプーチンは同じく神であるゼウス様に対しては横柄おうへい態度たいどでしたが、スヴェントヴィトってゼウス様より力があるんですか?」

「彼は国際電器保安協会で最強の戦士と言われている。長年の間に堕落だらくしていたゼウス様とはちがって、現役バリバリの闘神とうしんだ」

「確かにゼウス様は、高名こうめいである事にあぐらをかいて、だらけていましたからね」

「今後は、我々もヘスティア様を中心に、ギリシャ本部を立て直さないとな」

「そうですね、がんばりましょう」

 と、本部再建ほんぶさいけん意気込いきごむ2人であった。



 虎之助とらのすけ宿舎しゅくしゃのお風呂からがると、食堂で鬼一きいち岩法師いわほうしがビールを飲みながら話し込んでいた。

 めずらしく鬼一きいちは、顔を真っ赤にしながらぱらっている。

「ビールという物は、美味おいしいのでござるか?」

 虎之助は身体からだが、まだ未成年であるため、ビールを飲んだことが無い。

「最初は少し苦く感じたが、なぜかクセになる味だな」

 岩法師の説明を聞いて、虎之助も飲んでみたくなって来た。

拙者せっしゃも飲みたいでござる」

「ダメですよ姉さん。われわれ未成年は、ラムネで我慢がまんしないと」

 小太郎こたろう左近さこんは、となりのテーブルでラムネを飲んでいる。

「今どきラムネって。風呂上がりは、せめてコーヒー牛乳が飲みたいでござる」

「しょうがおまへんがな、宿舎しゅくしゃ冷蔵庫れいぞうこにはビールとラムネしか常備じょうびされてまへんのや」

 そこへ、武蔵むさしも男湯から出て来た。

 武蔵は冷蔵庫からビールを取り出すと

「やっぱり、風呂上ふろあがりのビールは最高っスね」

 と言いながら、ビールをグビグビ飲みだした。

「武蔵、ビールは美味おいしいでござるか?」

「ウルトラワールドワイドに美味うまいッス。特に暑い日は最高ッスね」

ーーなんかムッチャむかつく、今すぐブッ殺してやりたいでござるが、昨日は肩車かたぐるまとオンブしてくれたので、がまんするでござるーー

 しぶしぶ、虎之助が我慢がまんしていると、鬼一きいちのスマホに電話がかって来た。

「なるほど了解りょうかいしました」

 電話を切ると鬼一は

梅田うめだに鬼が出た。今から桜田刑事がむかえに来るので、みんな出動だ」

 と、メンバーに伝える。

 左近と岩法師を留守番るすばんに残して、他の転生者たちは桜田刑事と梅田に向かうことになった。

「今回も、武蔵と合体技がったいわざを使うでござる」

 車中しゃちゅうでの虎之助は、やる気まんまんである。

「僕は、今回は合体しないッスよ」

 武蔵は、前回の合体でりているようだ。

「ダメでござる、合体するでござる」

 虎之助はゴネている。

「姉さんも合体技がったいわざがあるんでっか、奇遇きぐうでんなぁ、じつは俺もすご合体技がったいわざを開発したんですよ。陰陽道おんみょうどうを進化させて、巨大なりゅうになれるんです」

 小太郎が自慢じまんげに言った。

「本当か、すごいじゃないか」

 まだよいが残っている鬼一は、感心しながら小太郎の自慢話じまんばなしを聞いている。



 そのころ梅田うめだ繁華街はんかがいでは、数人の鬼が出現しゅつげんしてあばれていた。

羅漢鬼らかんきさん、川島さんのむかえが来るまで、目立めだつことをしてはこまりますよ。貴方あなた鬼塚おにづかさんの鬼教官おにきょうかんとして来ているんですから」

 よく見てみると、人をおそっているのは羅漢鬼らかんきと呼ばれる一人だけで、あとの鬼は止めているようである。

「これだけさわぎを起こせば、DSPの連中がやって来るだろう。鬼塚に会う前に、大阪の転生者の実力を見たいのでな」

 羅漢鬼らかんきは、人をおそうのを止めてあたりを見回した。

 そこへ転生者たちが到着とうちゃくした。

「あそこにゴッツイ鬼がおるで」

 真っ先に小太郎が羅漢鬼らかんきを見つけて、向かって行く。

「ちょっと待てよ。お前、合体技がったいわざを出すんじゃなかったのか?」

 狂四郎があわてて、追いかけて来きた。

「あっ、そうやった」

 小太郎が虎之助のいる方を見てみると、虎之助は、また武蔵と喧嘩けんかしている。

肩車かたぐるましてくれないなら、武蔵、おぬしを殺すでござる」

「こっちこそ、られる前にってやるッス」

 と、おたがい刀をいて、味方同士みかたどうしで殺し合いを始めた。

「あの2人は、もうダメや。しゃーない、もう、お前でいわ」

 小太郎は合体相手がったいあいてを、狂四郎で妥協だきょうすることにした。

「えっ、俺はいやだ」

 狂四郎は、キッパリとことわる。

「ええから、いくで『友情合体魔竜ゆうじょうがったいまりゅう』」

 いやがる狂四郎に対し、強引に小太郎は合体技をかけた。

 『友情合体魔竜ゆうじょうがったいまりゅう』とは、おたがいの友情が強ければ強いほど、強力なりゅうに変身できる合体技である。

 小太郎がじゅつとなえると

 プシューと大量のけむりが出て来て、2人はけむりつつまれた。

 煙の中で小太郎と狂四郎は合体し、竜神りゅうじんである夜刀神やとのかみへと変化して行く。

「やった、成功や」

 と、小太郎はよろこんでいるが

「いや、ちょっと待てよ。なんか小さくないか」

 狂四郎の言う通り、竜神にったのは良いが、サイズが、かなり小さくヤモリほどの大きさある。敵の鬼が恐ろしく巨大に見えている。

「しもた。俺と狂四郎には友情なんて、これっぽっちも無かったわ。俺とした事が大失態だいしったいや」

 鬼の一人が、こちらに歩いて来る。

「ヤバい、この大きさでは勝ち目はない。小太郎、撤退てったいするぞ」

 カサカカサカサと、自販機じはんきの裏に逃げて行く夜刀神やとのかみ

「もう、4人とも何してんのよ!鬼一きいちさん、なんとかして下さい」

 あきれた桜田刑事が鬼一の方を見ると

「オエーッ」

 路地裏ろじうらで鬼一がいている。

 れないビールを飲んで、ぱらって車に乗ったため悪酔わるよいしたようである。

 敵を目前もくぜんにした大阪DSPは、戦う前から壊滅かいめつ寸前すんぜんになっていたのであった。

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