黒服と下着泥棒
アメリカ村では、虎之助とアキレスが、タコ焼きの奪いあいを続けていた。
「あれっ、今日は綺麗なお姉さんが居れへんやん。ムサい男ばっかりやなぁ」
小太郎と武蔵もやって来たが、マーゴットが居ないので残念そうにしている。
「ムサ苦しくて悪かったな」
アンドロポプは少しムッとした。
「ホンマに、けったくそ悪い奴らやで。お前ら、こんな所に溜まるなや、邪魔やねん」
小太郎が吐き捨てるように、言い放った。
「おい、お前。それは言い過ぎだろ」
虎之助が近くに居るので、あまり関わりたく無いと思っていたアンドロポプも、さすがにキレかけている。
「なんやと、このデカ物」
美女に会えず、機嫌が悪い小太郎は喧嘩腰である。
「小太郎ッチ、こいつ僕が殺っちゃっても良い?」
誰かと戦いたくて仕方がない武蔵は、すでに刀を抜いており、完全に殺る気である。
「おい、待て。お前ら喧嘩するんじゃない、今、俺たちは忙しんんだ」
アンドロポプが小太郎と揉めているのを見て、慌ててアポロンが止に入って来たが
「なんや、お前は、姉さんにヤラれたクセに、偉そうにするなや」
と、アポロンが一番、言われたくない事を言われてしまった。
「なんだと、このクソ餓鬼が、太陽パワーで焼き殺すぞ」
止に入ったはずのアポロンであるが、小太郎の悪態にムカついてキレてしまった
「ちょっとアポロンさん、こんな連中は、相手にしたらダメですよ」
そんな様子を見てペガサスが、アポロンとアンドロポプをなだめるが、2人の怒りは治まりそうに無い。
小太郎と武蔵も、こちらを睨みつけている
ーー困ったな。今はゼウス様の救出が最優先で、DSPの連中と、もめている場合じゃ無いんだけどーー
ペガサスは、困り果ててしまった。
「なんじゃ、思ったよりもバカそうな奴らじゃの」
少し離れた所で、ぬらりひょんと黒服の男たちが虎之助たちの様子を見ていた。
「奴らを侮ってはいけませんよ、ぬらりひょんさん。特にあの小娘は、数々の強者を葬って来た曲者です」
黒服の一人が説明する。
「ワシには、そうは見えんがのう。だが、国際電器保安協会の奴らには死んでもらわんとな。レムリア殿との約束じゃからのう」
「DSP[デビルスペシャルポリス]の転生者どもは、どうします?」
「アイツらは、どっちでも良いんじゃが。邪魔だてするなら、一緒に死んでもらおうかの」
「わかりました。では、参りましょう」
ぬらりひょんと黒服の男たちは、アポロンたちに向かって歩きだした。
「アポロンさん、変な奴らが近づいて来ますよ」
真っ先に、ペガサスが黒服たちに気付いて、アポロンに知らせた。
「うるさい。俺は、いま忙しいんだ」
しかし、アポロンは小太郎と睨み合っており、今にも掴みかかろうとしている。
「でも、アイツら、ポセイドン達を連れ去った黒服グループですよ」
「なんだと!」
と、アポロンが気づいた時には、既に周りを囲まれていた。
「国際電器保安協会の諸君、今から死んでもらうかの」
いつの間にか、ぬらりひょんを中心とした黒服の男たちに、しっかり包囲されてしまっている。
ーーいきなり大人数で囲まれて状況は不利であるが、ゼウス様を連れ去った奴らだ、逃げる訳にはいかないーー
「ふざけるな!返り討ちにしてやる。アキレス、ペガサスぬかるなよ」
アポロンたち3人は、小太郎と武蔵はとりあえず置いといて、黒服たちに対して戦闘体制に入った。
双方に緊張が走る。
だが、その時。
「あっ、あの爺さん、見た事ありますわ」
なぜか、小太郎が、ぬらりひょんを指さして言った。どうやら、見覚えがあるようだ。
「あのジジイは、何者でござるか?」
虎之助が、アキレスから奪ったタコ焼きを食べながら聞いた。
「確か、ウチの宿舎の近隣で有名な、下着泥棒ですわ」
「そう言えば、拙者も、Aカップのブラジャーを盗まれた事があるでござる」
虎之助が、思い出したように言った。
「待て、お主ら。人違いじゃ、ワシはそんな事しとらんぞ。それに、Aカップのブラジャーなんぞに興味ないわ」
いきなり、身に覚えのない下着ドロボウ呼ばわりされて、ぬらりひょんは焦っている。
「小太郎、武蔵、このジジイをブッ殺すでござる」
虎之助の号令と共に、3人は一斉に、ぬらりひょんに斬りかかった。
「馬鹿、やめるんじゃ。ワシは、国際電器保安協会のエージェントを殺りに来たんじゃ。お主らに用は無い」
「問答無用、死ねジジイ」
ズバッ!ズバッ!ズバッ!
ぬらりひょんは、必死に止めるが、3人にメッタ斬りにされて絶命した。
「なんだぁ、こいつら、メチャクチャだ」
黒服たちは一瞬で、ぬらりひょんが殺られたのを見て、怯んでしまっている。
「あの男も、見た事ありますわ」
黒服の一人を指さしながら、小太郎が言った。
「何者でござるか」
虎之助が聞く。
「宿舎の周辺で有名な、覗き魔ですわ」
「そういえば、拙者も、お風呂を覗かれた事があるでござる」
虎之助は、思い出した風に言った。
「待て、人違いだ。俺はそんなこと知らん。それに、君のような貧相な身体を覗きたいとは思わんわ」
いきなり、覗き魔あつかいされ、黒服の男は焦った。
「武蔵、コイツを殺ってまえ!」
「了解ッチ」
ズバッ!
小太郎の号令と共に武蔵が黒服の男を、一瞬でメッタ斬りにした。
バタッ
黒服の男が倒れると、他の黒服たちも動揺して、後退りを始めた。
「あれっ。あの男も、見た事ありますわ」
小太郎が、別の黒服を指さした。
「何者でござるか」
「宿舎の近所で有名な、痴漢ですわ」
「そう言えば、拙者も、あの男に何度か痴漢されたでござる」
虎之助は適当な事を言った。
「ちょっと待て。俺は痴漢なんかした事ないし、お前とは初対面だ!」
とんでもない、濡れ衣を着せられて、黒服の男は焦り出した。
「言い訳は聞かないでござる、小太郎、武蔵。コイツを殺すでござる」
虎之助の号令と共に3人は、黒服に襲いかかる。
黒服の男は、あっという間にメッタ斬りにされて倒れた。
「コイツら言動がメチャクチャだ。相手にしてたらヤバい、みんな、いったん退却だ」
変質者扱いされたうえに殺されたのでは、たまったもんじゃない。黒服たちは、一目散に逃げ出した。
「待つでござる、変態ども!」
それを追いかけて行く、DSPの3人。
残ったアポロンとアンドロポプ、ペガサスの3人は顔を見合わせて
「DSPの宿舎の近所って、変態だらけですね」
「いや、ぜんぶ冤罪だろ」
「でも、アホ3人組のお陰で、俺たちは助かったな」
と、ホッとするのであった。




