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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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地獄へ道連れでござる

大変たいへんだ!」

 今年で20歳になったばかりの諜報ちょうほう部員ぶいんペドロスは、国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかいギリシャ本部に急いでんだ。

「大変ですアレクシオスさん。リンゼイ老師が日本で殺されました」

 諜報ちょうほう部長のアレクシオスは、ちょうど昼食をっていたところである。

「今、俺は牛丼ぎゅうどんに玉子をかけて食べるところだ。老師が一人が死んだぐらいでさわがしいぞ」

「しかし、アレクシオスさん。リンゼイ老師は、三神さんしんの一人であるブラフマー様ですよ」

「なにっ、ブラフマー様だと。それを先に言わんか!」

 アレクシオスは昼食を中断ちゅうだんして、ペドロスと急いで上司に報告ほうこくに行くことにした。


「ハルパトス様!大変です」

「なんだ。今からメガりカレーに玉子をかけて食べようとしていたのに」

 幹部かんぶのハルパトスも昼食中であった。

「すいません。諜報ちょうほう部員より、日本でリンゼイ老師が殺されたとの情報じょうほうが入ったものですから」

「老師が一人殺されたぐらいで、なにを大袈裟おおげさな」

「しかし、リンゼイ老師は三神さんしんのブラフマー様ですよ」

「なんだと!それを先に言わんか」

ハルパトスとアレクシオスとペドロスは、急いで局長きょくちょう報告ほうこくしに行く。


「グリゴリオス局長きょくちょう。大変です」

 局長室きょくちょうしつでは、グリゴリオス局長が昼食のチキンラーメンに、玉子をかけて食べようとしていたところであった。

「なんですか。昼食中にさわがしいですよ」

「それどころじゃありません。日本で老師が殺されました」

 ハルパトスは、あわてながら報告ほうこくする。

「老師が殺されたぐらいで、私の食事の邪魔じゃまをしてはいけませんよ」

「しかし、その老師というのはブラフマー様でありまして」

「なんですと!ブラフマー様が、それを先に言わないとダメでしょうが。これはゼウス様に報告ほうこくせねばなりませんね」

「それで、ゼウス様は、どちらにいらっしゃるんで?」

 ハルパトスは、グリゴリオス局長きょくちょうたずねた。

「ゼウス様はいそがしいおかたですから、サミットや会議かいぎで世界中を飛び回っておられます。ちよっとスケジュールを確認かくにんしてみましょう」

 グリゴリオスは、パソコンを操作そうさしてゼウスのスケジュールを調べてみた。

「ええと、今日は上方かみがた漫才まんざいサミットに参加されておられる」

「サミット中ですか、どうやって知らせましょうか?」

 ハルパトスが質問しつもんする。

むずかしいですね。しかし、全知ぜんち全能ぜんのうのゼウス様の事ですから、もうご存知ぞんじではないでしようか」

たしかに全知ぜんちのお方でしたら、当然とうぜん、知ってますね」

 グリゴリオスとハルパトスの会話を聞いていたペドロスは、疑問ぎもんに思い

「あのぉ、ゼウス様が全知ぜんちならば、なぜ私のような諜報ちょうほう部員が必要なのでしょうか?」

 と、もっともな質問をした。

「それはですね。お前たちがいなければ、諜報ちょうほう部員を監督かんとくする部長のアレクシオスの仕事が無くなる。アレクシオスたちが居なくなれば、部長に指示しじあたえる幹部かんぶのハルパトスの仕事が無くなる。ハルパトスや君たちがなくなれば、局長きょくちょうである私の仕事が無くなる。それじゃ、こまるではありませんか。私たちにもやしなわなければならない家族がいるのですよ」

 グリゴリオスは丁寧ていねいに説明する。

「なるほど。そういう事でしたか。なんだか、世の中の仕組しくみがわかったような気がします」

 ペドロスは納得なっとくした。

「どうやら、君もこれで大人の階段を一段いちだんのぼったな」

 アレクシオスも満足げである。

「君も、もう大人おとなの仲間入りだ」

「わっはっはっは〜」

 一同いちどうは笑いだした。

ーーしかし、この人たちは何故なぜ、日本の庶民的しょみんてきな食べ物に玉子をかけて食べるのが好きなんだろう?ーー

 新米しんまい諜報ちょうほう部員のペドロスには、あらたな疑問ぎもんが生まれるのであった。



 アメリカ村の公園では、いつものようにライアンとマーゴットがタコ焼きを食べていた。

「しかし、まさかリンゼイ老師がられるとは、思ってもいなかったな」

「あのおじいさんって、そんなに強かったの?」

 マーゴットは、あまりリンゼイ老師のことを知らない。

「そりゃ、この世を創造そうぞうした三神さんしんの一人なんだから強いだろう」

 2人が話していると、なんだか見慣みなれた大男がやって来た。

「よう、元気そうだな」

「アンドロポプ!お前、生きてたのか?」

 なんと、死んだと思われていたアンドロポプである。

「いやぁ、三枚におろされた時は、さすがに死ぬかと思ったけど、頑張がんばったら何とか再生さいせいできたな」

すごいな、お前の再生能力さいせいのうりょくは」

「今後は、お前の忠告ちゅうこくどおり、あの小娘こむすめにはかかわらないようにするよ」

 凶暴きょうぼうなアンドロポプも、さすがにりたようである。

「長生きしたけりゃ、そうする事だな」


「ちよっと、めてよ!」

 女性のいやがる声がする。

 ライアンが声のする方を見ると、マーゴットが若い男にからまれていた。

「ええやん。俺と浪速なにわ歴史博物館れきしはくぶつかんに行こうや」

いやよ、なんでアンタと浪速なにわ歴史れきしを勉強しなくちゃいけないのよ」

 小太郎こたろう熱心ねっしんにに、マーゴットを口説くどいていた。

「また、こいつか」

 ライアンは、あきれながらも

「お前、もうマーゴットのことはあきらめろ。いつも一緒いっしょき合ってもらえよ」

いやや!虎之助とらのすけ姉さんは、可愛かわいいけど色気いろけが無いんや。俺はこのねえちゃんみたいなセクシーギャルがエエんや」

 小太郎がゴネ出した。

「おい小僧こぞう、後ろを見てみろ」

 アンドロポプがふるえながら、小太郎の背後はいごゆびさした。

だれ色気いろけが無いのでござるか?」

 そこには、なんと虎之助とらのすけが立っている。

ーーあの凶暴きょうぼう凶悪きょうあくなアンドロポプがふるえているーー

 初めて見るアンドロポプのおびえように、ライアンは軽いおどろきを感じた。

「あっ、姉さん。聞いて下さいよ、このねえちゃんが、さそってもデートに行ってくれないんですわ」

「そんな事より、さっきだれかの事を、色気いろけが無いって言ってなかったでござるか?」

「そんなん、言うわけおまへんがな。なに言うてまんの姉さん」

 と、しらをる小太郎であったが

「こいつ、アンタの事を色気いろけが無いって言ってたぜ」

 あっけなく、アンドロポプにバラされてしまった。

「おい、アンドロポプ。このにはかかわるなって言ったろ!」

 あわててライアンがめるが

「小太郎!それは本当でござるか?」

 本気で虎之助は、おこっているようである。

「チッ!バレちゃ仕方しかたありまへんな。たしかに言いましたよ、言いましたとも。それがどうかしはりましたか?色気いろけが無いのは本当のことですやん!」

 小太郎がひらなおると

「小太郎!貴様きさま!!」

 と、怒鳴どなり、虎之助は呪文じゅもんとなえ出した。

唐沢家からさわけ忍術にんじゅつ地獄門じごくもん』」

 虎之助は忍術にんじゅつ公園内こうえんないにドアを出現しゅつげんさせた。

「この『どこでも地獄じごくドア』は『どこでもドア』にているが、行き先はすべて地獄じごくでござる」

「なっ、なんとおそろしいドアだ」

 アンドロポプは、またふるえ出した。

「小太郎。貴様きさまを、このドアにブチんで地獄じごくへ落とすでござる!」

ーーアカン、マジでおこってはる。逃げないと、姉さんに殺されるーー

「ひぃー!姉さん、ゆるして下さい〜」

 小太郎は全速力ぜんそくりょくげ出した。

拙者せっしゃから、逃げられると思っているでござるか!」

 逃げる小太郎を、虎之助がいかけて行く。



「だから、かかわるなって言ったろ」

 あきれながらライアンが言う。

「本当だ。とんでもなくヤバいむすめだ」

 アンドロポプが反省はんせいしていると、こうから、また顔見知かおみしりが2人やって来た。

「おーい。ライアン」

 アーナブとマニッシュである。

「ええっ!お前らも生きてたのか?」

 おどろくライアン。

「いやぁ。あのプレアデス星人の殺人ビームを受けた時は、さすがに死ぬかと思ったけど、頑張がんばったら何とか再生さいせいできたよ」

「お前らの再生能力さいせいのうりょくすごいな」

「でも、リンゼイ老師は死んじゃったみたい。私たちこれからどうしよう?」

 マニッシュは、今後のかたを心配している。

「インドに帰ったら、リンゼイ老師をまもれなかった責任せきにんわれるだろうしな」

 アーナブも思案しあんしている。

「アンタたち、もともと京都に行くんじゃなかったの?」

 マーゴットがたずねた。

「俺たち2人だけで京都はキツいな。鬼神きしん化物ばけものよう転生者てんせいしゃがゴロゴロるんだろ」

 そうこう話していると、ボロボロになった小太郎がもどって来た。

「ホンマに殺されるかと思ったわ」

 服が半分、げており、全身ぜんしんきずだらけである。

「あれっ、綺麗きれいねえちゃんがえてる。ねえちゃん、俺と相席あいせきスーパー銭湯せんとうに行かへんか?」

 今度はマニッシュを口説くどき出した。

「そんな変なトコ行かないわよ」

 露骨ろこついやがるマニッシュ。

「よせよ。マニッシュがいやがってるじゃないか」

 アーナブが、とめに入る。

「なんや、お前。このねえちゃんの彼氏か?」

 小太郎は女の事となると、すぐに喧嘩けんかごしになる。

「彼氏じゃないけど、いやがってるじゃないか。それに、あのはもう良いのかよ」

ねえさんは上手うまく、まいて来たから大丈夫だいじょうぶや。お前ら、姉さんが何でバカみたいに強いのかおしえたろか」

 なぜか、小太郎はえらそうである。

「なんでだ?」

 興味きょうみを持ったアンドロポプが聞いた。

馬鹿ばかやからや!馬鹿ばかやからバカみたいに強いんや」

「おい小僧こぞう。後ろを見てみろ」

 ふるえながら、アンドロポプは小太郎の後ろをゆびさした。またしても、小太郎のすぐ後ろに虎之助が立っている。

「小太郎!今から、お前を殺すでござる!」

 虎之助は小太郎の首をつかむと、『どこでも地獄じごくドア』にんだ。

「クソっ!俺は一人では死ねへんで。姉さんも道連みちずれや」

 小太郎は両手で虎之助の左手をにぎり、おもいっきり引っった。

「こら、はなすでござる」

 虎之助と小太郎はいながら、2人とも『どこでも地獄じごくドア』のこうがわに引きずりまれて行った。

地獄じごくいやでござる〜」

 虎之助のさけび声がとおのいて行く。

パタン!

 ドアがまり『どこでも地獄じごくドア』は、フッと消えた。

「あいつら死んだのかな?」

「たぶんな」

 アンドロポプとライアンは、あきれて顔を見合みあわせるのであった。

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