表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
3/149

鬼武者でござる

 梅田うめだ高層こうそうビの最上階さいじょうかい鬼塚おにずかがくつろいでいると、部下の川島かわしまが男を一人、れて来た。

「なんや。そいつはだれや?」 

一般いっぱんの鬼で澤田さわだと名のっています。なんでも、15人の鬼の仲間が転生者てんせいしゃられたので、逃げて来たそうです。我々にたすけをもとめているのですが、どうされます?」

「15人かぁ。相手は何人や?」

「4人と一人です」

「なんじゃそりゃ?」

「5人をったのが4人で、10人の戦闘部隊せんとうぶたいを殺したのが、一人の転生者てんせいしゃです」

「なんや、そういう事か」

 鬼塚はアイコスをいながら思案しあんした。

 確かにわれ鬼武者おにむしゃは、昔から一般いっぱんの鬼を守る役割やくわりである。

 大企業だいきぎょう経営けいえいもしているので、戦闘せんとうでも経済的けいざいてきにも、一般いっぱんの鬼たちを保護ほごするように、先祖せんぞ代々、言い伝えられている。

 だが、リスクはおかしたくない。

 この『日本テクノロジーコーポレーション』は、ネット通販つうはん携帯電話けいたいでんわ事業じぎょう手掛てがけ、業績ぎょうせきは国内でも、最大手さいおうてになるほどに成長してきた。

 転生者てんせいしゃは鬼族全体のために抹殺まっさつしなければならないが、警察けいさつに目を付けられたくはない。

「そうや。あいつ何ていったかな?仕事はイマイチだが戦闘能力せんとうのうりょくが高い鬼武者おにむしゃがおったやろ?」

黒瀬くろせですか」

「そう黒瀬や。あいつに他の鬼武者おにむしゃを、2人ぐらいけてやったら大丈夫だいじょうぶやろ」

「わかりました。お前、鬼武者おにむしゃを3人出してやるから、その転生者てんせいしゃどもを抹殺まっさつしてこい」

「ありがとうございます。鬼武者おにむしゃれば、あんなやつらどうって事ありません」

 澤田さわだは、転生者てんせいしゃ復讐ふくしゅうできるこを確信かくしんしてよろこんでいる。

「ところで、貴方あなたは、なぜアイコスをっているのですか?鬼は肺癌はいがんにならないのに」

 澤田さわだは、ふと疑問ぎもんに思った。

普通ふつうのタバコは、部屋や服にヤニがくからいやなんや」

 鬼塚おにずかは、面倒めんどくさそうに答えた。



虎之助とらのすけ様子ようすはどう?」

 桜田刑事さくらだけいじ宿舎しゅくしゃ様子ようすを見に来た。

 先日の件で虎之助は、現場におくれたばつとして宿舎しゅくしゃ掃除そうじ洗濯せんたくを一人でやらされていた。

意外いがい真面目まじめにやってるが、どうも気になる」

 左近さこんは、鬼の戦闘部隊せんとうぶたい全滅ぜんめつしていたことがに落ちないようだ。

「あの件は、今調査中いまそうさちゅうよ。そのうち鑑識かんしきからなにか報告ほうこくがあるわ」

 桜田刑事が奥へ入って行くと、虎之助が古臭ふるくさいエプロンを付けて掃除そうじをしている。その姿は、まるで大正時代たいしょうじだいの若い女中じょちゅうさんのようである。

「がんばってるようね、虎之助」

「あっ。おぬしは、意地いじの悪い桜田刑事さくらだけいじ拙者せっしや、がんばっているので磔獄門はりつけごくもんだけは、ゆるして下され」

「誰が意地いじが悪いですって!」

間違まちがえたでござる」

「何をどう間違まちえたのよ!せっかく服を買いに連れて行ってあげようと思ったけど、めとくわ」

「服はしいでござる。拙者せっしや、服を買ったことが無いでござる」

 女性の転生者てんせいしゃは虎之助が始めてなので、とりあえず桜田刑事のおふるを着せていたのだが、虎之助の方が華奢きゃしゃなので、少しダブついている。

仕方しかたないわね、じゃ行きましょうか。ただし、今度、私のことを意地悪いじわるとか言ったら、市中しちゅうまわしのうえ、打ち首にするからね」

「わかったでござる。拙者せっしやもう言わないでござる」



 桜田刑事と虎之助が、ショッピングセンターで服をえらんでいると、2人に気付かれないよう、4人組の男が少しはなれてけて来ていた。

「このむねくブラジャーとやらも、買ってしいでござる。おぬしがくれたのは大きぎて動きにくいでござる」

「そうね、アンタならこのAカップで良いんじゃない」

「そうでござるね、拙者せっしやならこのAカップというので充分じゅうぶんでござるよ」

「じゃ支払しはらいして来るから、アンタはここで少し待ってなさい」

「わかったでござる」



 4人の男たちが話し合っている。

「やつ一人になったぞ、どうする」

「どうするも、こんな人混ひとごみでは、どうする事もできん。しばらくけるぞ」

 黒瀬くろせ慎重しんちょうである。

 4人の男たちは、虎之助を抹殺まっさつするために呼ばれた鬼であった。

「そんな事しなくても、いい方法があるでござる」

 虎之助が提案ていあんする。

「どんな方法だ?」

 黒瀬は聞いた相手あいての顔を見た。

「うあっ!コイツいつの間に!」

 虎之助が、すぐ横に居たのでおどろいた。

 他の3人もおどろいている。

 4人がはなつ殺気に気づき、虎之助の方から接触せっしょくして来たのである。

拙者せっしや、連絡用にスマートホンを持たされているので、LINEの交換こうかんをするでござる。これで連絡して邪魔じゃまが入らない所で死合しあうでござる」

「LINEでか。わなじゃないだろうな?」

 澤田さわだうたがっている。

わなでもかまわん。来る転生者てんせいしゃが多い方が好都合こうつごうだ。まとめて始末しまつできるからな」

 黒瀬は自信じしんまんまんである。

「では、拙者せっしゃは行くでござる」



「虎之助、ドコ行ってたのよ!さがしたじゃない」

 桜田刑事はおこっていた。

もうわけない。友達ができたのでLINE交換こうかんしてたでござる」

「ともだちって、女の子?」

「30歳ぐらいの男だったでござる」

「アンタ身体からだは若い娘なんだから、変な人とLINE交換こうかんしちゃダメよ」

「気を付けるでござる。帰ってAカップのブラジャーを、着けてみたいでござる」

「そうね、もう帰りましょう」



 その夜、廃校はいこうのグランドでは、鬼武者おにむしゃたち4人が虎之助を待っていた。

「場所は本当に、ここで合ってるんだろうな?」

 黒瀬くろせは少しイラついている。

「あってるはずだがおそいな。スマホで連絡れんらくしてみろ」

「わかりました」

 澤田さわだがスマートホンを取り出そうとした時、虎之助があらわれた。

おくれてもうわけないでござる」

「お前、一人で来たのか?」

「一人でござる。なかなか宿舎しゅくしゃからけ出せなくて苦労くろうしたでござる」

鬼武者おにむしゃさんたち、たのみますよ」

 澤田さわだは、少し後方こうほうに下がっており、始めから逃げごしである。

「なにをビビっておる。貴様きさま鬼武者おにむしゃが3人がかりで負けるとでも思っておるのか!」

 黒瀬が澤田さわだ怒鳴どなっていると、パタッ!と音がした。

 り向いて見ると、連れて来た2人の鬼武者おにむしゃが首を切り落とされたおれている。

「ひいっ」

 澤田さわだは、いちもくさんに逃げ出した。

「待て!逃げるな貴様きさま

 黒瀬はあせりながら、特注とくちゅうの細長い金棒かなぼうを、かまえた。

「では、いくでござる」

 虎之助が向かって来る。

 転生者てんせいしゃとはいえ、こんな若いむすめられるわけにはいかない。

カキッ!

 虎之助の一撃いちげきを、なんとか受け止めた。と思ったら、腹部ふくぶを深々と切られていた。人間なら致命傷ちめいしょうである。

 黒瀬は腹部ふくぶを押さえながら

「待て!またLINEする、勝負しょうぶはおあずけだ」

「どうしたでござる?なにか急用きゅうようでござるか」

「ちょっと上司じょうしから呼び出しが」

 と、適当てきとうな言いわけをして、スマホで上司と話すフリをしながら逃げて行った。

 一人廃校ひとりはいこうのこされた虎之助は

急用きゅうようなら、仕方しかたないでござるね」

 と、刀をさやおさめた。



 宿舎しゅくしゃに帰ると、無断むだんで外出したことがバレており、虎之助は桜田刑事と左近に怒られてしまった。

勝手かってに夜一人で外出しちゃダメでしょう!」

「友達からLINEがあって、呼び出されたでござる」

「友達って女の子?」

「オッサッ、いや女の子でござる」

「今、オッサンって言いかけなかった?」

「女の子でござるよ」

「お前、鬼を切って来たな」

 沈黙ちんもくしていた左近が口を開いた。

「そんなこと、してないでござるよ」

「鬼の情報じょうほうは、ちゃんと私たちに報告ほうこくするのよ」

 桜田刑事は、プリプリ怒っている。

承知しょうちしたでござる」

ーーこのからは血のにおいがする。本人は否定ひていしているが、確かに鬼を切って来たな。いったい何者なんだーー

 しおらしく返事をする虎之助を、左近はうたがいの目で見るのであった。  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ