宮本武蔵
京都からの助っ人は、なんと、あの宮本武蔵らしい。
と、鬼一から告げられた大阪DSPのメンバーは、期待に胸を膨らませていた。
特に虎之助は、ブラの中にメロンパンを詰め込んで、左右の胸を巨乳にして膨らませていた。
「姉さん、エラい巨乳になりはりましたな」
小太郎は、虎之助の胸をガン見している
「拙者は会ったことは無いでござるが、転生する前から宮本武蔵の名は知っていたでござる。吉岡一門との戦いは有名でござる」
「それやったら、否が応でも胸が膨らみまんなぁ」
虎之助と小太郎は、テンションが上がっており嬉しそうである。
「俺は、そんなヤツ知らねえぞ」
応仁の乱の時代から転生して来た狂四郎は、当然ではあるが知らないようだ。
「私も小説でしか知らなかったよ。しかし、今まで宮本武蔵が転生して来たなんて、聞いた事がなかったな」
鬼一は、そんな有名人が転生して来たのなら、自分の耳にも入っているはずなのにと、不思議そうにしている。
「最近、転生して来たのかしら。でも、そんな高名な剣豪が来てくれるなんて、嬉しいわ」
「なんにせよ、強い助っ人は大歓迎だ」
桜田刑事と
岩法師は、単純に喜んでいる。
ピンポーン
玄関チャイムが鳴った。
「お客さんが来たよ」
玄関から、左近の声が聞こえた。
「武蔵が到着したな」
鬼一は武蔵を出迎えに、玄関へと足早に向かって行った。
「なんか緊張するわね」
ーー宮本武蔵って、やっぱり小説や時代劇に出て来るような、渋い中年の紳士かしらーー
桜田刑事は、伝説の武芸者との対面を前に緊張している。
「こんちわ〜。宮本で〜す」
チャラい若者が、鬼一と一緒にリビングに入って来た。
「みんな、この人が宮本武蔵らしい。よろしく頼む」
鬼一は苦い表情で、DSPのメンバーに紹介した。
武蔵は、意外と華奢な若い男であった。
色黒というよりはガングロで、髪は茶色に染めて耳にはピアスを付けている。
服装も胸が、はだけたブラウスと、ダメージが入り過ぎたボロボロのジーンズで、どこをどう見ても、みなが思い浮かべる宮本武蔵では無い。
「同姓同名とかじゃ無く、本物の宮本武蔵でっか?」
メンバー全員が思っていることを、小太郎が口にした。
「本物で〜す。みなさん、ヨロシク〜」
狂四郎と左近以外は、放心状態になっている。
特に虎之助は、ブラに詰め込んだメロンパンを取り出して、放心しながらムシャムシャと食べ始めた。
ーー京都DSPの連中が、宮本武蔵の転生を公にしなかったのは、このチャラいキャラが原因だったのかーー
と、期待していたぶん、鬼一の落胆は大きかった。
各自、自己紹介が終わると、唐突に小太郎が
「アンタ、ホンマに、あの巌流島の決戦で佐々木小次郎を倒した、宮本武蔵なんか?」
と、まだ信じられない様で、しつこく確認してきた。
「みなさん、そう、おっしゃりますよね」
武蔵は、他人事のように答える。
「本物の武蔵なら、拙者にステーキを奢ってくれるハズでござる」
虎之助が、無茶振りをして来た。
「お嬢ちゃん。ステーキは、お肌に良くないので、ヘルシーな、お野菜の方が良いと思ったり〜。セロリ等おいかがぁ」
よくわからない口調で、返答する武蔵。
「なんでかコイツ、ムカつくわ」
「セロリは大嫌いでござる。拙者にセロリを勧める奴は、いずれ地獄に落とすでござる」
小太郎と虎之助は、武蔵に対して不快感を覚えるのであった。
その頃、国際電器保安協会ギリシャ本部では、突然ゼウスの行方が分からなくなり、グリゴリオス局長たちが慌てていた。
「これはマズイな、ゼウス追跡アプリから、突然ゼウス様の信号が消えた」
「では、誰か大阪に、捜索に向かわせましょう」
幹部のハルパトスが進言する。
「しかし、今すぐ動けるエージェントが、一人もいないのですよ」
「こうなったら仕方ありません、ペガサスを復帰させましょう」
諜報部長のアレクシオスが提案した。
「でも、あの人は怒って本部を辞めたんですよね。復帰してくれますか?」
諜報部員のペドロスは、不安を口にする。
「大丈夫だ、アイツの母親を殺すと言えば、従うだろう」
ハルパトスは、自信ありげに言った。
「ダメですよ、私たちは、そんな安っぽい反社会的勢力では無いのですよ」
当然の事であるが、グリゴリオスに止められた。
「では、魔法セーラー戦士ポピリンのフィギュアをあげると言えば、復帰するのでは?」
アレクシオスが、ひらめいた。
「そんな高価なフィギュアは、勿体なくて、あげられません」
「やはり、母親を殺しましょう」
ハルパトスは、しつこく母親を殺すことを勧める。
「殺しちゃダメだろ」
「特別ボーナスを出すというのは、どうでしょう?」
「それは、金額によりますね」
「アイツは阿呆だから、生玉食べ放題で来るでしょう」
「手っ取り早く、母親を殺りましょう」
ハルパトスは、どうしても母親を殺したいようだ。
「だから、殺しちゃダメなんだよ!」
「珍しいカブト虫を、あげるというのは?」
ペドロスも提案する。
「どこに、そんなカブト虫がいるんだよ!」
怒りだすアレクシオス。
「やはり、一家皆殺しにしましょう」
ハルパトスは、さらに過激になって来た。
「お前は、禁酒法時代のマフィアか!」
突っ込むグリゴリオス。
なかなか良い案は出てこず、ギリシャ本部での話し合いは、もうしばらく続くのであった。
アメリカ村では、アンドロポプがライアンとマーゴットを探していた。
「いつも、ここでタコ焼きを食べているのに、どこに行ったんだろう?」
と、公園の辺りをウロウロしていると
「アンドロポプさん」
誰かに名前を呼ばれた。
「ロシア支部のアンドロポプさんですよね。僕は、ギリシャ本部の者です」
見ると、若い男が立っている。
ペガサスである。
結局、給料20%アップという契約で、ペガサスを復帰させたのだ。
「なんの用だ?」
「ゼウス様やポセイドン様が、消息を断たれたので調査をしに来たのですが、なにかご存知ないでしょうか?」
「なぜ、俺に聞く?」
「本部の情報では、この辺りの事はアンドロポプさんと、アメリカ支部のライアンさんが詳しいとの事でしたので」
ーーなにっ!ゼウスが行方不明だと。もしかすると、ライアンたちが居なくなった事と関係しているかもーー
「なるほどな、実はライアンとマーゴットも消えたんだ。いつもココに居るんだが、携帯にも出ないし、俺も探してたところだ」
「ライアンさんも消えたとなると、ゼウス様と一緒に居る可能性が高いですね」
「では、協力して一緒に探そう。お前、何て名だ?」
ーーえっ、この凶暴で悪名高いアンドロポプと組むのか。嫌だな、僕は一人の方が気楽で良いんだけどーー
「なに黙ってるんだ。俺と組むのが嫌なのか?」
「いえ、とんでもない。僕はペガサスです、よろしくお願いします」
と、いう訳でペガサスは、不本意ながらアンドロポプと組んで、ゼウスを探す事となった。




