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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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師弟対決でござる

 伊賀いがくりすけ虎之助とらのすけ対峙たいじしており、まさに、超一流の忍者にんじゃどうしの死合しあいが始まろうとしていた。


「いかに、お前が5万年に一人の逸材いつざいであろうとも、拙者せっしゃには、まだ伝授でんじゅしていない秘術ひじゅつがある。拙者せっしやが負けることはけっして無い!」

 くりすけは刀をさやおさめると、なにやら呪文じゅもんとなえだした。

 すると、くりすけの身体がいくつも分裂ぶんれつしていき、7人のくりすけあらわれた。

「これぞ、イガグリ忍法にんぽう北斗死殺ほくとしさつじゅつ』だ、このじゅつからのがれた者は、15人しかおらん!」


ーー15人もるのかよ!ーー

 かくれて見ている霊鬼れいきは、おもわず声に出しそうになった。


「さすがは、お師匠ししょう様、やるでござるな。まるで、北斗神拳ほくとしんけんみたいでござる」

 虎之助は感心かんしんしている。


「では、拙者せっしやじゅつを出すでござる。このじゅつからのがれられなかった者は、一人もないでござる」

 虎之助も、なにやらとなえだした。

 すると、虎之助が着ている服が変化してピンクのセーラ服となり、刀は丸い玉がいたぼうに変わって、魔法まほうセーラ戦士せんしポピリンに変身へんしんした。

 ポピリンは大きな声で

「じっちゃんの名にかけて、お仕置しおききでござる!」

 と、さけんだ。


ーー全員にげられてるやん!それに、じっちゃんってだれだ?ーー

 こいつら、アホすぎる。霊鬼れいき必死ひっしに口を、おさえて出そうになる声をこらえた。


「さすがは、高弟こうていであるな、すさまじいじゅつだ。だが、お遊びはここまでだ。そろそろ死んでもらうぞ」

 くりすけは、一体にもどると、ゆっくりと円をくように近付ちかづいて来る。


拙者せっしやは、たたかいたくないでござる」

 虎之助は、まだ、魔法まほうセーラ戦士せんしポピリンの姿すがたのままである。


「イガグリ忍法にんぽう金剛鉄こんごうてつ』のじゅつ。このじゅつを使用している間、拙者せっしや身体からだはがねよりかたくなり、いかなる攻撃こうげき通用つうようしない、生涯無敗しょうがいむはいじゅつだ」

 走りながらもくりすけこぶしは、虎之助の心臓しんぞうねらって来る。


ーーお師匠ししょう様は本気でござる。このままではられるーー

 そう感じながらも虎之助は、修業しゅぎょう時代のことを思い出していた。

「よいか虎之助。万物ばっぶつすべて大地から生まれて来る。このはがねよろいですら、元は鉄をふくんだ石から作るのだ。そして、いずれは大地にもどり土にかえるのだ」

 幼少ようしょう時代の虎之助は、くりすけの話を真剣しんけんに聞いている。

「よって、この世に破壊はかいできぬ物は無く、すべての物は土にかえすことが出来るのである。修行しゅぎょうめば手刀しゅとうで、このよろいでさえつらぬくことが出来できる」

「では、お師匠ししょう様は、このよろいつらぬけるのでござるか?」

 くりすけは、近くの岩にふかぶかと手刀しゅとうして

「今の拙者せっしやうででは、この岩までだが、技術ぎじゅつきわめれば、どんな物でも手刀しゅとうつらぬけるようになる。このはがねよろいも、いずれは土にもどる物だ、つらぬけぬわけがない」

 と、説明せつめいする。

すごいでござるね」

 虎之助は、尊敬そんけい眼差まなざしで、くりすけを見ている。


 気が付くと、自分の手刀しゅとうくりすけむねつらぬいていた。

「お師匠ししょう様……」虎之助は泣いていた。


 死合しあいが終わったのを見届みどどけると、霊鬼れいき実体じったいあらわして近付ちかづいて来た。

 上着うわぎのポケットから、何かを取り出すと

「これを、使いな」

 と、虎之助にハンカチをわたす。

「かたじけないでござる」

 ハンカチを受け取った後も、虎之助は泣き続けた。


ーーこれじゃ、とても殺す気にならないわーー

 泣きじゃくる虎之助をあとに、霊鬼れいきって行く。



 桜田刑事達さくらだけいじ到着とうちゃくした時には、狂四郎きょうしろう救急車きゅうきゅうしゃ搬送はんそうされる所であった。

 どうやら、虎之助がんだようだ。

「だいじょうぶ?狂四郎君!」

 桜田刑事がるが、返事は無く、そのまま救急隊員きゅうきゅうたいいん搬送はんそうされて行った。

 あとは、たおれているくりすけそばで、泣きじゃくる虎之助だけである。

「姉さん!何があったんです?」

 小太郎こたろうが聞くが、虎之助は泣き続けている。

くりすけは、息絶いきたえている」

 岩法師いわほうしが、くりすけ近寄ちかよ確認かくにんしていた。

 桜田刑事と岩法師は、安倍顧問あべこもんからの事前情報じぜんじょうほうで、なにがこったのかさっすることが出来できたが、小太郎には、さっぱりわからない。

「小太郎、そっとしておいてやれ」

「はい」

 そう言われ、小太郎も、なにかを感じとり虎之助から離れた。



 ビジネスがい高層こうそうビル最上階さいじょうかいでは『大阪鬼連合団体おおさかおにれんごうだんたい』の臨時りんじカンファレンスがおこなわれていた。

 議長ぎちょう鬼塚おにずかである。

「今日は、みなさんに、大切なお知らせがあります」

「やっと、あの小娘こむすめったんですか?」

 中年の男が聞いた。

「ぜんぜんちがいます。霊鬼れいきねえさんから『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』という組織そしきが、鬼と転生者てんせいしゃ抹殺まっさつに乗り出した、との情報じょうほうがありました」

「何ですか、その組織そしきは?」

「それが、良くわからんねん」

「鬼をふくめた、異能者いのうしゃ排除はいじょが目的の国際的組織こくさいてきそしきのようですね」

 川島かわしま説明せつめいし始める。

「そんな組織そしきが、あったのですね」

 カンファレンスの参加者さんかしゃたちは、おどろいている。

「なんでも、中世ヨーロッパの魔女狩りの時代からあるそうです」

 川島は、くわしく知っているようである。

「えらい昔から、あんねんなぁ」

「それが日本にまで進出して来るとなると、対応たいおうを考えねばなりません」

「そうやなぁ」

悪魔払あくまばらいや吸血鬼きゅうけつき退治たいじもしていたそうです。鬼は英語にやくすとデビルですから、とうぜんねらわれます」

「俺らも悪魔払あくまばらいされるんか、イヤやなぁ。そういえば、霊鬼れいきねえさんがDSPにも『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のメンバーがもぐんでいて、れい小娘こむすめ始末しまつされたそうや」

「それで、けっきょく霊鬼れいきさんは小娘をたおせたのですか?」

 若い男性が、たずねた。

「なんか、一度負けたらしいねんけど、霊鬼れいきねえさんは、そのまま田舎いなかに帰ってもうた」

「あの、質問しつもんがあるんですけど」

 さきほどの、若い男性が手をげた。

「なんや」

「小娘に負けた鬼は、よく田舎いなかに帰りますけど、田舎って、いったい何処どこなんです?」

「さあ、岡山県おかやまけんとかちゃう」

昔話むかしばなしで、鬼ヶ島とか、ありますもんね」

「じゃ、鬼は全員、岡山県出身おかやまけんしゅっしんなんですか?」

「そうちゃうの」

「鬼の田舎いなかは、秋田県あきたけんじゃないですか?」

「それは、『なまはげ』や」

大阪鬼連合団体おおさかおにれんごうだんたい』の臨時りんじカンファレンスは、特にるものも無く続くのであった。



 安倍顧問あべこもんは大阪に到着とうちゃくすると、すぐに警察病院けいさつびょういんへとかった。

 なんとか一命いちめいをとり止めた狂四郎の病室に入ると、桜田刑事さくらだけいじが待っていた。

「狂四郎の容態ようだいは、どうだ?」

された後、すぐに仙道せんどうで出血をおさえたみたいで命に別状べつじょうは無いそうですが、しばらく入院にゅういんすることになりました」

「話せるか?」

「今はていますが、会話は大丈夫だいじょうぶです」

「なにがこったのか、くわしく聞きたいのだが」

「とりあえず、私が知ってることを話しますね」

 桜田刑事は、岩法師と狂四郎・虎之助から、それぞれ事情じじょうを聞いており大体だいたいのことは把握はあくできた。

「虎之助は、今どうしてる?」

相当そうとう落ち込んでるみたいで、自分の部屋にもったままのようです」

「そうか。しかし、その『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』という組織そしきが気になるな。少し調べてみる」

 安倍顧問あべこもんは病室を出ようとした。

「どちらに行くのですか?」

「まず、大阪府警おおさかふけいに行って、手掛てがかりが無ければ警視庁けいしちょうの弟に聞いてみるつもりだ」

 そう言うと、安倍顧問あべこもんは行ってしまった。



桜田刑事さくらだけいじ……」

 狂四郎が目をました。

「どうしたの?狂四郎君」

「すいません、僕が油断ゆだんしたせいで、大袈裟おおげさなことになってしまって」

「ごめんなさい。くりすけのことは、安倍顧問あべこもんから電話で気をけるように言われていたのに、アナタにつたえていなくて」

「いえ、じつは僕は始めからくりすけあやしんでいたのです。僕ら仙道士せんどうしは、直感ちょっかんうそ見抜みぬけることがあるので。ただ、京都DSPの人をうたがっている事は、口外こうがいするとマズいのでだまっていたのですが」

「そうだったの。仙道士せんどうしってすごいわね」

「僕は、まだ未熟またみじゅくです。それより、さっき誰か来てませんでしたか?」

安倍顧問あべこもんが来てたけど、アナタをこすのは遠慮えんりょしたみたいね」

「たしか、あの人は警察けいさつ顧問こもんですよね?」

「そうよ」

「僕をした後、くりすけが『警察内けいさつないにも『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のスパイがるって言ってました」

「なんですって!」



 関西国際空港かんさいこくさいくうこうに向かう旅客機りょかっきに、その男は乗っていた。

 ジャンボジェット機の座席ざせきせまいようで、いごこち悪そうにすわっている、筋肉質きんにくしつの大男である。

「もうすぐ関空かんくうか」

 タイメックス社製の腕時計うでどけいを見ながら、つぶやく。

 彼は、できるだけ母国製ぼこくせいの物を使用したいという、愛国心あいこくしんの強い男である。

 腕時計うでどけいもアメリカ製の物を使うようにしているのであるが、現在げんざいのアメリカは、腕時計うでどけいを作っているメーカーが少なく、タイメックス社かスマートウォッチかの二択にたく状態じょうたいであり、仕事柄しごとがら衝撃しょうげきに強いタイメックス社製しゃせいの物を愛用している。

 彼は『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』のエージェントであった。

 しかも、異能力者いのうりょくしゃ対抗たいこうするために戦闘用せんとうよう骨格こっかく筋肉きんにく強化手術きょうかしゅじゅつほどこした強化人間きょうかにんげんである。

 彼は身体の、ほとんどが強化きょうかされており、もはやサイボーグと言ってもさしつかえない。

 名を、バビエル・ロドリゲスといい、ロサンゼルスから日本の異能者いのうしゃ抹殺まっさつするために、やって来たのである。

ーー日本のデビルと異能者いのうしゃを、みな殺しにしてやる。殺し終わったら、アニメグッズをいっぱい買って帰ろうーー

 バビエルはみをうかべ、魔法まほうセーラ戦士せんしポピリンのフィギュアを買っている自分の姿を想像そうぞうした。

 愛国者あいこくしゃのバビエルではあるが、日本のアニメとコミックも愛するオタクでもあった。

 空港に着いてゲートを通ろうとした時、金属探知機きんぞくたんちきのブザーが、けたたましくった。

ーーしまった!俺の身体からだ半分はんぶん機械きかいだったーー

「お客様きゃくさまちょっとこちらへ」

 警備員けいびいんに、別室べっしつに連れて行かれそうになった。

「ワタシ、日本語わかりませ〜ん」

 と、ごまかしたが、当然とうぜんのことながら無駄むだであった。


 バビエルは、アメリカに強制送還きょうせいそうかんされた。

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