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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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聖剣エクスカリバー

 大阪市おおさかしの、あるホテルにラディッシュとナジャはた。

「バビエルのやつおそいな」

 ラディッシュは、しきりに時計を見ている。

「アイツはバカだから、入国に失敗したんじゃないかしら」

 ナジャはインドけいのグラマラスな美女である。

「スマホもつながらないし、そうかも知れないな」

「もうバビエルは、ほっといて、私たちだけで作戦を実行しましょうよ」

「しかたない。はるばるインドから来たんだ、手ぶらでは帰れんからな」

 話が決まって、2人がホテルから出るなり、10人ほどの男たちにかこまれた。

「『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』の者だな」

 そう言ったのは若林わかばやしである。

「いえ、私たちは『浪速なにわハミちん同好会どうこうかい』の者です。急ぎますので」

 ラディッシュは、上司から教えられたマニュアル通りに誤魔化ごまかしてみた。

「そうでしたか。すいません、人違ひとちがいでした」

 若林は軽く頭を下げて謝罪しゃざいしたが

「だまされるな。そんな会があるか!」

 と、黒瀬くろせ怒鳴どなられてしまった。

「きさまら、だましたな!」

 だまされた事に激怒げきどした若林は、素早すばや牛鬼ぎゅうきに変身すると2人におそいかかる。

「やはり、お前ら鬼だったのか」

意外いがい情報じょうほうが早いわね」

 ラディッシュとナジャも戦闘せんとう態勢たいせいに入る。

「コイツらってまえ!」

 黒瀬の号令ごうれいともに、鬼達は2人におそいかかった。



 大阪府警おおさかふけいで『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』の件を調しらべていた安倍顧問あべこもんは、意外いがいなことに気が付いた。

 自分の端末たんまつに入っている、DSP[デビルスペシャルポリス]の情報じょうほうが誰かに見られ形跡けいせきがある。

だれだか知らないが、ファイル履歴りれきも消さないで、いい度胸どきょうだな」

 そう、つぶやくと安倍顧問あべこもんは、一枚の御札おふだを取り出して犬の式神しきがみを呼び出した。

 すると、チワワのような小型犬こがたけん式神しきがみが出て来た。

「なんだ、小さいのしか出ないな」

 安倍顧問あべこもん愚痴ぐちると。

「他の犬は、みんないそがしいんだワン」

 と、チワワの式神しきがみが答えた。

「まあ良い。これをさわったやつにおいをおぼえてくれ」

 チワワに、端末たんまつのキーボードのにおいをがせる。

「この警察内けいさつないに鬼か『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のスパイがるな。用心ようじんして端末たんまつのパスワードを変更へんこうしておかねばならんな」



 鬼対ラディッシュとナジャの戦いは、意外いがいにも、一方的いっぽうてきに鬼が痛めつけられる状態じょうたいとなっていた。

 強化人間きょうかにんげんであるラディッシュとナジャの強さはすさまじく、牛鬼ぎゅうきでさえ防戦ぼうせんするのが精一杯せいいっぱいである。

「なんだ、鬼って思ったより弱いな」

皆殺みなごろしに、しましょう」

 スパッ!

 鬼は次々と首を切られていく。

「これは、ヤバい」

 黒瀬くろせ奮闘ふんとうするが、右腕みぎうでを切られてしまった。

「みんな!撤退てったいだ!」

 黒瀬はさけびながら逃げようとしたが、ラディッシュに左手をつかまれてしまった。

 ほかの鬼は、みんな首を切られてたおれており、かろうじて若林だけは、なんとか逃げ切れたようだ。

ーーこれほど力の差があるとはーー

 さすがに黒瀬も、今回は死を覚悟かくごした。

「お前も死ね」

 ラディッシュの手刀しゅとうが黒瀬の首を切断せつだんしようとした瞬間しゅんかん、ラディッシュの首がポトリと落ちた。

ーーなにがこったんだ?ーー

 くずれるようにたおれたラディッシュの後ろに、虎之助とらのすけが立っている。

 どうやら虎之助の手刀しゅとうで、ラディッシュの首が切り落とされたようだ。

拙者せっしやのLINEを無視むしして、こんな所で遊んでいたのでござるか?」

「すいません、でも、別に遊んでいたわけではないのですが」

ーーこんな状況じょうきょうでLINEって言われてもーー

 相手が虎之助だけに、とりあえず黒瀬はあやまった。

 良く見ると、虎之助はタヌキをれている。

「そのタヌキは何です?」

「お前を見つけるために、タヌキの式神しきがみを呼び出したでござる。おなかいたので、拙者せっしや中華料理ちゅうかりょうりおごるでござる」

「ちょっと、今は、それどころじゃ」

「何ふざけてるでござる!」

 虎之助が不機嫌ふきげんになった。

「ふざけてるのは、お前だよ!」

 ラディッシュを殺されて、いかくるったナジャがかって来る。

邪魔じゃまでござる」

 ナジャの手刀しゅとうと虎之助の手刀しゅとう交差こうさする。

 虎之助のジャンバーが切れてTシャツが見えた。と、同時にナジャの首が落ちた。

「服がやぶれしまったでござる。新しい服も、お前に買ってもらうでござる」

「えっ、服は私に関係ないと思いますが?」

「今すぐに殺されたく無ければ、おごるでござる!さては、拙者せっしやがAカップだからってめてるでござるな!」

「とんでもない、なめてませんよ」

 黒瀬は切られた右腕みぎうでを急いで再生すると、自分の財布さいふ確認かくにんしてみた。あまり現金は入っていない。

ーーなんとかことわれないかなーー

「すいません、今は持ち合わせが、あまり無くて」

 先に歩いていた虎之助は、り返り

「なにか言ったでござるか?早く来るでござる!」

 と、かなり不機嫌ふきげん口調くちょうである。

「いえ、クレジットカードが有ったので、だいじょうぶです」

 しぶしぶ、黒瀬は虎之助に付いて行くのであった。



 DSPの宿舎しゅくしゃでは、岩法師いわほうし小太郎こたろうが2人で昼食を食べていた。

「虎之助は、どうした?」

 岩法師は、落ちんでいる虎之助のことを気にしている。

「なんや、出かけはりましたけど」

「かなり落ち込んでたんで、式神しきがみの呼び出し方を教えたんだが」

「どんな式神しきがみでっか?」

「虎之助はキツネの式神しきがみと仲が良かったんで、ているタヌキにした」

「タヌキでっか。どんな能力なんです?」

嗅覚きゅうかくするどいので、尾行びこう人探ひとさがしなどだ」

「俺にも、式神しきがみの呼び出し方を教えて下さいよ」

「教えるのは良いが、精神力せいしんりょくがかなりいるぞ。どんな式神しきがみが良いんだ?」

「そうでんな、できればセクシーギャルの式神しきがみが良いですね」

「かなりむずかしいぞ」

「えっ!セクシーギャルを呼び出せるんでっか?」

 小太郎はり出した。

「出せるよ」

岩法師先生いわほうしせんせい!おねがいします。出し方を教えて下さい」

 小太郎は、武士ぶしとしてのプライドをて、岩法師に土下座どげざをしてたのむのであった。



 安部顧問あべこもん大阪府警おおさかふけいを出ようとした時、チワワが反応はんのうした。

「アイツからにおうワン」

「なにっ!」

 チワワの言う方向を見てみると、見知みしらぬ初老しょろうの男が署内しょないを歩いている。

「誰だ、あの男は」

 とりあえず、近くにいた顔みしりの警官けいかんに聞いてみる。

初老しょろうの男性ですか、どこにるんです?」

「あそこにるだろ、あの掲示板けいじばんの前だよ」

「誰もませんけど」

ーーなんだと、この警官けいかんには見えていない。もしかして、陰陽師おんみょうじの俺と式神しきがみのチワワにしか見えていないのか?ーー

 安部顧問あべこもんは、ゆっくりと初老しょろうの男に近付ちかづいて声をける

「アンタ何者なにものだ?」

 男は安部あべの顔を見ると

「俺が見えるとは、たいしたもんだな」

 と、答えながらスッと消えた。



「2人で、何してるでござるか?」

 虎之助が宿舎しゅくしゃもどると、岩法師が小太郎に何か指導しどうしていた。

「あっ、姉さん、お帰りなさい。岩法師先生から式神しきがみの出し方をおそわっているんですよ」

「こいつがセクシーギャルの、ウッ……」

 小太郎は、あわてて岩法師の口をおさえた。

「セクシーギャルが、どうしたのでござるか?」

「いえ、何でもありまへん」

 小太郎の手をはらいながら、岩法師が

「わかった、言わないから。とりあえず式神しきがみを出してみろ」

 と、指示しじする。

「まかしといて下さい」

 小太郎が御札おふだを持ちねんめると、小さい生き物があらわれた。

「やりましたよ、岩法師先生」

 小太郎はよろこんでいるが、よく見るとゴキブリであった。

「ゴキブリの式神しきがみなんて、拙僧せっそうは初めて見た」

 岩法師が、あきれている。

「小太郎はアホでござる」

 虎之助が笑っている。

ーーひさしぶりに虎之助が笑った。小太郎もタマには役に立つではないか。くりすけけんから、ずっと落ち込んでたからなーー

 岩法師も笑いだした。

「笑わんといて下さいよ」

「いや、すまん。でも良いじゃないか小太郎。ゴキブリでも式神しきがみ式神しきがみだ、諜報ちょうほう活動かつどうとかに役立やくだつかも知れん」

「そうですよね」

 小太郎も笑った。



 日本テクロノジーコーポレーションの社長室しゃちょうしつで、鬼塚おにずかはアイコスをって、くつろいでいた。

失礼しつれいします」

 と、言いながら、川島かわしま黒瀬くろせが入って来る。

「どうやった?」

「『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のエージェントは、2人とも死にました」

 と、黒瀬が報告ほうこくする。

「そうか、ご苦労くろう

「ただ、社長。2人をったのは我々では、ないんです。とにかく、その2人は強くて、我々が全滅ぜんめつしかけた時に通りがかったDSPの小娘こむすめ瞬殺しゅんさつしたんです」

「なるほど」

「私と若林以外は『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』の2人に殺されました」

「大変やな」

「その凄腕すごうでのエージェント2人を、小娘こむすめ瞬殺しゅんさつしたんです」

「そうなんや」

「社長、今日は何かテンションが低いですね」

 川島は心配になった。

「ちよっと最近、うつ気味ぎみなんや」

「ストレスですか?」

「それが、むすめがユーチューバーになりたいって、言い出してな」

「へえ、娘さんがエクスカリバーに」

「いや、ユーチューバーや!エクスカリバーって何やねん!」

「アーサー王の伝説でんせつけんですけど」

「アホか!娘が、そんなんになりたいって言い出したら、もうヤバいやろ。俺が言うてるのはユーチューバーや!動画どうがを作ってネットに流すやつや」

「ああ、最近さいきん流行はやりりの、スマホやパソコンで見れる面白おもしろ動画どうが作製さくせいする人ですね」

「そうや、それでなやんでんねん」

「そういえば、ウチの息子もプロゲーマーになりたいって言ってました」

「最近は、ゲーマーのプロもあるんや。俺もテトリスやったら上手うまいねんけどな」

「私も、将棋しょうぎゲームやったら自信あるんですけどね」

将棋しょうぎは、昔から普通ふつうにプロがあるやろ」

「そういえば、そうですね」

「ちょっと、お2人とも、話がそれて来てますよ!もっと重大な話があるでしょう」

 鬼塚と川島の会話を聞いていた黒瀬が、がまん出来ずに言った。

「なに言うてるねん、俺の娘がエクスカリバーになる事より重大なことなんか無いわ!」

「社長、エクスカリバーじゃなくてユーチューバーでしょう」

 川島がむ。

「ああ、そうか。ユーチューバーやったら別に、なっても良いわ」

「そうですよ、ユーチューバーやプロゲーマーでしたら、エクスカリバーになられる事を考えれば立派りっぱ職業しょくぎょうですから」

「そうやな。エクスカリバーよりユーチューバーやな。じゃ、今日はこれで解散かいさん

「おつかさまでした」

 と言って、鬼塚と川島は帰って行った。

 一人残された黒瀬は、指導者しどうしゃである鬼塚と川島のアホさを加減かげんを見て

「俺も田舎いなか岡山おかやまに帰ろうかなぁ」

 と、つぶやくのであった。



 火星では、銅鬼どうきひきいる反乱軍はんらんぐん連戦連勝れんせんれんしょうしており、『山田タコ14世』をめていた。

陛下へいか、お逃げ下さい。反乱軍はんらんぐんがすぐそこまでせまっています」

 王宮おうきゅうの兵士が、あわてて走って来た。

 しかし『山田タコ14世』は、意外いがいいており

「そんなん、どうでも良いやないか〜い」

 と、言いながらワインを飲んでいる。

 まわりの貴族きぞくや兵士たちは、あきれて逃げてしまった。

 反乱軍はんらんぐん王宮おうきゅうの中に、なだれみ『山田タコ14世』は一人、かこまれてしまうが、なぜだか平然へいぜんとワインを飲んでいる。

覚悟かくごしろ『山田タコ14世』!」

 反乱軍はんらんぐんのリーダーである銅鬼どうきは、けんを高くかかげてさけんだ。

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