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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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狂四郎が退院するでござる

ねえさん、やりましたよ。あらたな式神しきがみび出せました」

 よろこびながら、小太郎こたろう宿舎しゅくしゃの食堂にやって来た。

 見てみると、手に持っているのはムカデである。

「小太郎の式神しきがみは、害虫がいちゅうばかりでござるね」

 虎之助とらのすけは、岩法師いわほうしと朝の納豆なっとう定食を食べていたところであった。

「姉さんも、タヌキ以外の式神しきがみを出してみたらどうです?」

拙者せっしやは、タヌキだけで充分じゅうぶんでござるよ」

「まあ、姉さんはだれよりも強いから、必要ひつようないですね」

拙者せっしやの強さは、チンパンジーの赤ちゃんもビックリして、二度寝にどねするレベルでござるからなぁ」

 2人はゲラゲラ笑いだした。

ーーなにが、おかしいのか、さっぱりわからんが。ようやく、いつもの虎之助にもどって来たなーー

 笑っている2人を見て、岩法師は安堵あんどするのであった。


「そうだ、狂四郎きょうしろうが、そろそろ退院たいいんして来るはずだ」

 そう言ってしまってから、岩法師はマズいと思った。

 狂四郎が入院にゅういんしたのは、虎之助の師匠ししようである、くりすけされたからで、そのくりすけを、虎之助は殺さなくてはいけない羽目はめになったからである。

 それ以来いらい、虎之助はひどく落ち込んでいた。

 しかし、虎之助は何事なにごとも無かったように

「アホの狂四郎が退院たいいんでござるか?」

 と、聞いて来た。

ーー拙僧せっそうの、気のまわしぎだったかーー

「そうだ。たし桜田刑事さくらだけいじむかえに行っているはずだ」

「あの2人は、みょうに仲が良いでんなぁ」

桜田さくらだ意地悪いじわるだから、アホの狂四郎がお似合にあいでござる」

 虎之助は、桜田刑事が苦手である。

ーーこれで、左近さこんもどって来ればDSP[デビルスペシャルポリス]も安泰あんたいなんだがなぁーー

 虎之助が元気を取りもどしたのは良いのだが、岩法師は、奈良なら修行しゅぎょうに行ったきり、ほとんど連絡れんらくの無い左近のことが気になっていた。



 警察病院けいさつびょういんでは、狂四郎が退院たいいん準備じゅんびをしていた。

 着替きがえをましバックに荷物にもつんでいると、若い看護師かんごしが3人ほど挨拶あいさつにやって来た。

「狂四郎君、お仕事がんばってね。退院たいいんしても連絡れんらくしてよ」

 イケメンの狂四郎は、女性が多い場所では人気者である。

「わかってるって、ちゃんとLINEするよ」

 しかし、が悪いことに、狂四郎が看護師かんごしたちにチヤホヤされている最中さいちゅう桜田刑事さくらだけいじむかえに来てしまった。

「狂四郎君、車でむかえに来たんだけど、思ったより元気そうだから歩いて帰れるわよね!」

 おこったように、桜田刑事が言いはなつ。

「いや、まだ無理ですよ」

 引き止める狂四郎をに、桜田刑事は一人でエレベーターホールにかって歩き始めた。



 一方いっぽう、火星では『山田タコ14世』が反乱軍はんらんぐんかこまれて、絶体絶命ぜったいぜつめいのピンチをむかえていた。

「死んでもらうぞ『山田タコ14世』」

 銅鬼どうきけんを、かまえて向かって来る。

「待て、おろか者ども。ワシを殺すと大変なことになるぞ」

「どうなるんだ?」

「ワシら『山田タコ王家』が封印ふういんし続けている、伝説でんせつの『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』が復活ふっかつすることになる。そうなれば、火星どころか太陽系全体たいようけいぜんたいやみつつまれ、悪魔あくま星系せいけいになってしまうのだぞ」

「たわごとを言うな!死ね『山田タコ14世』!」

『山田タコ14世』にりかかろうとする銅鬼どうきを、タコ太郎が止めた。

「待ってくれ銅鬼どうき。その話は本当かも知れないでチュー」

「なにをバカな。そんなのはコイツのハッタリだ」

「いえ、500年前に『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』を、初代しょだい『山田タコ1世』が封印ふういんしたのは本当でチュー」

「なんだと!」

「だからといって、『山田タコ14世』を殺せば『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』が復活ふっかつするというのは、うのみには出来ないでチューが」

「なるほど。一度いちど封印ふういんしたのは本当だが、コイツが今も封印ふういんし続けているというのは、わからないと言うのだな?」

「そうでチュー」

 銅鬼どうきなやんだ。が、ここまで来てなやんでも仕方しかたないと思いなおして

「コイツを殺せばハッキリするだろう」

 けんをかまえ『山田タコ14世』に向けた。

 反乱軍はんらんぐんは全員、かたずをんで見守っている。



 ビジネスがい高層こうそうビルの最上階さいじょうかいでは『大阪鬼連合団体おおさかおにれんごうだんたい』の定期ていきカンファレンスがおこなわれていた。

 議長ぎちょうは、いつものながら鬼塚おにずかである。

「今日は、みなさんに報告ほうこくがあります」

「ついに、DSPの小娘こむすめりましたか?」

ってません。小娘こむすめはムッチャ元気に明るくごされています」

「では、なんの報告ほうこくですか?」

「DSPの小娘こむすめや『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のような強い敵があらわれたので、対抗たいこう手段しゅだんとして、黒瀬くろせ若林わかばやしに京都へ修行しゅぎょうに行ってもらう事にしました」

「あの鬼神きしんる京都ですか。たしかに効果こうかがあるかも知れないですね」

 中年の男が言った。

質問しつもんがあります」

 若い男が手をげた。

「なんですか?」

最近さいきんは黒瀬さんと若林が、戦闘部隊せんとうぶたいの中心になっているようですが、議長ぎちょう川島かわしまさんも四天王してんのうとして戦えば戦力がアップするのでは?もしかして弱いという事は無いでしょうね」

「君は、ハッキリと物を言うねえ。言っとくが、俺はムチャクチャ強いで」

「本当ですか?」

「ほんまやで。高校生の時なんか喧嘩けんか無敗むはいで、地元最強じもとさいきょうと良く言われたモンや」

「それは、議長ぎちょうが鬼だからでしょう?」

「いや、俺は、ほんまに強いねん。学生時代がくせいじだいは、よく『鬼のように強い鬼塚』とか『鬼塚君は変なにおいがする』とか『鬼塚君のとなりせきいやです』とか『女子更衣室じょしこういしつまどからのぞ変態へんたい』とか言われとったんや」

「ちょっと、鬼が鬼のように強いのは当たり前でしょう。それに、後半は女子生徒じょしせいとからの苦情くじょうになってますよ」

 川島にまれた。

「えっ、そうなん」

「そうですよ」

「まっ、それは良いとして。京都から新しいすけが来たので紹介しょうかいしよう」

「それは良いんですか!」

議長ぎちょう女子更衣室じょしこういしつのぞいてたんですか?」

「また、変なロボットじゃないでしょうね?」

 カンファレンス参加者さんかしゃから、いろんなみが入る。

「お前ら、ゴチャゴチャうるさいなぁ。ロボットじゃなくて、アンドロイドのチャッピー君や」

「よろしく、僕チャッピー」

 普通ふつうの若い男性に見えるチャッピーが、挨拶あいさつする。

「普通の人に見えますが」

「チャッピー君は、最新のテクロノジーで作られたかぎりなく鬼に近いアンドロイドや」

戦闘せんとう力は、どのぐらいあるんですか?」

「なんと、当社比較とうしゃひかくでは以前いぜんの鬼ロボの3倍や。チャッピー君が『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のやつらを、皆殺みなごろしにしてくれるそうや」

「それはたのもしいですな」

大阪鬼連合団体おおさかおにれんごうだんたい』に、たのもしいすけあられた。



「待って下さいよ」

 桜田刑事さくらだけいじ警察病院けいさつびょういん駐車場ちゅうしゃじょうに向かっているところを、狂四郎が追いかけていた。

 桜田刑事が無視むしして歩き続けていると、前方に立っている白人の男がこちらに気付きづいて向かって来る。

あぶない!」

 狂四郎は桜田刑事をばすと、男と対峙たいじした。

「何者だ!」

「俺様は『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のエージュントホルスだ。お前たちには死んでもらう」

「そうは、させん!」

 狂四郎は刀をかまえ、円をえがくように回し出す。

新田家仙道にったけせんどう円月殺えんげつさつ』」

 と、わざの名前を言いながらホルスにりかかった。

ガチッ!

 ホルスは左腕ひだりうでで狂四郎の刀を受ける。

「刀など、われら強化人間きょうかにんげんには通用つうようしない」

 ホルスの右ストレートで顔面がんめんなぐられて、狂四郎はんだ。

「狂四郎君!」

 桜田刑事さくらだけいじが狂四郎にる。

大丈夫だいじょうぶですよ」

 口から血を流しながら狂四郎は立ち上がった。

「ゲフッ!」

 なぜかホルスの方が、口から大量の血をいた。

 良く見ると、むねあないている。

「やるな貴様きさま

「『円月殺えんげつさつ』は刀でるのではなく、相手を素手すでで引きわざだ」

 刀での攻撃こうげきおとりであり、仙道せんどう五指ごしに気をめ、素手すででホルスの心臓しんぞうをえぐり出したのである。

「くっ、甘く見ていた。勝負しょうぶあずけるぞ!」

 ホルスは、素早すばって行った。



「ただいま!」

 狂四郎は桜田刑事と元気良く宿舎しゅくしゃに帰って来た。

 どうやら桜田刑事は、自分をかばってホルスをはらってくれた狂四郎に感激かんげきして車に乗せてくれたようだ。

「おお、狂四郎。良かったな退院たいいんできて」

 岩法師いわほうしやさしく出迎でむかえてくれた。

「お帰りでござる」

 意外にも虎之助も、ちゃんと出迎でむかえている。

「お帰り狂四郎はん。今日は特別とくべつ、桜田刑事と仲が良さそうでんなぁ」

 小太郎も、玄関げんかんまで出て来ている。

「なにバカなこと言ってるの。狂四郎君は『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』の殺し屋を、やっつけてくれたのよ」

「ちゃんと、殺したのでござるか?」

 虎之助は『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』に対しては容赦ようしゃが無い。

「それが、逃げられちゃって」

 頭をきなから、狂四郎は答えた。

「アイツは心臓しんぞうを、えぐり出されても死ななかった、け物よ」

「鬼なみの生命力でんなぁ」

 小太郎が腕組うでぐみしながら感心かんしんしている。

「そうや。俺も修行しゅぎょうして式神しきがみが出せるようになったんですよ」

 小太郎は桜田刑事さくらだけいじ近寄ちかよると、御札おふだを取り出し、なにやらとなえだした。

 すると、桜田刑事の足元にゴキブリの式神しきがみあられた。

「きゃッ!」

ブチ!

 ゴキブリは、あっけなく桜田刑事のくつされてしまった。

「ああっ、俺の式神しきがみが……」

 やぶれた式神しきがみ御札おふだを見て、小太郎は力なくすわんだ。

「ええっ!今のが小太郎君の式神しきがみだったの?ごめんなさい」

 あやまる桜田刑事。

「小太郎、気を落とすな。しかし女性の前では、虫の式神しきがみは出さない方が良いぞ」

 岩法師は、なぐさめてくれるが、小太郎は落ち込んだままである。

「姉さんは、食事中にムカデの式神しきがみを見せても平気やったのに」

「虎之助は特別とくべつだ。がんばって練習すれば、いずれ哺乳類ほにゅうるい式神しきがみも出せるようになる」

「そうでござる。拙者せっしやもタヌキの式神しきがみを出せるようになるまでは、大変だったでござるよ」

「わかりました。俺はセクシーギャルの式神しきがみが出せるようになるまで、がんばりまっせ!」

 こぶしにぎりしめて、小太郎はさけんだ。

ーーこいつ、セクシーギャルが目当めあてだったのかーー

 桜田刑事と狂四郎は、あきれてだまってしまった。

「小太郎はアホでござる」

 一人、虎之助だけが大笑おおわらいしていた。



 そのころ、火星では、銅鬼どうきがついに『山田タコ14世』を、ぷたつにり殺していた。

 反乱軍はんらんぐんの兵士たちは『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』の復活ふっかつおそれ、けんをかまえたままである。

カタカタッ!っと、物音ものおとがした。

 以前から宮殿きゅうでんかざってあった年代物のつぼゆれれている。

「なんだ、このつぼは?」

 銅鬼どうきが近づくと、つぼから大量のけむりき出した。

「ジャンジャジャーン!」

 けむりの中から、小さな女の子が両手を広げて飛び出て来た。

「わたしパクチー。よろしくね」

 一同いちどうは、呆然ぼうぜんつぼから出て来た女の子を見つめている。

「はあ、よろしく。あのぅ『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』は、どちらに?」

 おそおそる、銅鬼どうきがたずねてみた。

「おタマは、まだつぼの中でてるわ」

 どうやら、この女の子は『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』のむすめらしい。

「それでは、お父様とうさまは、まだこの中にいらっしゃるのですな」

「おタマは、一度寝いちどねたら千年は起きないから、あと500年はてるんじゃない」

「ああ、そうですか」

 銅鬼どうきをはじめ反乱軍はんらんぐんは、困惑こんわくしている。

「とりあえずふたをしてと」

 パクチーはつぼふたをして

「おタマは、うるさいと途中とちゅうきて不機嫌ふきげんになるから。とりあえず、ここではさわがないでね」

「そりゃあ、もちろん。静かにしときますとも」

 『太陽系暗黒大魔王たいようけいあんこくだいまおう』が、不機嫌ふきげん状態じょうたいきて来られたら大変である。

 宿敵しゅくてきである『山田タコ14世』はたおしたものの、銅鬼どうきたちには、あらたな問題が発生はっせいしてしまった。

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