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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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虎之助の帰還

 国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかいギリシャ本部では、新米諜報部員しんまいちょうほうぶいんのペドロスがゼウスの背中せなかかされていた。  

「ここで、よろしいでしょうか、ゼウス様?」

「もっと右じゃ、そう、そこじゃ。こりゃ気持きもちが良いわい」

 ご機嫌きげんなゼウスを見て、ペドロスは

「あの、一つ質問しつもんしても、よろしいでしょうか?」

 と、以前から気になっていた事を聞いてみた。

「なんじゃ?この全知全能ぜんちぜんのうのゼウスに分からん事はないぞ。遠慮えんりょせずに何でも聞くがよい」

「では、お言葉ことばあまえまして。ゼウス様は全知全能ぜんちぜんのうなのに、なぜ背中のかゆみをご自分でなおされないのですか?」

「そっ、それは最優先国家機密さいゆうせんこっかきひみつじゃ。君のようなしたが知るところでは無いわ!」

 意外にも、きびしい口調くちょうでゼウスに注意されてしまった。

「これは失礼しつれいいたしました」

「もう、背中は良い。それより、ワシの昼食は出来ておるのか?」

「はい、納豆なっとうはんに、生玉子をかけた物を御用意ごよういしております」

「ほう、ワシの好物こうぶつじゃ。では、食べるとするか」

 ゼウスが昼食を食べ始めようとした時、諜報部長ちょうほうぶちょうのアレクシオスがあわててやって来た。

「ゼウス様、大変です」

「なんじゃ、さわがしいぞ。ワシは、今から昼食じゃ」

「すいませんゼウス様。日本から連絡れんらくがありまして、アキレスがたおされたそうです」

「アキレスか、あの未熟者みじゅくものが。では、だれわりの者を日本に送るのじゃ」

「はい。さっそくペガサスを送ります」

「ペガサスだと。やつはまだ若造わかぞうじゃ、やつ一人ではアキレスを倒した者には勝てぬわ。ヘラクレスも同行どうこうさせるのじゃ」

「ヘラクレスは、ぶらり途中下車とちゅうげしゃたびに出かけており不在ふざいです」

「では、アポロンに行かせるのじゃ」

「アポロンは、なまガキを食べて食中毒しょくちゅうどくになり入院中にゅういんちゅうです」

「じゃ、ペルセウスを行かせるのじゃ」

「そんな人は、始めからいません」

「じゃ、もうよいわ。ペガサスだけで行かせるのじゃ」

承知しょうちいたしました、ゼウス様」

 ゼウスの言動げんどうを、一部始終見いちしじゅうみていたペドロスは

ーーもしかすると、ゼウス様は全知全能ぜんちぜんのうでは無いのかも知れないーー

 と、ひそかにうたがうのであった。



 関西国際空港かんさいこくさいくうこうに、若い男がり立った。

 細身ほそみで、まだ成人せいじんしていないような、少しあどけなさが残る顔立かおだちで、女性うけしそうな可愛かわいさを持っている。  

 ゼウスからの指示しじを受け、はるばるギリシャからやって来たペガサスであった。

「この日本に、アキレスより強い者がたとはな」

 そうつぶやいたペガサスの目の前を、可愛かわいらしいむすめ筋肉質きんにくしつの男を引きずりながら歩いている。

 よく見ると、引きずられているのはアキレスではないか。

「おじょうちゃん、ちよっと良いかな?その男のことを聞きたいんだけど」

 ペガサスは、むすめに声をかけた。

「知らない人に声をけられても、相手にしないように言われているでござる」

 虎之助とらのすけは、愛想あいそなく言った。

 ーーやりづらいだなぁーー

「でも、君が引きずっているアキレスは、僕の知り合いなんだ」

「こいつと知り合いでござるか。おぬしは、国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかいの者でござるか?」

 初めて虎之助が、ペガサスの顔を見た。

ーー国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかいの事を知っているとは、このむすめ、DSPか鬼の可能性かのうせいが高いなーー

「君は何者だ?まさかと思うけど、君がアキレスをたおしたのか?」

「知らない人とは、口をきかないでござる」

 やはり、虎之助は無愛想ぶあいそうである。

ーー可愛かわいいけど、むずかしいだなーー

「そうだ、そこの売店ばいてんでお菓子かしを買ってあげるから、知ってる事を教えてくれないか?」

「お菓子かしでござるか」

 そう言われて、虎之助は売店ばいてんの方を見た。

 チョコレートやチップスなどの、美味おいしそうなお菓子かしならんである。

 むすめはフルーツグミを手に取って、思案しあんし始めた。

ーーお菓子かしいて来たか?ーー

 ペガサスの期待きたいふくらむ。

「やっぱり、いらないでござる」

 虎之助はフルーツグミを売店ばいてんたなもどし、ふたたびアキレスを引きずりながら歩いて行く。

「エエっ!じゃ、何がしいんだい?何でも買ってあげるよ」

拙者せっしゃはセレブなので、何でも自分で買えるでござる」

ーーこの意外いがい金持かねもちだったのかーー

「じゃ、その男を僕に売ってくれないか?」

 虎之助は、自分が引きずっているアキレスを見ると

「ダメでござる。コイツは、大阪府警おおさかふけいれて行くでござる」

 と、ふたたび歩き出す。

ーー大阪府警おおさかふけい?ならば、このはDSPの転生者てんせいしゃだなーー

「では、仕方しかたない。力ずくでアキレスを返してもらう」

 ペガサスは交渉こうしょうあきらめて、強行手段きょうこうしゅだんに出ることにした。

「おぬしのような優男やさおとこでは、拙者せっしゃには勝てないでござる」

「君の方こそ、華奢きゃしゃ小娘こむすめだろ」

拙者せっしゃとおぬしでは、今まで戦って来た相手がちがぎるでござる」

「そんな事はない。くらえ!ペガサスブーメランキック!」

 ペガサスの必殺技ひっさつわざ炸裂さくれつする。

パスっ

 しかし、なんなく虎之助に片手で受け止められた。

「バカな!僕の必殺ひっさつりが、そんなに簡単に受け止められるとは」

「やわなりでござる」

「そんなはずは無い!僕のりは、すべての物を破壊はかいする世界最強せかいさいきょうりのはずだ」

「おぬしりなど、拙者せっしゃが、これまで戦って来た強敵とも攻撃こうげきくらべると、あまりにも軽いでござる」

 虎之助が見上みあげると、今までたおして来た男たちの顔が空中にかびがった。

 鬼武者おにむしゃに鬼ロボ・笵会はんかい・リンゼイ老師ろうし・アキレス・宇宙人オーソン

最後さいごの人はだれ?」

 と、ペガサスにまれた。

「あっ、間違まちがえた。宇宙人オーソンとは、戦って無かったでござる」

間違まちがいだったのか、良かった」

 ペガサスは心のそこから安心した。

「もう、拙者せっしゃ大阪府警おおさかふけいに行くでござる」

 虎之助はアキレスを引きずって、タクシーへとかって行く。

ーーアキレスだけでも回収かいしゅうしたかったけど、とても僕の手にえる相手では無いなーー

「では、おじょうちゃん、さようなら」

 ペガサスは、任務にんむあきらめて、ギリシャに帰ることにした。

 


「ただいまでござる」

 虎之助が、数日ぶりに大阪DSPの宿舎しゅくしゃに帰って来た。

ねえさん!」

 小太郎こたろう玄関げんかんまで走って来て、虎之助にきついた。

「火星に連れて行かれて、もう会われへんと思ってました」

 小太郎は、泣きながらよろこんでいる。

「あのアキレスっていうやつは、どうしはりました」

「アホのアキレスは、拙者せっしゃたおして大阪府警おおさかふけいに引き渡して来たでござる」

「さすが姉さん、すごいでんなぁ」

 虎之助と小太郎が中に入ると、鬼一きいち岩法師いわほうしが食堂で話をしているところであった。

「おおっ、無事ぶじだったか虎之助」

 虎之助の顔を見て、岩法師がうれしそうに言った。

綺麗きれいなおねえちゃん、お帰りなさい」

 左近さこんよろこんでいる。

「心配したぞ。はらってないか」

 岩法師は、気付きづかってくれている。

大阪府警おおさかふけいの近くのハンバーガー屋で、食べたて来たから大丈夫だいじょうぶでござる」

 虎之助にしては、めずらしくおなかっていないようだ。

「虎之助、つかれてないか?」

 心配して岩法師がたずねた。

長旅ながたびで少しつかれたでござる。部屋で休んで来るでござる」

「そうだな、そうした方が良い」

 自分の部屋にむかう虎之助に、岩法師のやさしい声が聞こえた。

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