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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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リンゼイ老師VS虎之助 前編

 リンゼイ老子たちが宿泊しゅくはくしている大帝国だいていこくホテルの一室いっしつに、阿部仲麻呂あべのなかまろがやって来た。

「アンタののぞみ通り、DSP[デビルスペシャルポリス]の安倍あべって来たぞ」

「さすがじゃ、やることが素早すばやいのぉ」

 阿部仲麻呂あべのなかまろ対応たいおうの早さに、老子ろうし満足まんぞくした。

「では、約束やくそくどうり、アンタたちの情報じょうほうもらおうか」

 ソファにすわると阿部仲麻呂あべのなかまろは、堂々とくつろいでいる。

 リンゼイ老子ろうしはタブレットを渡しながら

「好きなだけ見るがよい。ただし持ち出しは禁止じゃ」

 と、ことわった。

「俺たちの同士討どうしうちをふせために見るだけだ。しかし、アンタら世界中に支部しぶがあるなぁ。全部ぜんぶおぼえるのに少し時間がかかる」

「ところで、お前さん。半分はDSPの左近さこんなんじゃから、ワシらにDSPの情報じょうほうをくれんか?」

「どんな情報じょうほうだ?」

 タブレットを見ながら阿部仲麻呂あべのなかまろが、興味きょうみなさそうな返事をする。

「DSPの、若いむすめの事なんじゃが?」

「ああ、虎之助とらのすけか」

「そのむすめ情報じょうほうしいのじゃが、どのぐらい強いのかもな」

「元は忍者にんじゃだ。自分では、史上しじょう最強さいきょう忍者にんじゃだと言っていたな。なにかの手違てちがいで、妹の姿すがた転生てんせいしてしまったらしい」

めずらしいケースじゃな」

「なんでも、5万年に一人の逸材いつざいらしい」

「やはり、それほどの手練てだれじゃったか」

忍術にんじゅつ剣術けんじゅつ超一流ちょういちりゅうで、陰陽道おんみょうどうも少しは使えるらしい。今はタヌキの式神しきがみを使っている」

「やっかいな相手あいてじゃな」

「そうだ。あと妹はDカップだったが、転生てんせいした自分はAカップしかないとなげいていたな」

「その情報じょうほうは、いらん」


 しばらくパソコンを見ていた阿部仲麻呂あべのなかまろは、あることに気がついた。

ーーやはりそうか、国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかいとは、やつらの作った組織そしきだったのか。敵にまわさずに正解せいかいだったなーー

 おそろしい事実に気付きづいた阿部仲麻呂あべのなかまろは、鬼とDSPに同情どうじょうすら感じるのであった。



 夕食時の千日前せんにちまえで、30代の男が、青いセーラー服を着た少女と一緒いっしょ高級蟹こうきゅうかに料理屋りょうりやで夕食を食べていた。

「モグモグ。これは、なかなか美味うまかにでござるな」

 虎之助は、ご馳走ちそうを前にして機嫌きげんが良い。

「そりゃ、そうですよ。今回は奮発ふんぱつしましたから」

ーーちょっと痛いが、数万円で命が助かったと思えば安いもんだ。それにしても、こいつ何故なぜまだポピリンの姿すがたなんだ?ーー

「モグモグ、ところで黒瀬くろせ阿部仲麻呂あべのなかまろとは何者でござる?」

「さあ。われわれ鬼連合団体おにれんごうだんたいも調べているんですが、はっきりした事は、わかっていません」

安倍顧問あべこもんを殺したのは、阿部仲麻呂あべのなかまろでござるな?」

「たしか、若林わかばやしがそう言ってましたね」

「なるほど。では、次回は海老えび料理りょうりおごるでござる」

「えっ、今日のかに料理りょうりで、この前のめ合わせはんだんじゃ」

「なにふざけた事を言ってるでござる!さては、拙者せっしゃ魔法まほうセーラー戦士せんしポピリンだからって、めているでござるな!」

 魔法セーラー戦士ポピリンはおこり出して、短刀たんとうを黒瀬の首にきつけた。

「とんでもない、めてませんよ。わかりました、次は海老えび料理りょうりおごりますから」

 しぶしぶ、おご約束やくそくをさせられる黒瀬であったが、なぜ、自分が魔法セーラー戦士におどされなければいけないのか、理解りかいはできなかった。



 翌日、安倍康晴あべやすはる鬼一きいちは大量の式神しきがみから情報じょうほうを集め、阿部仲麻呂あべのなかまろ左近さこん居所いどころさぐっていた。

「この大帝国だいていこくホテルから、左近が出て来たようですよ」

 鬼一きいちは、自分の情報じょうほうを安倍に伝える。

やつは、ここにまっていたのか、それとも誰かに会いに来たのか」

「ヤモリからの報告ほうこくでは、ここの21階に数日前からあやしいインド人が3人で宿泊しゅくはくしています」

「どこがあやしいんだ?」

高級こうきゅうホテルにまってますが、警察けいさつ公安こうあんのリストにはっていません、おそらく偽名ぎめいでしょう。『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』の可能性かのうせいがあります」

「左近と国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかいつながっているのか?」

「それを調べるために、とりあえず、そのインド人の部屋に行ってみましょう」

 2人は、ホテルを調しらべる事にした。



 そのころ、虎之助と小太郎もタヌキの式神しきがみを使って左近の行方ゆくえを追っていた。

ねえさんのタヌキの式神しきがみは、優秀ゆうしゅうでんなぁ」

式神しきがみは、出した術者じゅつしゃ能力のうりょくによって性能せいのうが変わってくるでござる」

「じゃ、姉さんは、優秀ゆうしゅう能力のうりょく術者じゅつしゃという事に、なりまんなぁ」

「そうでござる。拙者せっしや能力のうりょくは、レオナルド・ダ・ヴィンチなみの高さでござる」

「すんまへん。その、レオナルド何とかさんって人、知りまへんので、ダンゴ虫でたとえてみてくれまへんか」

「えっ、ええっと、それじゃ、拙者せっしや能力のうりょくは、ダンゴ虫並むしなみでござる」

「へえ、そうでっか。あれっ、タヌキがあのホテルに向かって行きまっせ」

高級こうきゅうそうなホテルでござるな。拙者せっしやたちの服装ふくそうでは、入りづらいでござるね」

 虎之助はMA1ジャケットにスカートで、小太郎はダウンジャケットにジーンズという、ラフな服装ふくそうである。

「姉さん、あの2人は、安倍顧問あべこもんの弟さんと新しい顧問こもんとちゃいまっか」

 小太郎が、大帝国だいていこくホテルに入って行く2人を見つけた。

拙者せっしやたちも、一緒いっしょに行くでござる」

 虎之助と小太郎は、ホテルに向かって走り出した。



 安倍康晴あべやすはる鬼一きいちが、ホテルの一階ロビーでエレベーターを待っていると。

「待つでござる、拙者せっしやたちも行くでござる」

 と、虎之助と小太郎が走って来た。

ーーコイツは、兄が警戒けいかいしていた転生てんせい経路けいろ不明ふめいむすめだーー

 安倍は警戒けいかいするが、ここまで来てしまったのなら仕方しかたないと、あきらめ。

「では、いて来てくれ」

 と、不本意ふほんいながらも、一緒いっしょにエレベーターに乗り、21階へと向かった。


「2101号室に、あやしいインド人の3人組が宿泊しゅくはくしているので、今から調べに行くところだ」

 安倍が、虎之助と小太郎に状況じょうきょうを説明する。

 エレベーターが21階に着くと

「アハハハ………」

 と、急に虎之助がわらい出した。

「どうしたんだ、何がおかしい?」

 安倍と鬼一きいちおどろくと、なぜか小太郎があせって

「すんまへん。姉さんは、時々おかしくなるんです」

 とりあえず、適当てきとうな言いわけをして誤魔化ごまかすことにした。

ポカっ!

「いてっ!」

 しかし、虎之助に頭をなぐられた。

「おかしくなって無いでござる。こんな時のためみだした、拙者せっしや必殺技ひっさつわざを出すでござる」

 虎之助は銀のおぼんを取り出すと、一瞬いっしゅんでメイド少女戦士しょうじょせんしマリリンへと変身へんしんした。

 黒ベースで、白いエプロンとフリルのいたメイド姿すがたである。

 さらに、銀のおぼんには、いつの間にか、アイスコーヒーが3つならんでいる。

「もし『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』の者だったら、メイド姿すがた油断ゆだんさせて、この毒入どくいりアイスコーヒーで毒殺どくさつするでござる」

 メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンは、自信じしんまんまんに言った。

「さすが姉さん、やる事が過激かげきでんなぁ」

 小太郎は一人で感心かんしんしている。

「君は、大変たいへん勘違かんちがいをしているぞ」

 鬼一きいちが、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンに指摘してきして来た。

「なにを、でござるか?」

「日本のホテルには、メイドはいないぞ」

ないのでござるか?」

普通ふつうない」

 安倍はねんを押した。

「では、力ずくで、毒入どくいりアイスコーヒーを飲ませるでござる」

「いや、そんなの無理むりだって」

 鬼一きいちが止めるが、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンは、2101号室に向かって行く。

カチャ。

 ドアが開く音がして、部屋へやからアーナヴが出て来た。

「なんだ。さわがしいな」

「これを飲むでござる」

 メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンが無理むりやり、アーナヴにアイスコーヒーを飲ませる。

「うぐっ、くるしい」

「どうしたのアーナヴ?」

 マニッシュが、心配しんぱいして出て来た。

「お前も、アイスコーヒーを飲むでござる」

 マニッシュも、無理むりやりアイスコーヒーを飲まされた。

「おい!ムチャはめろ!」

 安倍が制止せいししようとするが、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンはやめない。

「やっぱりコイツらは、『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』でござる。以前いぜんにアメリカ村で確認かくにんしたでござる」

「そういえば、あの男、アメリカ村でやつらのエージェントと話していましたわ」

 小太郎も、ライアンとアーナヴがしたしそうに話していた事を思い出した。

「なに事じゃ!」

 さわぎを聞いて、リンゼイ老子ろうしも出て来た。

親玉おやだまあらわれましたよ」

 鬼一きいち安倍あべに、ささやく。

「このジジイにも、アイスコーヒーを飲ませるござる」

「ダッ、ダメです老子ろうし、ゴフッ、これは毒入どくいりコーヒーです。われらも飲まされてしまいました。グフッ!」

 アーナヴが必死ひっしめる。

「ジジイも飲むでござる」

 メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンが、リンゼイ老子ろうしにアイスコーヒーを飲ませようとする。

「やめんか!このおろか者が!」

 リンゼイ老子ろうし掌底しょうていで、メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンはばされた。

無茶苦茶むちゃくちゃむすめじゃな。待てよ、良く見ると弟子でしたちを殺した小娘こむすめではないか」

 リンゼイ老子ろうしは、ふところから丸薬がんやくを取り出すと、アーナヴとマニッシュに渡した。

「これを飲んで静養せいようしておれば、どくも消えるじゃろう。後はワシにまかせるのじゃ」

「すいません老子ろうし油断ゆだんしました」

 アーナヴとマニッシュは、非常階段ひじょうかいだんに向かって退避たいひしようとしている。

ねえさん、あいつら逃げようとしてまっせ」

 小太郎は、ばされたメイド少女戦士しょうじょせんしマリリンを、こそうとした。

「あのジジイ!可憐かれんなメイド少女をばすとは、非常識ひじょうしきやつでござるな」

「いえ、非常識ひじょうしきさでは、姉さんも負けてまへんで」

拙者せっしや非常識ひじょうしきさは、三千年続く一子相伝いっしそうでん非常識ひじょうしきさで、ござるからなぁ」

「さすがはねえさん、なに言ってんのか、サッパリわかりまへんが。カッコええでんな」

 メイド少女戦士しょうじょせんしマリリンと小太郎は、ゲラゲラわらい出した。


 笑っている2人を他所よそに、安倍と鬼一きいちはリンゼイ老子ろうし対峙たいじしていた。

 リンゼイ老子ろうしからは、ただならぬ妖気ようきが立ち込めている。

「安倍さん、この老人ただ者じゃないですよ」

 鬼一きいちは、老師ろうしから出ている妖気ようきが、異様いようであることに気付きづいている。

「俺は、目の前の老人より、後ろで笑っている2人の方が気になる」

 安倍は、虎之助と小太郎が馬鹿ばかである事に気付きづき始めていた。

「気持ちは、わかりますが。あの2人は、ほっといて、この老人をたおすことに専念せんねんしましょう」

 なんとかモチベーションを、リンゼイ老師ろうしけるよう努力する鬼一きいちであった。

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