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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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黒瀬のリベンジ

最初に対決たいけつした廃校はいこうのグランドで、虎之助とらのすけ黒瀬くろせ対峙たいじしていた。

 何故なぜこうなったかというと、話は少しさかのぼる。 



 日本テクノロジーコーポレーションの社長室に黒瀬は呼び出されていた。

「京都での修行しゅぎょうで、かなりうでが上がったようやな」

 鬼塚おにずか上機嫌じょうきげんで、アイコスを吸いながら聞いて来た。

「はい、おかげ様で、エイブラムス戦車120台分の戦闘力せんとうりょくきました」

 真面目まじめに答える黒瀬。

「そりゃ、たいしたもんやなぁ」

「さっそくだが、君に任務にんむあたえる」

 川島かわしまが説明し始めた。

「どのような任務にんむですか?」

れいの、DSP[デビルスペシャルポリス]の小娘こむすめ抹殺まっさつしてしい」

ーーある程度ていど予想よそうしていたが、やはりそうかーー

「わかりました。今の私なら勝てると思います」

「ほう、あんだけビビってたのに、えらい自信やんけ」

確実かくじつに勝てると思います。鬼神きしんにお会いした時も、おめの言葉をいただきました」

「そりゃすごいやんか」

「それで、若林わかばやしは、どうします?一緒いっしょれて行きましょうか?」

「いや、あいつにもリベンジする相手がいるんや」

「ああ、たし左近さこんとかいうDSPのさむらいですね、奈良なら襲撃しゅうげきに失敗したって言ってましたから」

「君は、良く知ってるねぇ。しかし、あまり知りすぎると長生きできんぞ」

 鬼塚にすごまれた。

「すいません、以後いご気をつけます」

 意外いがいな鬼塚の迫力はくりょくに、黒瀬はビビってしまった。

「君らは知らんと思うけど、この会社には知りすぎた者を抹殺まっさつする処刑鬼しょけいおにがいるんや。気を付けるんやで」

「はい、わかりました」

 黒瀬は、ビビリながら退出たいしゅつしていった。


「社長、処刑鬼しょけいおになんてウチの会社にましたっけ?」

 黒瀬が退出たいしゅつすると、すぐに川島が聞いて来た。

「いるよ」

だれなんですか?」

「お前や。熊堂子くまどうじは昔から処刑鬼しょけいおにの役なんや」

「そんな事、私は知りませんでしたよ」

「俺も知らんかったけど、ネットで調べたらそうやったんや」

「ほな、しゃないですね」

「そやな」

「それでは、私が魔界まかいに行って、有望ゆうぼうな鬼を集めて処刑鬼隊しょけいおにたい編成へんせいするというのは、どうでしょう?」

 という、川島の提案ていあん

「グッドアイデアや。じゃあ、俺は地獄じごくに行って、名のある鬼を集めてくるわ」

 鬼塚もめずらしく、協力することにした。

 と、いうことで、黒瀬は因縁いんねんぶかい虎之助と、対決たいけつする事になったのである。



 ライアンとマーゴットは、相変あいかわらずアメリカ村の公園こうえんでタコ焼きを食べていた。

「あれっ?こっちに向かって来るのはアンドロポプじゃない」

いややつに見つかったな」

「よう、ライアンじゃないか、となりの美人さんはだれだい?」

 アンドロポプは、気さくに声をかけて来る。

「俺の同僚どうりょうのマーゴットだ」

「こんな美人が相棒あいぼうなんて、うらやましいな」

「そう言うお前も、女の子をさがしてるんじゃないのか?」

「よく知ってるな、アメリカ支部しぶ情報じょうほうだけは早いからな。さがしているのはDSPのむすめだが、どこにいるのか知らないか?」

「あの娘はめとけ、お前の勝てる相手じゃない」

「なんだとテメエ!俺が負けるとでも言うのか!」

「一度、負けたじゃないか」

「クソッ!お前らは何でも調しらべてやがるな。だが、次はかならずブッ殺す」

「無理だ。あの娘の強さは、俺たちとは次元じげんちがう。俺が空母3隻分の強さだとしたら、あの宇宙要塞うちゅうようさいデス・スターなみの強さだ」

「デス・スターって、なんだ?」

「スターウォーズに出て来る、球体きゅたいのデカくて黒い宇宙要塞うちゅうようさいだ」

「あの小娘こむすめが、そんなに強いハズないだろ」

 アンドロポプは信じない。

「それに、リンゼイ老子ろうしが、あののことをねらっている。老子ろうしまかせておけば良い」

「なにっ!あのリンゼイ老子ろうしが……」

 さすがのアンドロポプもおどろいている。

「じゃ俺も、しばらくは、ここでタコ焼きを食べてごそう」

「いや、あっち行けよ」

「いいじゃねえか、俺もその美人さんと仲良くなりたいし」

 アンドロポプは、いやがられながもライアンたちと合流ごうりゅうする事になる。



「では、まいるでござる」

 虎之助が黒瀬に向かって走る。

 黒瀬は、京都きょうとで作ってもらった特殊合金製とくしゅごうきんせい金棒かなぼうかまえた。

ーーこの特殊とくしゅ合金ごうきんは、すべての物質ぶっしつ破壊はかいする。悪いが今度は俺が勝つーー

ガキっ!!

 虎之助の刀と黒瀬の金棒かなぼうがぶつかり合い、虎之助の刀が粉々にくだけた。

ーー今だ!ーー

 チャンスと見た黒瀬が、金棒かなぼうを虎之助の頭部とうぶに打ちける。

 虎之助は、後方に下がって金棒かなぼうけた。

「少しはうでを上げたようでござるね」

修行中しゅぎょうちゅうは、毎日が地獄じごくだったからな」

「では、拙者せっしゃ奥義おうぎを出すでござる」

 虎之助が、青いマジカルぼうると、魔法まほうセーラー戦士せんしポピリンに変身へんしんした。

ーーなんだ、このわざは?もしかして、ふざけてるのか?ーー

 黒瀬がひるんだスキに、ポピリンの手刀しゅとう心臓しんぞうねらって来た。

 とっさに、金棒かなぼうむね防御ぼうぎょする。

「この、金棒かなぼうれた物は、すべて破壊はかいする。防御ぼうぎょ完璧かんぺきだ」

 黒瀬は、絶対ぜったいの自信を持っている。

「じっちゃんの顔にかけて、お仕置しおきでござる!」

 ポピリンは、さけびながら向かって来る。

ーーじっちゃんの顔にかけてって、どういう意味だ?ーー

 一瞬いっしゅん、黒瀬にまよいがしょうじた。

ズボッ!!

 ポピリンの手刀しゅとうは、金棒かなぼうごと黒瀬のむねつらぬき、心臓しんぞう破壊はかいした。

「ゴフッ!」

 血をきながら、黒瀬はひざをつく。

ーーこっ、このには、まだ勝てんーー

 粉々にされた特殊合金とくしゅごうきん金棒かなぼうを見て、とても虎之助には勝てないことを黒瀬はさとった。

「では、とどめをすでござる」

 とっさに黒瀬はスマホを取り出して

「待て、取引先とりひきさきから重要じゅうような電話が入った!今度、うまい蟹料理かにりょうりおごって、このわせをするから、ちょっと待ってくれ」

 苦しまぎれにスマホを耳に当て、電話がかかって来たふりをする。

かに料理りょうりでござるか。なるほど、こやつ殺すにはしい男でござる」

「では、いずれ。また、連絡する」

 と言い残し、黒瀬はむねを押さえながら、全力で走りって行った。

取引先とりひきさきからの電話なら、仕方しかたないでござるね」

 と言いながらも、魔法まほうセーラー戦士せんしポピリンは蟹料理かにりょうり想像そうぞうして、ヨダレをくのであった。



 一方いっぽう牛鬼ぎゅうきこと若林わかばやしは、左近さこんらしき男が見つかったという情報じょうほうていた。

奈良ならでははじをかかされたが、今度こそ、とどめをしてやる」

 と、やる気まんまんで向かったのだが、見つけた左近は、すでにちがう男と対峙たいじしており不穏ふおん雰囲気ふんいきただよっている。

「お前は俺の子孫しそんらしいが、これも運命うんめいだ。死んでもらう」

貴様きさま!左近の身体からだったのか」

 安倍顧問あべこもんと、阿部仲麻呂あべのなかまろこと左近である。

人聞ひとぎききの悪いことを言うな、左近は納得なっとくして俺と融合ゆうごうしたのだ」

貴様きさまのような妖怪ようかいが、実直じっちょくな左近をだますのは簡単だろうからな」

「いや、左近をだましてなどおらん」

「行け!」

 天狗てんぐ河童かっぱ式神しきがみおそいかかる。が、左近にれたとたんに式神しきがみたちは、元の御札おふだもどって行く。

「俺に式神しきがみは通用しない」

「ならば、これはどうだ!」

 牛鬼ぎゅうきが後ろから右爪みぎづめを、阿部仲麻呂あべのなかまろ心臓しんぞうした。

だれだ!」

 いきなり出てきた牛鬼ぎゅうきに、両者がおどろいた。

事情じじょうは、よく分からんが左近こいつは俺がたおす」

 牛鬼ぎゅうきつめ阿部仲麻呂あべのなかまろ心臓しんぞうを深々とつらぬいている。

「この小僧こぞうが」

 阿部仲麻呂あべのなかまろさったつめくと、傷口きずぐちがあっという間に、ふさがっていく。

「お前、鬼になったのか?」

 元の左近だと思っていた牛鬼ぎゅうきは、戸惑とまどいをかくせない。

「こいつは左近では無い、左近の身体からだった阿部仲麻呂あべのなかまろという鬼だ」

 安倍顧問あべこもんが説明する。

「なんだか、ややこしそうだけど。とりあえず、こいつは俺がる」

 若林は、左近にリベンジしなければならない。

「2人まとめて、あの世に行け」

 阿部仲麻呂あべのなかまろが、念仏ねんぶつとねえだした。

 すると、地面から無数のうでびて来て、安倍顧問あべこもん牛鬼ぎゅうきの足をつかむと地中に引張ひっぱんで行く。

「うわっ!何だこれは?」

「そのまま、冥府めいふまで送ってやる」

「これはヤバいぞ」

 安倍顧問あべこもんあせっている。

 牛鬼ぎゅうきは、足をつかんでくるうでを切りはらうが、数が多すぎて間に合わない。 

 2人ともひざまで地面にまって来てしまっている。

「この化物ばけものが!」

 牛鬼ぎゅうき右爪みぎづめ阿部仲麻呂あべのなかまろの首をねらってびてきたが、なんなくはらわれてしまう。

「おうぎょうぎわが悪いな」

 阿部仲麻呂あべのなかまろふところから御札おふだを取り出すと、巨大な竜の式神しきがみあらわれた。

 竜は口を開くと2人に向かって、この世の物とは思えないすさまじいほのおき出した。

 2人のた場所は、はげしいほのおによって跡形あとかたも無くはいになっていく。

応竜おうりゅうほのおは一万度をえる。余計よけいやつも入って来たが、2人ともはいとなった」

 そう言い残すと、阿部仲麻呂あべのなかまろは立ちって行った。



 DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎しゅくしゃでは、みんなで晩御飯ばんごはんを食べていた。

「このビーフシチューは美味うまいでんなぁ」

 小太郎こたろうは、ご機嫌きげんである。

「あれっ、拙者せっしゃのタヌキが帰って来たでござる」

 虎之助とらのすけ式神しきがみであるタヌキが、なにかをくわえてもどって来た。

たしか、左近をさがしに行ってたはずでござるが」

 タヌキがくわえていた物を見てみると、一枚の御札おふだである。

「それは、安倍顧問あべこもんのチワワの御札おふだだ!」

 そうさけぶと、岩法師いわほうしは虎之助から御札おふだを取り上げて読みだした。

死参しさんと書いてある……」

 岩法師の手がふるえている。

「死して参上さんじょうする、という意味でござるな」

「それじゃ、安倍顧問あべこもんは死んだという事でっか?」

「そうでござる」

「なにバカなことを言ってんのよ、安倍顧問あべこもんが死ぬわけないでしょう!」

「いや、桜田刑事さくらだけいじ。虎之助の言う通り、安倍顧問あべこもんは死んだ……」

 岩法師の声がふるえている。

 ビーフシチューを食べていた手がまり、小太郎は茫然ぼうぜんとしている。

 桜田刑事が泣き出したので、狂四郎きょうしろうがなだめている。

「タヌキに案内あんないさせて、現場を見に行くでござる」

拙僧せっそうも行こう」

 虎之助と岩法師は立ち上がった。



「ここは、どこだ」

 目をました若林わかばやしは、なぜかまったく知らない部屋に居た。

「私のりてるアパートよ」

 女性の声が聞こえたので、見てみると霊鬼れいきであった。

霊気れいきさん、どうして?あなたは岡山県おかやまけんるはずでは?」

「岡山にはパチンコ屋が少なくて、じゃなくて、強烈きょうれつれいエネルギーを感じたから来てみたら、アンタが焼き殺されそうになってたんで霊体れいたいになってこっそり助けてあげたのよ」

「そうだったのですか。ありがとうございました」

ーー霊鬼れいきさんが来てくれてなかったら、確実かくじつに死んでたな。しかし、あの左近さこんじゃなく阿部仲麻呂あべのなかまろという男は強すぎる。牛鬼ぎゅうきの力は完全に覚醒かくせいしたのに、まったくたなかったーー

「そうだ、僕と一緒いっしょにいたDSPの男はどうなりました?」

「彼は鬼じゃなく人間だったから、手遅ておくれだったわ」

ーーそうだな、彼には鬼の耐久力たいきゅりょく治癒ちゆ力も無いから。一時いっときでも共闘きょうとうした相手としては残念ざんねんではあるがーー

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