表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
38/149

左近の帰還

「こいつを見れば、大阪DSP[デビルスペシャルポリス]のやつらビビるだろうな」

「こんなんで大丈夫だいじゅぶなんか?」

「大阪のやつらは、ぬるい相手としか戦ってないから、このぐらいでちょうど良いんだよ」

 京都DSPでは、芹沢鴨せりざわかも左近さこん治療ちりょうを、えたところであった。

芹沢せりざわはんも、人が悪いでんな」 

 芹沢せりざわと同じ京都DSPの転生者てんせいしゃであるほり安次郎やすじろうは、現在の左近の姿すがたを見て、さすがに少し大阪DSPに同情どうじょうしている。

 ほりは転生する前、芹沢せりざわのような名のある人物では無かったが、どんな悲惨ひさんな負けいくさでも無傷むきず帰還きかんして来たという武芸ぶげいの達人であった。

 しかし、あまりにも強過つよすぎたため、敵方てきがた買収ばいしゅうされた同僚どうりょう寝込ねこみをおそわれ惨殺ざんさつされてしまった。  

 自分と同じように、部下に殺された芹沢せりざわとは気が合うようで、自然と一緒いっしょに行動することが多い。

「なに言ってんだ、俺は優しいぞ。たのまれた通り、ちゃんと左近にいた阿部仲麻呂あべのなかまろはらってやったんだからな。グワッハッハッハ」

 と、芹沢鴨せりざわかもは、堀の心配を他所よそ高笑たかわらいをした。



 ライアンとマーゴットが、相変あいかわらずアメリカ村の公園でたむろしていると

「あれっ!あの2人、この前、死んだんじゃなかったっけ?」

「ほんとだ。2人で殺し合って地獄じごくに落ちたはずよね?」

 目の前を、虎之助とらのすけ小太郎こたろう仲良なかよく歩いており、なぜか2人から湯気ゆげが出ている。

「いやぁ、地獄じごく温泉おんせんは気持ち良かったでんなぁ」

「ホントでござるな」

「姉さんなんか、おはだがスベスベになって色気がしてますやん。こりゃ、男がほっときまへんで。俺が男なら、ぜひよめしいぐらいですわ」

「俺が男ならって、小太郎は男でござろう」

「そうでしたわ。こりゃ、一本とられましたな」

 2人はゲラゲラわらいだした。


「ちょっと、なにが可笑おかしいのか全然わからないけど、アンタら地獄じごくに落ちたんじゃないの?」

 気になったマーゴットがたずねてみた。

地獄じごく温泉おんせんに、2人で入って来たでござる」

 まだ虎之助からは、湯気ゆげが出ている。

地獄じごくってそんな所なの?鬼が大勢おおぜいいてこわい所だと思っていたわ」

「そういえば、鬼がいっぱいてはりましたな」

「5人ほどブッ殺したら、泣きながら温泉おんせん案内あんないしくれたでござる」

 火照ほてった顔で虎之助が説明する。

石鹸せっけんやタオルもしてくれて、親切しんせつな鬼たちでしたわ」

 小太郎も満足まんぞくげである。

美味おいしい食事も出してくれたでござる」

 湯気ゆげを出しながら、虎之助はニコニコしている。

ーーやっぱり、コイツらかかわったらダメなやつらだわーー

 マーゴットは、あらためて決意けついするのであった。

 


 日本テクロノジーコーポレーションの社長室しゃちょうしつでは、ひさしぶりの長期ちょうき休暇きゅうかを終えた社長の鬼塚おにずか川島かわしまが話し合っていた。

「いやー、ひさしぶりに家族で温泉おんせんに行ってやされたわ」

 鬼塚は、ご機嫌きげんでアイコスをいながら話している。

「どこの温泉おんせんに行かれたんですか?」

地獄じごくにVIP用の温泉おんせんが出来たって聞いたんで、行って来たんや」

「へえ、そんなんが地獄じごくに出来たんですね」

「それが、その温泉おんせん不思議ふしぎなことがあってな」

「どんな事です?」

男湯おとこゆに高校生ぐらいの普通ふつうの人間が入ってたんや。なぜか鬼たちは、そいつに親切で、飲み物やら寿司すしやらをってたんや」

「なんで、ですかね」

「俺も、そう思って鬼たちに聞いたら、泣きそうな顔になりよったんや。俺は知ってのとお空気読くうきよむのが得意とくいやから、可哀想かわいそうになって聞くのを止めたんやけど。後でよめから聞いたら、女湯おんなゆにも高校生ぐらいの普通ふつうの女の子が入ってたそうなんや。ほんで、同じように鬼たちから接待せったいされてたんやって。不思議ふしぎやろ?地獄じごくのVIP用の温泉おんせんにやで」

たしかに不思議ふしぎな話ですね。実は私も、つまとの海外旅行中かいがいりょこうちゅう不思議ふしぎ体験たいけんをしたんですよ」

「なんや川島。お前もか」

関空かんくう何故なぜか火星行きの便びんがあって、火星に行って来たんですよ」

うそやろ?」

 当然とうぜん、鬼塚は信じない。

「それが本当なんです。火星にいたら、中年の男とその娘がタピオカミルクティーの屋台やたいを開いていて、飲んでみたらおもいのほか美味おいしくて」

「ちょっと待てや。俺の話より、お前の話の方が10万倍ほど不思議ふしぎやんけ!」

「本当の事だから仕方しかたないでしょう。そして、その親子以外の火星人は、なぜかタコでした」

「そこはホンマっぽいな」

 その部分は鬼塚も納得なっとくした。

「ところが、タコのれの中に、銅鬼どうきた男がたんですよ」

 い終わったアイコスを、ハイざらにてながら

「そんなアホな!」

 鬼塚は、言ってから少し考えて

「いや、そういえば、銅鬼どうきは鬼ロボに火星までばされたんやったっけ」

 と、言いなおした。

「そうなんです。今、考えると、あれはやっぱり銅鬼どうきだったんですね」

 川島が話を終えると

「この世には、まだ不思議ふしぎな事があるんやな」

 鬼塚は、2本目のアイコスをいながらつぶやいた。



 京都から大阪DSPの宿舎しゅくしゃに、安部あべ康晴やすはるもどって来た。

 いていた阿部仲麻呂あべのなかまろのおはらいが終了して、完治かんちした左近さこんれている。

「ご苦労様くろうさまでした安倍さん」

 玄関げんかんまで出迎でむかえた鬼一きいち岩法師いわほうしであったが、安倍が連れている左近の姿すがたを見ると、思わず絶句ぜっくした。

 何と、どう見ても11〜12さいの少年である。

「僕、左近。よろしくね」

「あっ、ああ。よろしく」

 あまりのおどろきに鬼一きいちは、言葉ことばまってしまった。

「左近さんが、小学生になってもうた」

 玄関げんかんまで出て来ていた小太郎こたろうは、左近を見てなげき出した。

「なんだか可愛かわいくなったでござるな」

 意外と、虎之助とらのすけからは好評こうひょうである。

「たいして変わんねえだろ」

 あいかわらず、狂四郎きょうしろうめている。

「あの芹沢せりざわさんが素直すなおに引き受けてくれたので、おかしいとは思っていたのだが、こうなってしまった」

 安倍は、バツが悪そうにしている

「まあ、こまかい事は気にしないで、みんな仲良くしようよ」

 なぜか、左近だけは明るい。

「そっ、そうだな左近。お前、腹減はらへってないか?」

 気持ちをえて、岩法師が話しかけた。

「僕、ハンバーガーが食べたい」

ーーハンバーガーだと。以前の左近は和食が好きだったのだが、好みも子供っぽくなったかーー

「わかった。注文してやるから、そこにすわって待っててくれ」

 食堂のテーブルを指さしながら、岩法師は電話をかける。

「ありがとう、おじちゃん」

 左近は笑顔えがおこたえた。

ーー左近に、おじちゃんと呼ばれるとはーー

 岩法師のテンションは、だだ下がりである。

綺麗きれいなおねえちゃん、僕と結婚けっこんしてよ」

 いきなり、左近が虎之助とらのすけにプロポーズして来た。

「姉さんは、オッサンと子供からモテまんなぁ」

 腕組うでぐみしながら、小太郎は感心かんしんしている。

「やめとけ左近、こいつはアホだぞ」

 狂四郎が、虎之助を見ながら言った。

歴史上れきしじょう一番馬鹿いちばんばかである、おぬしに言われたく無いでござる」

 馬鹿ばかにバカと言われて、おこった虎之助。

「そうや。しかも、お前の彼女はブスやし」

 小太郎も便乗びんじょうして悪口を言い出した。

「なに言ってやがる!桜田刑事さくらだけいじは美人だぞ」

「いや、ドブスや」

桜田さくらだは、意地悪いじわるでござる」

だまれ、貧乳ひんにゅう!」

 カチン!

「狂四郎!貴様きさま、ぶっ殺すでござる。唐沢家からさわけ忍術にんじゅつ冥界門めいかいもん』」

 虎之助はブチ切れて、忍術にんじゅつを使いドアを出現しゅつげんさせた。

「この『どこでも冥界めいかいドア』は『どこでもドア』にているが、行き先はすべ冥界めいかいでござる。狂四郎!おぬし冥界めいかいへ落とすでござる」

 虎之助は狂四郎の首をつかむと、『どこでも冥界めいかいドア』へんで行く。

「クソっ、俺は一人では死なないぞ。Aカップむすめ、お前も道連みちずれだ」

 狂四郎は、虎之助の左手を強くった。

「こらっ!はなすでござる」

 2人はいながら、ドアのこうがわにある冥界めいかいへと落ちて行った。

冥界めいかいいやでござる〜」

 虎之助のさけび声がとおのいて行く。

「俺も、面白おもしろそうやから冥界めいかいに行ってみよう」

 小太郎はみずから『どこでも冥界めいかいドア』へ入って行った。

 バタン!!

 ドアがまると、フッと『どこでも冥界めいかいドア』は消えた。

「岩法師のおじちゃん。あの人たちは、どこへ行ったの?」

 3人の喧嘩けんかを見ていた左近がたずねる。

「あの空の星になったんだよ」

 岩法師は、空をゆびさしながら優しく答えた。

綺麗きれいな、お星様ほしさまだね」

「人は死ぬと、お星様ほしさまになるんだ」

 ピンポーン!

 玄関げんかんのチャイムがった。

「ハンバーガーがとどいたようだ。一緒いっしょに食べよう」

「わーい」

 というわけで、左近は多少の問題は有るものの、大阪DSPへ帰還きかんしたのである。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ