表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
2/149

左近の登場でござる

 DSPの宿舎しゅくしゃもどると、小太郎こたろう虎之助とらのすけ弟分おとうとぶんのように「ねえさん」とんできまとって来た。

拙者せっしゃは、おぬしの姉ではないでござる」

 虎之助は、あまりうれしくない、といった顔をしながら、お昼ご飯を食べている。

 岩法師いわほうしは、2人に関心かんしんがない素振そぶりで食事をしているが、やはり虎之助には興味きょうみがあるようで、チラチラとようすを見ている。



 別室べっしつでは、安倍顧問あべこもん桜田刑事さくらだけいじが話し合っていた。

「あのむすめは、いったい何者だ。さっきの鬼はうで再生速度さいせいそくどからして上級の中でもAクラスだぞ」

「彼女の素性すじょううたがっているのですか?」

「たしかに、安倍一族あべいちぞくは、初代様が現代に鬼が復活ふっかつすることを予言よげんして以来いらい強者つわものたちを転生てんせいさせてきたが、彼女のようなケースは初めてだからな」

性別せいべつが変わってるし、戦闘能力せんとうのうりょくも高すぎますね」

「そうだ、彼女は安倍一族以外あべいちぞくいがいの者に転生されてきた可能性かのうせいもある。正体が判明はんめいするまで、目をはなさないようにしてくれよ」

「わかりました」

「あと、左近さこん復帰ふっきする」

「いつですか?」

「明日だ」



 DSPの宿舎しゅくしゃの前に、男が立っていた。が高く均整きんせいのとれた精悍せいかん顔立かおだちをしており、身体からだ筋肉質きんにくしつでスキの無い雰囲気ふんいきを、かもし出している。

「イテっ!」

 いきなり若い女性が、ぶつかってきた。

ねえさん、それはアカンって言ってますやん!」

 聞きおぼえのある声だ。

「あっ、左近さこんさん。もう怪我けがは良いんですか?」

「小太郎か。このむすめは何だ?」

 虎之助は、口にソーセージパンをくわえて、両手にも1つづつっている。

「姉さん、俺の分はあげますから、岩法師さんの分はかえして下さいよ」

「モグモグ、いやでござる」

 そのままむすめと小太郎は、走りって行った。

「なんだ、あいつら」

 左近が宿舎しゅくしゃに入ると、岩法師がめずらしくふくれている。

「よう!岩法師」

「左近か、ケガはなおったのか?」

「あぁ、もう大丈夫だいじょうぶだ。それより、さっきのむすめは何だ?」

「新しい転生者てんせいしゃだ。もとは忍者にんじゃだったらしく、見かけによらず、かなりの手練てだれだ」

ーー手練てだれ。そういえば、あの見えりの小太郎が、ねえさんとんでいたなーー

前世ぜんせでは、そうとう食べ物に苦労くろうしたようで、小太郎と拙僧せっそうぶんまで朝飯あさめしを取ってげた」

手練てだれのわりには、やることがセコいな」

「だが、油断ゆだんはならん。やつはわれらと何かがちがう」

「そうか?俺には、ただの意地いじがはったむすめにしか見えんが。キツネは何と言っている?」

「キツネにもやつ正体しょうたいは、わからんそうだ。もともと忍者にんじゃというものは、自分の正体しょうたいかしたりはせん、かげ存在そんざいだからな」

 キツネとは、岩法師の式神しきがみ能力のうりょく博識はくしきである。他にも岩法師には情報収集担当じょうほうしゅうしゅうたんとうのヤモリという式神しきがみもいる。



「みんな出動しゅつどうよ」

 昼時ひるどきに、桜田刑事がんできた。

「鬼による殺人事件さつじんじけんよ!」

 声を聞いて、転生者てんせいしゃがみんな集まってくる。

「どこですか現場げんばは?」

 左近が、たずねた。

中央区ちゅうおうくよ。安倍顧問あべこもんが車で待っているから、みんな乗ってちょうだい」

 左近を先頭せんとうに岩法師、小太郎と続いて車にのりこむ。

「虎之助はどうしたの?」

「姉さんは食事中やから、後から行くと言うてはります」

「あのバカむすめ!場所もわからないクセに、後から来れるはずないでしょ!」

 桜田刑事が、めずらしく怒鳴どなっている。

「しかたない。私が、あのバカとミニパトで追いかけるから、先に行ってて下さい」

 桜田刑事は怒りながら車からりて、宿舎しゅくしゃもどっていく。

「しょうがない、先に行っとくか」

 安倍顧問あべこもんは、のこりのメンバーと現場げんばかうことにした。

 一行いっこうは、現場げんばであるオフィスビルの一室いっしつに着くと、室内を調べ始めた。

 ゆかには、大量の血痕けっこんがあるが死体は見当たらない。

「死体が無いということは、鬼にわれたのでしょうか?」

 左近のとい

「そのようだ」

 と、安倍顧問あべこもんが答える。

「ヤモリが鬼は、まだ、この付近ふきんにいると言っています」

 岩法師の式神しきがみであるヤモリは、鬼のにおいいや気配けはいには敏感びんかんである。

 左近は用心ようじんして刀に手をかけた。

 小太郎も、左近の真似まねをして刀に手をかけている。

「まずい、かこまれています。鬼は複数ふくすういる」

 岩法師が大声で言った。

「なんだと。では、この血痕けっこんわなか?」

 安倍顧問あべこもんが、そう言うと、みな緊張きんちょうはしった。



 桜田刑事が宿舎しゅくしゃの食堂に入ると、虎之助が美味おいしそうに、カツカレーを食べているところであった。

「虎之助!なにしてるの、みんなもう現場げんばかったわよ!」

「このカレーという物は、さすが天竺てんじゅく印度いんど』の食べ物でござるな。とても美味おいしいでござるよ」

「そんなの鬼をたおしたら、いくらでも食べれるから早く来るのよ!」

「これを食べてから行くでござる」

「なにバカな事いってんのよ!」

 桜田刑事は、ブチれて虎之助の襟元えりもとつかむと、食堂しょくどうから引きずり出そうとした。

「カレーが、まだ残っているでござる」

「そんなの、どうでも良いのよ。命令違反めいれいいはん磔獄門はりつけごくもんよ」

「ひいっ!それはいやでござる。行くでござる」

 虎之助は桜田刑事におどかされて、しぶしぶミニパトで現場げんばかうことになった。



 せしていた鬼の数は、6人と予想よそうしていたよりも多かった。

 ほとんどの鬼は、細く短めの金棒かなぼうっている。細いといっても鬼の力でおろされると、常人じょうにんであれば一撃いちげき絶命ぜつめいするであろう。

 そんな相手が6人いっせいに、安倍顧問あべこもんたちにおそいかかった。

 左近と小太郎は刀で鬼のうでを切り落とし、一時的いちじてきにでも鬼の戦闘能力せんとうのうりょくを落とすことに専念せんねんしている。

 岩法師は、本来ほんらいであれば薙刀なぎなたで戦うのであるが、せまい室内しつないでは数珠じゅずこぶしけての打撃だげきしかできない。

 安倍顧問あべこもんは、なにやら呪文じゅもんとなえながら御札おふだを取り出し、戦闘せんとうけた天狗てんぐ式神しきがみを呼び出して鬼に向かわせた。

 たちまち、オフィスビル内にある、この部屋は修羅場しゅらばした。



 安倍顧問あべこもんたちが死闘しとうりひろげている内に、桜田刑事と虎之助は、やっとオフィスビルの前に到着とうちゃくした。

「アンタのせいで、おくれたじゃない」

 桜田刑事は、かなり不機嫌ふきげんである。

「あの男たちから、殺気さっきを感じるでござる」

 10人ほどのスーツを着た男たちが、目的もくてきのオフィスビルに入って行くのが見える。

 虎之助は勝手かってに車をりて、男たちをいかけて行ってしまった。

「ちょっと、待ちなさい虎之助!まだ車を止めてないから」

 桜田刑事は、あわてて車を駐車場ちゅうしゃじょうけた。



 鬼たちは、安倍顧問あべこもん式神しきがみである天狗てんぐに手をいており、めあぐねいていた。

「こやつら、思った以上にやりおるわ」

 と、鬼の一人が言うと。

「かまわん、計画どおりだ。われらは時間をかせげばいいのだ」

 他の鬼が、小声でつぶやく。


 戦いながらも、左近は鬼の動きに不安を感じていた。

安倍あべさん、こいつらもしかして、ここでわれらを足止あしどめして、なにかたくらんでいるように見えますが」

「たしかに。ここにてはマズいな、一旦いったん退却たいきゃくしたほうが良さそうだ」

 4人は鬼の攻撃こうげきけながら部屋から出ようとしたが、鬼が出口をふさぐように陣取じんどっており、出ることができない。

ーーバカめ、もうすぐわれらの戦闘部隊せんとうぶたい到着とうちゃくする。貴様きさま転生者てんせいしゃ抹殺まっさつするためにんだ特殊部隊とくしゅぶたいだーー

 鬼の一人は、ほくそんだ。

「こいつら、出口をふさぐようにたたかっとるで」

 小太郎も、あせっている。

「全員、殺さないと、ここから出られないというわけか」

 安倍顧問あべこもんは、大型の拳銃けんじゅうを取り出すと、鬼たちをち始めた。

 再生能力のある鬼に拳銃けんじゅうは、あまり効果こうかは無いが、のう心臓しんぞうに当たれば再生さいせいするまでに、少しは時間がかせげる。

 しかし、意外いがいにも心臓しんぞうに命中したはずの鬼も、平然へいぜんと向かって来る。

「クソっ!こいつら、鬼のくせに防弾服ぼうだんふくを着てやがる」

 鬼も自分たちの弱点は分かっており、最近では防弾ぼうだん仕様しようの服を着ている事がある。

 以前は、鬼に対して一般いっぱん警察官けいさつかん自衛隊じえいたい対処たいしょしていたが、鬼に対して殺傷さっしょう能力のうりょくのある武器ぶきは、破壊力はかいりょくが大きすぎて街中まちなかでは、むやみに使用できない。

 鬼もそのことを承知しょうちしており、普段ふだんは人間の姿すがたをしてらして、都会を中心に活動かつどうしている。

 街中まちなかで、いきなりバズーカをぶっぱなすような無茶むちゃができないことは鬼もわかっているので、拳銃けんじゅう対策たいさく重点的じゅうてんてきおこなうようになった。

「こりゃ、ハメられましたな」

 岩法師もあせっているようだ。

カチャ!

 ドアが開く音がした。

 鬼たちは、予定通よていどお戦闘部隊せんとうぶたい到着とうちゃくしたと思いよろこんだ。

 が、しかし

おくれてもうわけないでござる」

 と、若いむすめが入ってきた。

「虎之助、気をつけろ。これはわなだ!」

 安倍顧問あべこもんが注意する。

わななんか無いでござるよ」

「いや、鬼の増援ぞうえん部隊ぶたいが来るはずだ。ゆだんするな」

増援ぞうえんの鬼たちは、みんな外で死んでるから来ないでござる。さっさとこいつらを片付かたづけて、カレーを食べるでござる」

 そのやりりを聞いていた鬼たちは、顔面蒼白がんめんそうはくになった。

ーーまさか、10人もの戦闘部隊せんとうぶたい全滅ぜんめつしたのか、これは非常ひじょうにまずいーー

退却たいきゃくだ!」

 鬼たちは、いっせいに逃げ出した。

 すかさず、左近と小太郎がってりかかる。

 岩法師は、ゆっくりと後をいかけて行く。

 安倍顧問あべこもん廊下ろうかに出てみると、10体ほどの首を切り落とされた鬼の死体がころがっていた。

「お前がったのか?」

 ふりかえって虎之助に確認する。

拙者せっしやが来た時には、もう死んでたでござる」

「虎之助!」

 怒鳴どなりながら桜田刑事がやって来たが、おびただしい数の鬼の死体を見て

「こんなに鬼がいたのですか。みなさん無事ですか?」

 と、心配し始めた。

「だいじょうぶ、みんな無事だ。それに、ここにころがっている鬼どもは、われわれがったのではない」

「では、まさか虎之助が?」

「本人は知らんと言ってる。いくら虎之助でも短時間たんじかんで10人の鬼の始末しまつ無理むりだろう」

「そうですよね。左近君でも、3人の鬼と戦ってたおしはしたけど、自分も重症じゅうしょうで入院しちゃったし」

「転生者で一番腕いちばんうでつ左近でも、単独たんどくでは、それが限界げんかいだ」

 安倍顧問あべこもんと話している内に、左近たちがもどって来た。

「すいません、一人とりがしてしまいました」

「やつら、にげげ足が早くて」

 左近と小太郎は、もうわけなさそうにしている。

 ゆっくりと、岩法師ももどって来た。

「今回は仕方しかたない。あとは処理班しょりはんまかせてしょもどろう」

 なぞは残ったものの、安倍顧問あべこもんは、全員に引き上げを指示しじした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ