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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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阿部仲麻呂が登場でござる

 虎之助とらのすけたちは、岩法師いわほうしうなぎ屋にれて来てもらっていた。

「やっぱり、うなじゅう美味うまいでんなぁ」

 小太郎こたろう上機嫌じょうきげんうなぎを食べている。

「これは、浜松はままつさんでござるな。とても美味おいしいでござる」

 虎之助も機嫌きげん良く食べている。

うなぎ美味うまいのは良いが、あのチャッピーを何とかしないとな」

 狂四郎きょうしろうが、チャッピー対策たいさく真面目まじめに考えていると

「ところで狂四郎。お前、クリスマスは桜田刑事さくらだけいじとデートするんか?」

 と、唐突とうとつに小太郎が聞いて来た。

「何のことだ?俺は別に桜田刑事とってるわけじゃないぞ」

「いや、お前らはってるやろ」

「まだ、ってねえよ」

「まだ、っていうことは、これからうんやろ?」

「そんなの、わかんねえよ」

「狂四郎は阿呆あほだから、意地悪いじわる桜田さくらだとお似合にあいでござる」

「俺はアホじゃねえよ。それに、桜田刑事のことを悪く言うんじゃねぇ」

「姉さん、他人ひとの恋人の悪口を言ったらダメですやん」

「だから、まだ恋人じゃ無いって言ってるだろ!」

「おい、お前たち。喧嘩けんかするなら店の外でやれ」

 大声での言いあらそいになって来たので、岩法師に注意されてしまった。

「すんまへん」

「すいません」

 小太郎と狂四郎があやまった。

「狂四郎は気がみじかいから、こまるでござる」

「虎之助もみんなと仲良くするんだぞ」

「わかってるでござるよ。拙者せっしゃ他人ひとたいする思いやりの心は、タスマニアデビルの赤ちゃんもビックリして、ともぐいいをはじめるレベルでござる」

「さすがは、姉さん。やさしいでんなぁ」

 虎之助と小太郎は、ゲラゲラわらいだした。

ーーなにが面白おもしいのか、さっぱり分からんが、とりあえず仲良なかよくしてるので、これで良しとするかーー

 半分、あきれながらも岩法師は満足まんぞくするのであった。



 そのころ、火星では

 封印ふういんしてあったつぼから、500年ぶりに『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』が復活ふっかつしていた。

「アンタは、だれでチュか?」

 と言う、タコ四十郎しじゅうろうとい

「ワスは助清すけきよというでヤンス。よろしくでヤンス」

 やや背が低く華奢きゃしゃな体型で、黒縁くろぶち眼鏡めがねをかけた、昭和初期の日本のサラリーマンのような姿すがたをした男が答えた。

助清すけきよさんでチュか。僕はタコ四十郎しじゅうろうです、こちらにこそ、よろしくでチュー」

「それでアンタは、ここで何をしてたんでヤンスか?」

ぱらってしまい、自分の家と間違まちがえて、お酒をさがしていたでチュ」

「酒なら、このたなにいくらでも有るでヤンス」

 助清すけきよたなから何本かの酒瓶さけびんを取り出し、タコ四十郎しじゅうろうの前に置いた。

「あんな所に酒があったんでチュね。でも、どうしてアンタは酒のを知ってるのでチュか?」

「ここはワスの家だったでヤンス。久しぶりなんで、かなり様子ようすが変わってるでヤンスが」

「そうだったんでチュか。では、とりあえず乾杯かんぱいでチュ」

 というわけで、2人は夜通よどおし飲み続けるのであった。



「おタマ」

「ううっ、飲みぎて頭が痛いでヤンス」

「おタマ、どうしてつぼから出て来たのぉ」

 いつの間にか、まわりに人だかりが出来できており、むすめのパクチーもるではないか。

「ああ、パクチーでヤンスか。昨夜さくやのタコは?」

「そこで、まだてますけど」

 体格たいかくの良い男が指さす先に、タコ四十郎しじゅうろう酒瓶さけびんかかえたままている。

「君は誰でヤンスか?見たところ、火星人では無いようだが」

「私は地球人の銅鬼どうきといいます、わけあって火星ここるのです。アナタが『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』ですか?」

「みんなそう呼ぶでヤンスが、本名は助清すけきよでヤンス」

「おタマ、まだ休んでなくていのぉ?」

 パクチーが心配そうに声をかける。

「そうだな、だいぶきずえたし、もう大丈夫だいじょうぶだと思うでヤンス」

きずというと怪我けがでもされてたのですか?」

 気になって、銅鬼どうきは、たずねた。

太陽神たいようしんアトゥムひきいる光の軍団と、ワスを中心としたやみ軍勢ぐんぜい太陽系たいようけい覇権はけんをかけて3000千年間戦っていたのでヤンス。その時にったきずがやっとなおったようでヤンス」

ーーこの一見いっけん、平凡なサラリーマンのような男が、そんなスケールの大きな戦いをしていたのかーー

「そうだったのですか。我々は、やっと『山田タコ王朝』をたおした所なんですよ」

「じゃ、もう『山田タコ王朝』は無いんでヤンスか?」

「おタマは、戦争できずって弱っているところを『山田タコ1世』に封印ふういんされてしまったの」

「元々は、ワスが明石海峡あかしかいきょうかられて来たタコが火星で繁殖はんしょくしたのが、今の火星人なんでヤンス。しかし、山田タコ一族には見事みごと裏切うらぎられたでヤンス」

「はぁ、そうなんですか」

 銅鬼どうきたちが、戸惑とまどっていると

「君は、なぜかワスと同じやみにおいがするでヤンス」

と、助清すけきよ指摘してきされた。

「実は私は、鬼なんですよ」

「なるほど、君もやみの者でヤンスか。じゃ、一緒いっしょ太陽神たいようしんアトゥムをたおそうでヤンス」

「そのアトゥムというやつは、どこにるのですか?」

太陽神たいようしんだから、太陽のエネルギーがとどく所でヤンス」

「えらい広範囲こうはんいですね」

やつは、この太陽系たいようけい支配者しはいしゃでヤンスから」

「おタマ、また怪我けがするからあらそい事はやめてしいですぅ」

 パクチーは心配しんぱいしている。

「それもそうでヤンスね」

 助清は、意外とあっさりあきらめた。

「止めるんですか?」

「パクチーも心配しんぱいしてるし、あぶない事はめて、タコ焼き屋でも開いてらすでヤンス」

太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』こと助清すけきよは、太陽系たいようけい征服せいふく野望やぼうてた。



「あれが阿部仲麻呂あべのなかまろ屋敷やしきか」

 大伴おおとも警部けいぶには、決して近づくなと言われていた左近さこんであったが、どうしても気になって、ここに来てしまった。

たしかに、なにか居る気配けはいを感じる」

 飛鳥あすかに来て以来いらい陰陽師おんみょうじ修行しゅぎょうを続けている左近には、この屋敷やしきから、ただならぬ霊気れいきを感じる。

 危険きけんだとは分かっていながらも、左近は屋敷やしきとびらを開けて中に入って行く。

 ふるめかしい家具かぐ食器しょっきがキチンと整理せいりされており、ほこりひとつ無い清潔せいけつな家である。

 内装ないそう見入みいっていると、不意ふい背後はいごから気配けはいを感じた。

 くと、いつの間にか男がいる。

「この屋敷やしきに客人とは、何百年ぶりかのぉ」

「アンタが阿部仲麻呂あべのなかまろか?」

「かつては、そう呼ばれていたな。まあ、お茶でも飲んで行きなさい」

 お茶を用意よういしながら、その男は言った。

 左近がだまっていると。

「君ののぞみは、分かっている」

「えっ?」

「私は、君がこの飛鳥あすかに来た時から、ずっと見ていた」

 お茶を飲みながら、だまって左近は聞いている。

「君ののぞみは、だれよりも強くなる事のようだな」

ーーなぜ、この男は俺ののぞみを知ってるんだ?ーー

「だが、あまり強くなりぎると、大切な物をうしなう事になるが、それでも良いのかね?」

「私は転生者てんせいしゃです、うしなう物などありません」

「そうでは無い。君には大切な仲間や、強く健全けんぜん精神せいしんと肉体を持っている」

「そう言われると、そうかも知れません」

「それらを、うしなってでも強くなりたいのであれば、また此処ここに来なさい。その時は君に協力しよう」

ーー言われた通り、俺にはまだ大切な物があった。武芸者ぶげいしゃとして強さをもとめて来たが、てきれ無い物もあるーー

 左近が少しの間考あいだかんがえていると、いつの間にか男は屋敷やしきごと消えており、普段ふだん飛鳥あすか風景ふうけいもどっていた。

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