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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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新人がやって来たでござる

「ちょっとねえさん、俺の唐揚からあげ取らんといて下さいよ」

DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎しゅくしゃでは、メンバーみんなで昼食を食べているところであった。

唐揚からあげの1つや2つで、こまかいことを言うんじゃないでござる」

「1つ2つじゃなくて、4つ全部、取ってますやん!俺の唐揚からあげ定食が、白飯しろめしだけになってまんがな」

 小太郎こたろう虎之助とらのすけ抗議こうぎしている。

「その白飯しろめしも、よこすでござる」

「むちゃ言わんといて下さいよ」

 虎之助とらのすけが来てからは、いつもの事であるが、生真面目きまじめ左近さこんにとっては、どうにも落ち着かない光景こうけいである。

「おい!お前ら、いい加減かげんにしないか!」

ついに、左近が怒鳴どなった。

「小太郎がおこられてるでござる」

 虎之助は、小太郎を見てわらっている。

「いや、おこられたのは、姉さんですやん」

拙者せっしゃは悪くないでござるよ。小太郎は、わがままでこまるでござる」

ーーこいつには、なにを言ってもダメだーー

左近は、あきれておこることをあきらめた。

ーー虎之助こいつが来てからは、ゆっくり食事もできないーー

イラついている左近が岩法師いわほうしを見てみると、だまってもくもくと食事をっている。

ーさすがに僧侶そうりよだけあって、物事ものごとどうじ無い精神力せいしんりょくの持ちぬしだなー

左近はあらためて、岩法師の精神力せいしんりょくに感心した。



そのころ宿舎しゅくしゃの近くでは、桜田刑事さくらだけいじと若い男がって歩いていた。

男は長身で細身の体型であり、端正たんせい顔立かおだちをしている。女性にモテそうなタイプだ。

狂四郎きょうしろう君、ここがDSPの宿舎しゅくしゃよ」

応仁おうにんらんれた時代から転生てんせいして来た狂四郎は、現代げんだい平穏へいおんさに、なかなかれず、うんざりしていた。

幼少ようしょうころより戦うことしか知らなかった狂四郎は、DSPに入れば鬼と戦えると言われ、期待きたいして付いて来たのである。

「みんな、新人をれて来わよ」

 転生者てんせいしゃ全員が、いっせいに2人を見た。

「新しい仲間の狂四郎君よ、みんな自己紹介じこしょうかいしてね」

 桜田刑事は、いつもよりテンションが高い。おそらく狂四郎がイケメンだからだと思われる。

 転生者てんせいしゃのメンバーは桜田刑事にうながされて、一人づつ自己紹介じこしょうかいを始めた。

左近さこんです」

 まずはリーダーの左近が名のった。

拙僧せっそう岩法師いわほうしもうす」

 僧侶姿そうりょすがたの岩法師が名のる。

「俺は小太郎こたろう、剣の達人たつじんや」

 若い剣士けんしの小太郎が名のる。

虎之助とらのすけでござる。ここの事は何でも拙者せっしゃに聞くと良いでござるよ。それから、ごはんは半分、ボスである拙者せっしやによこすでござる」

 虎之助が食事を半分、要求ようきゅうしてきた。

 桜田刑事は虎之助を指さして

「このの言うことは無視むしして良いわよ、バカだから。わからない事は、私かリーダーの左近君に聞いてね」

 と、笑顔えがおで狂四郎に説明する。

「なに言ってるでござる!拙者せっしやが一番の物知ものしりでござる。さては拙者せっしやがAカップだからってめてるでござるな」

 虎之助が怒り出した。

「アンタみたいな、Aカップの貧相ひんそう小娘こむすめめても良いのよ!なぜなら、私はDカップだから!」

 桜田刑事も怒って言い返す。

ーーガーン!ーー

 虎之助は転生てんせいして以来いらい、始めてはげしい衝撃しょうげきを受けた。

「うわ〜ん!ひどいでござる!」

 泣きながら、虎之助は宿舎しゅくしゃを飛び出して行く。

ーーしまった!言いぎたーー

 桜田刑事はあせった。

 さすがに、左近や岩法師も少し引いている。小太郎にかんしては、口を開けたまま呆然ぼうぜんとして、こっちを見つめている。

ーーヤバい、何とかしなくてはーー

 桜田刑事は、虎之助と一番仲の良い小太郎のそばによって

「これで、虎之助にお菓子かしでも買って、なだめて来て」

 500円玉を小太郎の手ににぎらせると、呆然ぼうぜんとしていた小太郎は、われに返り

ねえさん、待って下さい!」

 500円玉をにぎりしめたまま、走って虎之助を追いかけて行った。

「なんか、見苦みぐるしい所を見せちゃって、ごめんなさいね」

 桜田刑事は、れくさそうに狂四郎にあやまっている。

ーー本当に、見苦みぐるしい所を見てしまったーー

新田狂四郎にったきょうしろうだ、よろしく」

 気を取りなおして、狂四郎はのこった2人に挨拶あいさつをした。

「ちょうど昼食中だ、狂四郎君も、一緒いっしょに食べないか?」

 左近が狂四郎に優しく声をかけるが

「アンタが、ここのリーダーか?」

 狂四郎は横柄おうへいな態度で返す。

一応いちおうは、そうだ」

 ムッとしながらも左近は答えた。

「アンタが、ここで一番強いのか」

「そうでも無い」

 左近は無愛想ぶあいそうに答える。

「じゃ、となりぼうさんか?」

ーー虎之助といい、この狂四郎きょうしろうといい、最近の新人は態度たいどがなってないな。少し教育きょういくしてやらねばーー

「一番が拙僧せっそうだとしたら、どうなんだ?」

 岩法師にしては、トゲのある言い方である。

「いや、別に。なんか強そうに見えなくてね」

「では、後で拙僧せっそう稽古けいこをつけてしんぜよう」

ぼうさんと稽古けいこか、退屈たいくつそうだな」

退屈たいくつなどけっしてさせぬ」

 岩法師はキッパリと言いきった。

 左近は岩法師の意外いがい一面いちめんを見た。普段ふだん冷静れいせいな岩法師が、熱くなっている。

 まあ、僧侶そうりょでもおこる時は怒るか、当たり前のことだな。左近は生意気なまいきな狂四郎を、岩法師いわほうしまかせる事にした。



「どうや、若林わかばやし。ぼちぼち牛鬼ぎゅうき身体からだにもれて来たやろ?」

「そうですね。スピードとパワーがすごいんで、最初は戸惑とまどいましたけど、なんとかれました」

 若林は、鬼塚おにずか川島かわしまから訓練くんれんを受けて、少しずつではあるが牛鬼ぎゅうきの力を自分の物にしつつあった。

「そろそろ、実戦じっせんで力だめしをしてみるか?」

「どんな相手ですか?」

「DSP[デビルスペシャルポリス]に、ちょっと手強てずよ小娘こむすめがおってな、そいつをってもらおう思てんねんや」

ーーDSPの手強てずよ小娘こむすめ?もしかして、それは虎之助さんの事ではーー

「いや、女性をるのは、ちょっと無理ですよ、自信がありません」

 とりあえず、ここはことわらなければ。自分は虎之助さんとは戦いたくない。

「なんやて!これは社長命令しゃちょうめいれいや、出来んかったら、ワレくびやで!」

 首と言われても、ここは引き下がるわけにはいかない。なぜなら、僕は虎之助さんが好きだから。

「かまいませんよ。最近しつこく牛島建設うしじまけんせつから、ウチに来ないかってさそわていますし」

 思い切って、以前いぜんから声をけて来る、牛島建設うしじまけんせつの話をしてみた。

ーーなんやて、牛島建設って言うたら、東京に本社がある大手ゼネコンやないか。鬼武者おにむしゃ部隊もあって、関東最大最強かんとうさいだいさいきょうの鬼の総本山そうほんざんやんけーー

「うっ、ウソやん、冗談じょうだんやんか。成績優秀せいせきゆうしゅう牛鬼ぎゅうきでもある若林君を、首にするわけないやん」

 鬼塚は、あせった。牛島建設は日本テクノロジーコーポレーションより、大きな会社である。せっかくの牛鬼ぎゅうきを取られたく無い。

冗談じょうだんでしたか、ちょっと本気っぽかったですけど」

「ぜんぜん本気なわけないやん。ワシら、なんぼ鬼や言うたかて、女子供おんなこどもおそうかいな」

「そうでしたか。うたがってもうわけありませんでした」

「そうや、ワシは日頃ひごろからみんなに女と子供だけはおそったらアカンって、口をスッパクして言っとるんや。それをしたら、もう人間やない、鬼やって。まあ、鬼なんですけどね」

「ちょっと、なにを言ってるのか良くわかりませんが。とにかく、女性はらなくて良いって事でよすね?」

「君には、最初さいしょからオッサンの転生者てんせいしゃたおしてもらおうと思てたんや。後で黒瀬くろせ指示しじを出しとくから、2人で行って来てや」

承知しょうちしました」

「ほな、がんばりや」

 若林が退出たいしゅつした後、鬼塚はアイコスをいながら

「ほんま最近の、ゆとり社員はあつかいにくいわ」

 と、つぶやくと、電話を取って

「おう川島かわしまか。ワシや、金鬼きんきべ!あの虎之助とかいう小娘こむすめブチ殺すさかいに」

 と、怒鳴どなるように言った。

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