火星戦記パート1
「えい!やー!」
少年になった左近は、DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎の庭先で一生懸命に竹刀を振っている。
「いいぞ左近、その調子だ」
岩法師が、左近の修行を見守っていると、鬼一も庭先にやって来た。
「がんばってるな、左近」
「左近は、もともと練習熱心でしたから。それより、虎之助たちは、まだ戻らんのですか?」
岩法師は、虎之助たちの事を心配している。
「携帯に電話しても圏外に居るようで、電波が繋がらない。まだ冥界かも知れん」
「しかし、冥界なんか行って帰って来れるんですかね」
「普通は無理だ」
「弱りましたね。よし左近、練習は、それぐらいにして飯にしよう」
「僕、ハンバーグが食べたい」
「じゃあ、夕食はハンバーグ定食にしようか」
左近と岩法師が食事の話をしていると
「ただいま」
と、小太郎と狂四郎が帰って来た。
「お前ら、冥界から無事に帰って来れたのか」
鬼一と岩法師は驚いている。
「冥界からは、なんとか帰って来たのですが……」
狂四郎は言葉を濁す。
「お前たち2人だけか、虎之助は、どうした?」
岩法師は、虎之助のことを心配して尋ねた。
「姉さんは変なオッサンに、火星に連れて行かれてもうた」
小太郎は、半泣きになっている。
「なんだと!」
その頃、火星では
「今日から、君たちには、ここで働いてもらうでヤンス」
タピオカミルクティーの屋台の前で、助清が虎之助とアキレスに、仕事の説明を行っていた。
「この俺様に、くだらん事をさせるんじゃねえ」
アキレスは、怒鳴りながら拒否している。
「お給金は、いくらくれるのでござるか?」
アキレスとは違って、虎之助は給料の額が心配なようである。
「報酬なら、ワスが天王星で拾った、1000カラットのダイヤモンドをあげるでヤンス。日本円にすると100億円はするでヤンス」
「ありがとうでござる」
虎之助は、丁重に助清からダイヤモンドを受け取った。
「君たちには、屋台の他に重大な使命もあるでヤンス」
「どんな使命でござるか?」
「ワスと一緒に、太陽神アトゥムを倒すでヤンス」
「ちょっと待て。太陽神を倒すって、アンタはいったい何者だ?」
屋台の手伝いから、いきなり話のスケールが大きくなったので、アキレスは驚いている。
「世間では、ワスのことを太陽神暗黒大魔王と呼ぶでヤンス。ワスと一緒に闇の軍団を率いてアトゥムを倒すでヤンス」
「それで、お給金は、いくら貰えるのでござるか?」
また、虎之助は給料が気になる様だ。
「君には、さっきダイヤモンドをあげたでヤンス」
「このダイヤは屋台の手伝いの分でござる。太陽神を倒すなら、もっともらうでござる」
「思ったより、しっかりした娘でヤンスね。いくら欲しいのでヤンスか?」
「毎日、一皿ずつ、タコ焼きが食べたいでござる」
「困ったでヤンスな。火星には、タコ焼きが無いでヤンス」
「嘘でござる!そこら中に、タコがたくさん居るでござる」
「いや、彼らは元はタコだが、今は火星人でヤンス。食べたら娘のパクチーに怒られるでヤンス」
「じゃ、毎月、手取りで16万円よこすでござる。ボーナスは年2回、2ヶ月分でござる」
「わかったでヤンス。それぐらいなら大丈夫でヤンスよ」
虎之助の要求は通ったようだ。
「だが、俺は断る」
アキレスは、キッパリと言い切った。
「俺はゼウス様の部下であり、光の戦士だ。闇の軍団などには、決して加わらない」
胸を張りながら断るアキレス。
「生意気、言うなでヤンス!」
バチーン!
いきなり助清にビンタされ、アキレスは吹っ飛んだ。
「グフッ、なんてパワーだ。あらゆる攻撃が効かない俺が、こんなに吹っ飛ばされるとは」
「お主は、我がままでござるな」
さっそくエプロンを着けて、虎之助は屋台の手伝い始めている。
「お前は、元から悪魔側の人間だから大丈夫かも知れないが、俺は光の戦士なんだよ」
「拙者も、光の戦士でござるよ」
「嘘つけ!お前のような光の戦士がいるか」
「グタグタ言ってないで、さっさと働くでヤンス」
「断る!」
アキレスの意志は固い。
ドカッ!
助清のアッパーカットで、アキレスは100メートルほど上空に吹っ飛んだ。
ドタッ!
そして、アキレスは地面に落ちて来た。
「うぐっ。なぜだ?俺にはどんな攻撃も、効かないはずなのに」
血を吐きながら、アキレスは呻いている。
「ワスは太陽神暗黒大魔王でヤンスよ。そんな、ちゃちな防御能力なんぞワスからすれば無いに等しいでヤンス」
「くそっ!このオッサン、見た目と違って、なんて強さだ」
「サボってないで、お前も、しっかり働くでござる」
アキレスは、虎之助にまで注意されてしまった。虎之助は報酬に満足しているようで、真面目に働いている。
その後、何度もアキレスは助清に挑むが、その都度ボコボコにやられて、結局タピオカミルクティーの屋台で働かせられる事となるのであった。




