鬼神の訪問
「いやぁ、今日は良い事をしましたな」
「女性の敵が死んでくれて、平和になったでござる」
レムリアの屋敷から、虎之助と小太郎・武蔵の3人が出て来た。
「しかし、姉さんも、あの強姦魔の被害にあってたとは知りまへんでしたわ」
「拙者も知らなかったし、まったく身に覚えが無いでござるが、あの男はヤッてたのでござるな」
「さすが、姉さん、名推理でんなぁ」
2人は、ゲラゲラと笑い出した。
「ちょっと、お2人さーん、なにが可笑しいのか、さっぱり分からないけど。それって冤罪じゃん」
武蔵が突っ込んで来た。
「なに言うでござる。あの男は、絶対に強姦魔でござる。拙者の記憶には、まったく無いし証拠も全然ないでござるが」
虎之助が反論する。
「ええっ、そんなムチャクチャな事を言い切るって、ある意味スゲぇじゃん」
「武蔵も、やっと姉さんの凄さが分かって来たようやな」
「逆にスゲー、と思ったッス」
3人は、よくわからない会話をしながら、去って行った。
そんな3人を、少し離れた所から密かに監視している者たちがいた。
アポロンとアキレス、ペガサス、アンドロポプの国際電器保安協会のエージェントである。
「あいつら行ったな。今がチャンスだ、中に入るぞ」
アポロンの指示で、4人は屋敷に忍び込んでいった。
中に入ってみると、かなり荒らされており、2人の男が死んでいる。
「あいつら、ムチャクチャしますね」
気が優しいペガサスは、2人の遺体を直視できない。
「今は死体よりも、ゼウス様を救出する為に必要な物を探すんだ」
「そうでしたね。誰か来る前に、急いで探しましょう」
「こっちの部屋に何か機械が、いっぱい置いてあるぞ」
「なにか使える物があるかも」
アンドロポプが見つけた部屋に入ってみると、いろんな機械がたくさん置いてあり、ゼウスたちを火星に送った装置も見つかりそうだ。
「たぶん、これだと思います」
ペガサスが、万年筆タイプの器具を見つけた。
「ガニメデに送った機械は、それっぽいな。地球に戻す装置は無いのかな」
アポロンは熱心に探している。
「これで、わかるんじゃないか?」
アンドロポプが、ノートパソコンに入っていた機械類のリストを見つけた様だ。
「でかしたぞ、アンドロポプ。これで、ゼウス様たちを呼び戻せる」
「クロノスや鬼どもに、反撃できますね」
アポロンとペガサスは喜んでいるが、なぜかアキレスのテンションが低い。
「どうしたんだアキレス、元気ないじゃないか」
アキレスは下を向きながら。
「俺は、一度ギリシャに帰るよ」
と、ボソッと言った。
「どうしたんだ、今から反撃するところなのに」
アポロンは不思議がっている。
「火星に行ってから、なんだか自信を無くしたみたいで、ギリシャで修行の、やり直しをしてくるよ」
アキレスは、えらく深刻そうな顔をしている。
「そうですか、それでは仕方ないですね。気を付けて帰って下さいね」
ペガサスが、少し残念そうに言った。
「おい、ペガサス。勝手にアキレスを返すなよ。こいつには、まだ、やってもらいたい事があるんだ」
アポロンはアキレスの帰国に反対している。
「そんな事を言わずに、返してやれよ」
アンドロポプもアキレスに同情している様で、アキレスの帰国に賛成のようだ。
「クソっ、1対3か。仕方ない。アキレス、気を付けて帰るんだぞ」
アポロンは、しぶしぶではあるがアキレスの帰国を認める事にした。
「ありがとう、みんな。元気でな」
アキレスが去って行く。
「アンドロポプさんって、意外に優しい所があるんですね」
ペガサスは、アキレスを庇ったアンドロポプを、意外に思った。
「俺は、元もと優しいんだが、ロシア支部の上官である悪魔司令官ラスプーチンのせいで、部下の俺たちまで悪く思われがちなんだ」
「そうだったのですか。それにしても、悪そうな名前の上官ですね」
「まあな、あんな非道な奴は見た事ないからな。非道人間世界大会で8年連続優勝している恐ろしい男だ」
「そんな人が、実在するんですか」
そう言いながら、ロシア支部じゃなくて、ギリシャ本部所属で良かったと思うペガサスであった。
日本テクロノジーコーポレーションの社長室では、鬼塚がアイコスを吸ってくつろいでいた。
ガチャ
いきなりドアが開き、川島が入って来るなり
「社長、大変です。レムリアさんが殺されました」
と、慌てて、鬼塚に伝えた。
「レムリアさんって誰や?」
鬼塚は、レムリアの事を知らないようだ。
「白鬼さんの直属の部下で、主に関西で活動している魔界人ですよ」
「白鬼さんて、まさか、あの白鬼さんか?」
「そうですよ、鬼神の白鬼さんです」
「鬼神っていうたら、白鬼さんとは違うけど、夜叉さんっておるやろ」
「鬼神の一人に、そんな名前の方が居られますね」
「俺の嫁の父親やねん」
「ええっ、そうなんですか」
「そうやで。夜叉さんの32番目の娘が、俺の嫁や」
「そんなに子供がいるんですね。まるでアラブの王族ですな」
「いや、夜叉さんは恐ろしく長生きで、奥さんも今までに20人ぐらい居てるんや。ホンマかどうか知らんけど、今年で10万28歳らしい」
「なにか、悪魔が結成したロックバンドのような年齢ですね」
鬼塚は吸い終わったアイコスを、缶の吸殻入れに入れながら、深刻な顔をして
「実は、俺の嫁が鬼嫁でな」
と、ボソっと呟いた。
「そりゃ、鬼神の娘なんだから、鬼の嫁でしょ」
「鬼族やから鬼嫁になるとは限らんやろ」
「奥さんは、どんなふうに鬼嫁なんですか」
鬼塚の嫁に、川島は興味を持った。
「まず、料理が上手いやろ。ほんで、綺麗好きなんで掃除がいき届いてるやろ。俺に優しいし、子供の教育も、しっかりしてるからなぁ」
「ちょっと待って下さい。それの、どこが鬼嫁なんですか!」
川島が、キレ気味に突っ込んだ。
「いや、でも嫁は鬼やから」
「アホですか、アンタは!」
川島がキレた。
「俺がアホかどうかは、どうでも良いんじゃ!今は嫁の話をしてんねん」
鬼塚が逆ギレした。
「いいや、あんたはマジで絶望的なアホです」
川島も怒り返す。
珍しく2人が喧嘩をしていると、いきなり社長室の扉が開き、秘書が入って来るなり
「社長、夜叉という方がお見えです」
と、伝えた。




