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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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アキレスとタコ焼き

「あ~たッス」

 武蔵むさしは目をました。

 今まで、虎之助とらのすけ睡眠薬入すいみんやくいりの饅頭まんじゅうを食べらされて、アメリカ村の公園こうえん爆睡ばくすいしていたのである。

すぎや、武蔵」

 目の前に、小太郎こたろうが立っている。

「あれっ、おじょうちゃんは?」

 虎之助が見当みあたたらない。

ねえさんは、もう帰ったで」

残念ざんねん〜っス、試合しあいがしたかったのに」

 残念ざんねんがる武蔵に、小太郎が

「試合って。お前は、姉さんに瞬殺しゅんさつされたやないか」

 と、つめたく言いはなった。

「この僕が瞬殺しゅんさつって、そんなバカなぁ〜」

「バカは、お前や。明日またれて来たるさかいに、ごちゃごちゃ言ってないで、今日はもう帰るで」 



 翌日よくじつ

 アメリカ村の公園でアポロンたちが、ゼウス救出きゅうしつ相談そうだんをしていると、ボロボロの男が近づいて来た。

「よお、アポロンとペガサスじゃないか」

 男は、気安きやすく2人に声をかけて来る。

だれだ、こいつ。知り合いか?」

 一緒いっしょにいたアンドロポプが2人に聞いた。

「ボロくなってるけど、ギリシア本部ほんぶのエージェントですよ」

 ペガサスは当然とうぜんながら知っている。ボロ男はアキレスであった。

ひさしぶりだな、2人とも」

「アキレス、どうしたんだ、そんなにボロくなって?」

 アポロンが心配しんぱいしてたずねた。

 アキレスはボロボロの服を着ており、身体からだもひどくよごれている。

大阪府警おおさかふけいから、脱走だっそうして来たんだ」

 虎之助にやぶれたあと大阪府警おおさかふけいに引きわたされて、アキレスは勾留こうりゅうされていたのである。

脱走犯だっそうはんか」

 アンドロポプが、いやそうな顔をした。

「そんなふうに言うなよ。お前とは一度、会ってるだろ」

 少し間をおいて

「あーっ、思い出した。お前は、あの小娘こむすめ一緒いっしょに火星に連れて行かれたやつだ」

 と、アンドロポプも思い出した。

「思い出すのがおそいな。火星で、あの小娘こむすめたおされ気をうしなっている間に、拘置所こうりゅうじょにブチまれたんだ」

「火星から、どうやって大阪まで帰って来たんだ?」

 アポロンがたずねた。

「なぜか、関空から直行便ちょっこうびんが出てるらしい」

うそだろ」

 アンドロポプは信用していない。

「本当だ。たしかにうそのような話だが事実じじつだ。それよりはらった、なにか食い物ないか?」

「あそこに、タコ焼きの屋台やたいならあるけど」

「ホントだ。悪いがだれか千円貸してくれ、脱走だっそうして来たから、一銭いっせんも持って無いんだ」

「俺がしてやるよ、ついでに服も買って来い。そのカッコじゃ目立めだぎる、すぐに警察けいさつに見つかるぞ」

 そう言いながらアポロンは、一万円札いちまんえんさつをアキレスに手渡てわたす。

「助かった、いずれ返すから」

 うれしそうにアキレスは走って行った。

 アキレスが買い物に行っている間も、アポロンは思案しあんしている。

ーー関空かんくうから火星への直行便ちょっこうびんか、少しでもガニメデに近づけるな。ゼウス様を救出きゅうしつする可能性かのうせいも高くなるはずだーー

「よし。みんなんなで火星に行こう」

 アポロンは、ひらめいた。

「えっ、俺も?」

 アンドロポプはおどろいて聞いた。

「もちろん、全員でだ」

「じゃ、僕もですか?」

 ペガサスも聞いて来た。

「全員って言ってるだろ!」

 ちょっとアポロンが、キレかけた。

「じゃ、俺は行けたら行くから、先に行っといて」

 アンドロポプは、あきらかにげようとしている。

「行けたら行くってやつは、絶対ぜったいに来ないんだよ!」

 アポロンがキレた。

「僕は、お母さんと散髪さんぱつに行く約束やくそくをしているので、行けません」

 ペガサスは用事ようじがあるようだ。

「てめえは、マザコンか!散髪さんぱつなら一人で行って来い、母親に付いて来てもらうんじゃねえ!」

 アポロンが2人にキレれていると、アキレスがもどって来た。

「やあ、ありがとうアポロン。おかげで良い服が買えたよ」

 意外いがいとオシャレなTシャツとたんパンを着ており、タコ焼きを食べながら、ニコニコ笑顔えがおで歩いて来る。

「ちょうど良い所に帰って来たな。今から、みんなで火星に行くぞ」

 アポロンはアキレスにもつたえた。

絶対ぜったいいやだ」

 アキレスだけは、男らしくキッパリとことわった。

「なんでいやなんだ?」

「火星には、おそろしい太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおうるんだ。行けばんな殺されるぞ」

「誰それ?」

「俺と小娘こむすめを、火星に無理やり連れて行った変なオヤジだ。太陽神たいようしんアトムとってる、異常いじょうに強い化物ばけものだ」

 おびえながら、アキレスが説明する。

「ゼウス様を救出きゅうしつしに行くんだ、そんなやつと戦う必要ひつようはないから」

あまいぞ、見つかったら殺される」

 ひどくおびえているアキレスを見て、アポロンはあらためて考えてみた。火星に行ったからといって、ゼウス様を助けられるとはかぎらない。

 それに、太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおうとやらがるとなると、火星に行くのは危険きけんかもしれない。

 どうしたもんかな。

「その、タコ焼き、しいでござる」

「あっ、お前は、俺を大阪府警おおさかふけいに引き渡した小娘こむすめ

 いつの間にか虎之助が来ていて、アキレスのタコ焼きを、うばおうとしている。

「やめろよ。俺は、この3日間なにも食べて無いんだ」

 せっかく、ありついた食料しょくりょうを取られそうになり、必死ひっしこばむアキレス。

拙者せっしゃは、そのタコ焼きが食べたいでござる」

 しつこく、タコ焼きをうばい取ろうとする虎之助。

あとで、高級こうきゅうなイタリア料理をおごってやるから、そのタコ焼きはアキレスにわせてやれよ」

 アポロンが、虎之助をなだめるが。

「高級イタリア料理より、拙者せっしゃは、今すぐ、このタコ焼きが食べたいでござる」

 ダダをこねまくる虎之助を見て。

ーーそういえば、このむすめ。タコ焼きを太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおうゆずらなかったせいで、火星に連れて行かれたんだった。イタリア料理よりタコ焼きをえらぶとは、やっぱり阿呆あほなのかもしれないーー

 と、あらためて思うアキレスであった。

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