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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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川島とゼウス

 日本テクロノジーコーポレーションの社長室では、鬼塚おにづかがアイコスをいながらかんがえ事をしていた。

ーーレムリアの屋敷やしきで、国際電器保安協会こくさいでんきほあんきょうかいやつらを撃退げきたいしたのは良いんやが、川島かわしまがあんなに強かったとは知らんかった、大阪の鬼の頂点ちょうてんに立つ俺の立場たちばが無いやんけ。川島のやつ、電車にかれて即死そくしせえへんかなぁ、それか、痴漢ちかんとかで逮捕たいほされて、終身刑しゅうしんけいになれば良いのにーー

 と、川島に対してみにく嫉妬しっとをしいると

ガチャ

 いきなりドアが開いて、川島が入って来た。

「社長、大変です!」

「なんや?お前、痴漢ちかんでもしたんか」

「そんな事するわけないでしょう。今、処刑鬼隊しょけいおにたいもどって来たゼウスと、戦っているそうなんです」

 川島が報告ほうこくする。

「そうなん。まあ、ゼウス一人ならたいした事ないんちゃうの。この前、夜叉やしゃさんにヤラれて弱ってるやろうし」

 鬼塚はアイコスをいながら、適当てきとうに返事をする。

「それが、えらいパワーアップしたらしくて、自分ではスーパーゼウス人って名のっており、処刑鬼隊がまとめてばされたらしいんです」

「スーパーゼウス人。何それ?ふざけてるんか」

「なんか、メチャクチャ強くなってるみたいです」

 鬼塚はアイコスを一口吸ひとくちすうと、良い考えがかんだようで

「そうや、黒瀬くろせ若林わかばやしを連れて、お前ちょっと見に行って来てくれ」

 と、川島に指示しじを出した。

「おことわりします」

 川島は眼鏡めがねのフチをさわりながら、はっきりとことわった。

「ええっ!ことわるんかいな」

 鬼塚はおどろいた。今まで真面目まじめな川島が社長の指示しじことわることなど、ほとんど無かったからである。

「ここは、社長の出番でばんでしょう。社長がキッチリたおして、大阪の鬼たちに威厳いげんを見せないといけません」

 川島はとうな理由を付けて、キッパリと言い切った。

「いや、ココは専務せんむである君の出番でばんやろ」

 根拠こんきょは、まったくないが、鬼塚も負けずに言い切った。

専務せんむって、私は専務せんむではありませんよ」

「いや、君は専務せんむやで」

「そんなの聞いてませんよ、いつからですか?」

たしか、5年前ぐらいからやな。社内の者はんな知ってるで」

「なんで、本人の私だけ知らないんですか?」

「言ったらおこると思って、だまってたんや」

出世しゅっせしたんだから、怒るわけないでしょう」

ーーあっ、そういえば川島を専務せんむ推薦すいせんしたんは、鬼神の夜叉やしゃさんやった。なんでやろ?ーー

 急に鬼塚がなやみ出した。

「社長、聞いてますか?」

 鬼塚がだまんでしまったので、川島は心配になってきた。

「あ、いや、聞いてるけど。ちょっと考え事をしててな」

ーー夜叉やしゃさんは、専務せんむ推薦すいせんするぐらいやから、川島のことを知っていたはずや。どういう経緯けいいで知ったんやろ?川島の戦闘能力せんとうのうりょくの高さに関係あるんやろうか?ーー

 鬼塚がふたただまんでしまったため、川島はあきらめて社長室から出て行ってしまった。



 そのころ武蔵むさし虎之助とらのすけ肩車かたぐるましながら、スーパーゼウス人に突撃とつげきしていた。

二天一流にてんいちりゅうみだり』」

 武蔵が必殺技ひっさつわざを出すが、かたの上にっている虎之助が邪魔じゃまで、威力いりょくを十分に発揮はっきする事ができない。

悪鬼滅殺派あっきぼくめつは

 スーパーゼウス人もわざり出す。

ドシャッ!

 やはり、スーパーゼウス人のわざまさり、武蔵はっ飛ばされた。

「痛いでござる」

 っ飛ばされたいきおいで、虎之助は武蔵のかたから落ちてしまった。

「こらっ、武蔵!合体がけてしまったじゃないか!」

 スーパーゼウス人にを向けて、武蔵におこり出す虎之助。

「おじょうちゃん、あぶない!後ろを見るっス」

「後ろって、うわっ!ひげジジイがおそって来るでござる」

 虎之助がくと、スーパーゼウス人が、こちらにせまって来ている。

「まずは、このむすめからブチ殺してやるわ」

 おそろしい形相ぎょうそうで、虎之助におそいかかるスーパーゼウス人

「顔がこわいので、逃げるでござる」

 虎之助は立ち上がろうとしたが

てて」

 右足に激痛げきつうが走った。

「落ちた時に足をくじいたでござる」

「ヤバいじゃん」

 スーパーゼウス人が、虎之助のすぐそばまでせまっている。

 武蔵は、もうスピードで虎之助に向かって走る。

ーーおじょうちゃんを助けないと、しかし、間に合うかどうか微妙びみょうッスねーー

 必死ひっしに走る武蔵であるが、わずかに間に合わず、スーパーゼウス人の手が虎之助の襟元えりもとつかんだ。

 その時、スーパーゼウス人は突然とつぜん、何者かに後ろからスリーパーホールドで首をめられた。

「ぐえっ、だっ誰じゃ」

ひさしぶりだなゼウス」

「おっ、お前は、この前の鬼神の部下だな」

 意外いがいにも川島かわしまであった。

 スーパーゼウス人は首締くびじめから逃れようとするが、川島の力が思いのほか強くてはずせない。

「バカな、スーパーゼウス人であるワシよりパワーがあるなんて。貴様きさま、いったい何者じゃ」

 苦しみながらも、おどろくスーパーゼウス人。

「スーパーゼウス人なんて、鬼神にくらべると赤子同然あかごどうぜんだ」

 川島は、さらにうでに力を入れめ上げる。

「くふっ」

 ついに、スーパーゼウス人は気をうしなってしまった。

ーーなんだコイツは、いきなり出て来てスーパーゼウス人を倒しやがったジャン。おそらく、かなりの腕の鬼ッスねーー

「アンタ、鬼だな?一人で来るとはめずらしいジャン」

 武蔵が近寄ちかよって来る。

ーー本当は、社長に戦ってしかったんだが、あの様子ようすじゃ絶対に来ないだろうしーー

「こちらにも、いろいろ事情じじょうがあってね」

 川島は、答えながらスーパーゼウス人を調べている。

「こらっ!せっかく合体してたのに」

 まだ虎之助は、合体がけたことを怒っている。合体が、よほど楽しかったようだ。

「コイツを、どうするんッスか?」

 武蔵は、川島にスーパーゼウス人の処置しょちを、たずねた。

冥府めいふに送り出す」

 と言うと、川島は手を合わせ、じゅつとなえ始めた。

 すると、スーパーゼウス人の身体からだから、蒸気じょうきが大量に発生し、徐々に体が小さくなって行く。まるで何かが蒸発じょうはつしているように見える。

 完全にスーパーゼウス人の身体からだが消えると、武蔵は川島に刀を向けた。

「気がらないッスが、鬼は見逃みのがせないッス」

 川島とりあうつもりである。

 しかし、川島はスーツをととのえながら

「悪いが、私はこれからやる事があるので、失礼しつれいするよ」

 と言って、平然へいぜんと歩き始めた。

ーーどうする?不意討ふいうちとはいえ、スーパーゼウス人をったコイツはそうとう強そうだ。だが、おじょうちゃんと2人がかりなら、なんとかなるかも知れないッスねーー

 などと考えていると、背中せなか違和感いわかんおぼえた。

「もう一度、合体するでござる」

 虎之助が武蔵の背中せなかのぼり、肩車かたぐるま体勢たいせいになろうとしている。

「ちょっと、何やってんすか?」

「合体するでござる。拙者せっしゃは足が痛いので、歩けないでござる!」

 虎之助がダダをこね出した。

 どうしても、肩車かたぐるまをしてしいようである。

「合体するでござる〜」

 虎之助はゴネ続けており、川島とは、かなり距離きょりが開いてしまっている。

「しょうがないッスね」

 武蔵は川島を追うのをあきらめ、虎之助を肩車かたぐるましたまま宿舎しゅくしゃへ帰ることになった。

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