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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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アンドロポプVS虎之助

 話しは、前回より少しもどる。

 虎之助とらのすけ小太郎こたろうが仲良くアメリカ村で買い物をしていると、2人同時に異変いへんに気が付いた。

 虎之助は後方にいる大男から強烈きょうれつ殺気さっきを感じ、小太郎は前方から桜田刑事さくらだけいじ悲鳴ひめいかすかにこえた。

ねえさん、どうします?」

拙者せっしゃが後の男の相手をするので、小太郎は桜田の方に行くでござる」

承知しょうちつかまつった」

 そう言うと、小太郎は疾風しっぷうのようにけ出した。

 虎之助は、大男が付けて来るのを確認かくにんすると、あえて人気ひとけの無い路地ろじに入った。



「あれっ、あのむすめどこに行きやがった」

 路地ろじに入ったアンドロポプは、いきなり虎之助を見失みうしなってしまった。

「なぜ拙者せっしゃを付ける?」

 どこからかむすめの声が聞こえる。

「上からの命令でな。かくれても無駄むだだ、悪いが死んでもらう」

 アンドロポプは口から大量のけむりき出した。

ーーマズい、これはどくガスでござるなーー

 路地ろじのビルのかべいていた虎之助は、素早すばやく飛びり地面にせる。

「ほう、姿すがたあらわしたな。だが、俺がどくガスを出し続けている間は近寄ちかよれまい」

 けむりきながらも、アンドロポプはポケットから数本のナイフを取り出し、虎之助めがけて高速で投げつけた。

ブスブスッ!!

 ナイフのさる音がする。

「たわいもない」

ズボッ!!

 勝利を確信かくしんしたアンドロポプの頭頂部とうちょうぶから足元あしもとまで、鉄パイプがつらぬいた。

 地面にせたのは、わりじゅつの服だけであり、虎之助はビルの屋上からアンドロポプに鉄パイプを投げたのである。

「くそう!油断ゆだんした」

串刺くしざしにしたのに、まだ生きてるとは、しぶといでござるな」

「この程度ていどでは死なん」

 なんとアンドロポプは、両手で自分を串刺くしざしにしている鉄パイプをき始めた。

「タフな男でござるな」

 虎之助が屋上からりて来た時には、鉄パイプをき終わっていた。

「とどめをすでござる」

 虎之助は、アンドロポプに向かって走る。

 アンドロポプは、逆に跳躍ちょうやくして虎之助のた屋上に上がった。

ーーこのまま、ブチ殺してやりたいが、さすがにダメージが大きい、とりあえず回復かいふくしなければーー

勝負しょうぶあずける」

 と、素早すばやって行ってしまった。

「追いかけたいでござるが、小太郎の方が気になるでござる」

 わりじゅついだ服を着ると、虎之助は小太郎の向かった方向ほうこうへと走り出した。



 一方いっぽう、前回から、小太郎と馬頭めずとの戦いがおこなわれていた。

 右腕みぎうでを切り落とされた馬頭めずは、いかくるいながら小太郎に向かって行く。

「姉さんからおそわった、唐沢流からさわりゅう剣術けんじゅつで相手してやる」

 馬頭めずは、右腕みぎうでを再生させながら

「ブチ殺す!!」

 と、小太郎になぐりかかる。

唐沢流からさわりゅう千枚切せんまいぎり!」

 すかさず小太郎は、必殺ひっさつ奥義おうぎをくり出す。

ズブズブズブッ!

「クフッ」

 バタッと馬頭めずたおれた。

「どうや、一秒に千回攻撃せんかいこうげきした。貴様きさまはもう2度と立てん」

 勝ちほこる小太郎の足首をつかむと、馬頭めず普通ふつうに立ち上がった。

「なにが一秒に千回だ。せいぜい3回ぐらいだったぞ」

「しもた、みがあまかっかた」

「いや、みの問題じゃ無くて、3回しかられてないって」

 馬頭めずに、まれた。

「デタラメ言うな、ちゃんと千回斬せんかいきったわ、このバカ鬼」

「なんだと!3回だけだったぞ、このアホ男」


 小太郎と馬頭めず激戦げきせんおこなっているスキに、狂四郎は牛頭ごず背後はいごから、馬頭めずの落とした金棒かなぼうひろってなぐりかかった。

「死ね!この鬼野郎おにやろう!」

ボコッ!!

てッ!なにすんだ!」

 金棒は牛頭ごず後頭部こうとうぶに命中するが、おこらせただけで意外いがい効果こうかは無かった。

 腹部ふくぶにダメージをっている狂四郎は、あきらかに劣勢れっせいである。

大丈夫だいじょうぶ?狂四郎君」

 桜田刑事さくらだけいじ拳銃けんじゅうかまえているが、このレベルの鬼に効果こうかが無いことは承知しょうちしている。


 4人が激闘げきとうりひろげていると、ようやく虎之助が到着とうちゃくした。

「こっちには、鬼がたのでござるね」

「あっ、姉さんや。今こいつを殺すので待っといて下さい」

 小太郎は、りきっている。

「お前のようなアホに、殺されてたまるか!」

 馬頭めずも、やる気まんまんである。


「虎之助!狂四郎君を助けて」

 桜田刑事さくらだけいじさけんだ。

 意外いがい牛頭ごずは強く、狂四郎が押されている。

承知しょうちしたでござる」

 素早すばやく、牛頭ごずの後方から側面そくめんまわると、虎之助は刀をいてりかかった。

唐沢忍術からさわにんじゅつ、3枚おろし」

パサッ!

 ハラりと牛頭ごずは横から3枚にれて、そのままたおれこむ。

「わっ、大変だ!!」

 3枚におろされた牛頭ごずを見て、あわてた馬頭めずは、牛頭ごずかかえて逃げ出した。

「俺におそれをなして逃げたな。口ほどにも無いやつや」

 逃げて行く馬頭めずに向かって、小太郎は勝ちほこっている。

「助かったわ、ありがとう虎之助」

 虎之助は、転生して以来いらい、初めて桜田刑事からめられた。

 狂四郎の方は、まだはらを押さえてうずくまっている。

大丈夫だいじょうぶ?狂四郎君」

 う桜田刑事。

「やっぱり、あの2人は出来できてまんなぁ」

 確信かくしんする小太郎。

「おなかったでござる」

 空腹くうふくうったえる虎之助。



 アメリカ村での戦闘せんとうは終わったが、はなれた所でライアンとマーゴットが戦いの一部始終いちぶしじゅうを、タコ焼きを食べながら見ていた。

「やはり、あの小娘こむすめはクセ者だな」

「アンドロポプは、たいした事ないじゃん」

「いや、アイツは強いハズなんだけどなあ」

ねえちゃん、にぎってもええ」

「ダメに、決まってるでしょ!って何で、ここにるのよ!」

 いつの間にか、小太郎がマーゴットのにぎろうとしている。

拙者せっしゃにも、タコ焼き、ちょうだい」

「うわっ!お前もか」

 虎之助も来ていた。

「このタコ焼きあげるから、あっちに行ってなさい!」

 小太郎と虎之助は、タコ焼きを渡されて、ぱらわれてしまった。



「ここまで来れば、大丈夫だいじょうぶだろう」

 馬頭めずは、瀕死ひんし状態じょうたいである牛頭ごずかかえて難波なんばまで逃げて来ていた。

「おい牛頭ごず大丈夫だいじょうぶか?」

 少しずつ治癒ちゆして来ているが、さすがに3枚におろされた牛頭ごずは、まだ返事ができる状態じょうたいでは無い。

トン!

 見知みしらぬ男とかたがぶつかったので、馬頭めず

失礼しつれい

 と、謝罪しゃざいして立ちろうとしたが、男にうでつかまれてしまった。

「待て、お前たちは鬼だな」

「なんだと、てめえ、なに者だ?」

「俺の名は阿部仲麻呂あべのなかまろ。今から死ぬお前たちはおぼえる必要ひつようは無いがな」



「左近が行方不明ゆくえふめいになった」

 DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎しゅくしゃでは、めずしく安倍顧問あべこもんを中心にミーティングがおこなわれていた。

奈良県警ならけんけい大伴おおとも警部けいぶより連絡れんらくがあった。飛鳥あすか複数ふくすうの鬼と戦った形跡けいせきがあり、鬼の遺体いたいが数体見つかったのだが、左近が帰って来ず、行方ゆくえがわからないそうだ」

重傷じゅうしょうって、どこかへ運ばれたとか?」

 一番、仲の良かった、岩法師いわほうしが心配そうに聞いた。

奈良県警ならけんけいが、近隣きんりん病院等びょういんなどに問い合わせてみたが、左近らしき者は来ていないそうだ」

不思議ふしぎな話でんなぁ。左近さんが自分で動ける状態じょうたいなら、病院に行くかか奈良県警ならけんけいもどっているハズですもんね」

 小太郎も心配している。

「とりあえず、俺のチワワ、岩法師のヤモリ、虎之助のタヌキの式神しきがみ捜索そうさくしてみよう。もしかすると、大阪に帰って来ているかもしれん」

「俺のゴキブリの式神しきがみは」

 小太郎が、自信ありげに聞いてきた。

「それは、いらん!」

 だが、キッパリとことわれてしまった。

「あと、大伴おおとも警部けいぶが、気になる事を言っていたのだが」

「どんな事ですか?」

 桜田刑事さくらだけいじが、たずねた。

飛鳥あすかには、陰陽師おんみょうじ修行中しゅぎょうちゅうまれではあるが、阿部仲麻呂あべのなかまろ屋敷やしきあらわれるそうだ」

「それは、誰でござるか?」

陰陽師おんみょうじを日本に持ちんだ、奈良時代ならじだいの俺の先祖せんぞだ。左近にも阿部仲麻呂あべのなかまろ屋敷やしきが見えたそうだ」

「その男があやしいでござるね」

「それは、まだ、わからんが。とにかく式神しきがみを使える者は、早速さっそく捜索そうさくしてくれ」

「俺のゴキブリの式神しきがみは?」

 小太郎がねんのため、もう一度、聞いてみた。

「それは、いらん!」

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