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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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裏切り者でござる

 電話を切ると桜田刑事さくらだけいじは、岩法師いわほうし安倍顧問あべこもんからの指示しじつたえて、式神しきがみのキツネにくりすけ見張みはるよう手配てはいした。

 そんな時、大阪府警おおさかふけいの近くに鬼が出現しゅつげんしたという情報じょうほうが入った。

「みんな出動しゅつどうよ!」

 どんな時でも、鬼が出たとなるとDSPは出動しゅつどうしなければならない。

 不安をかかえながら、桜田刑事は現場げんばに向かった。



 居残いのこりメンバーを全員引ぜんいんひき連れて、岩法師いわほうしたちが現場に到着とうちゃくしてみると、10人ほどの鬼がたむろしている。

「これは、わなだな」

 と、くりすけが言った。

「どんなわなだ?」

 岩法師は事情じじょうを聞かされているので、くりすけのことを、あまり信用しんようしていない。

「全員、殺せばわかるだろう」

 そう言うと、くりすけは鬼の集団にんで行く。

「お師匠ししょう様、拙者せっしゃも行くでござる!」

 虎之助がくりすけに続くと、小太郎こたろう狂四郎きょうしろうも続いた。

 くりすけの強さはすさまじく、一瞬いっしゅんで2体の鬼の首を落とし、3体目に向った時には、鬼は戦意せんい喪失そうしつして、いっせいに逃げ出した。

「待て!」

 すぐさまくりすけう。それを虎之助と狂四郎がいかけて行く。

 小太郎もうが、鬼たちが速すぎて途中とちゅう脱落だつらくしてしまった。


 鬼をっていた虎之助と狂四郎の前に突然とつぜん、美女があらわれた。霊鬼れいきである。

「おじょうちゃんは、私が相手してあげるわ」

「おぬしも鬼でござるか?」

 虎之助は刀を、かまえる。

「俺も相手してくれよ」

 狂四郎は、霊鬼れいきの美しさに目をうばわれてしまっている。

「アンタには用が無いから、あっち行って」

「ちぇ」

 軽くあしらわてしまい、狂四郎は美女をあきらめて、くりすけうことにした。

「初めから、拙者せっしゃねらっていたでござるね」

「そうよ、あの鬼たちは、おとりよ」

 と、霊鬼れいきが言った瞬間しゅんかん、虎之助に首を切られた。

 が、切った感触かんしょくはなく、霊鬼れいきの首はつながったままである。

「おぬし霊体れいたいでござったか」

 虎之助に緊張きんちょうはしった。

霊体れいたいの私を、たおせる者などないわ」

 霊鬼れいき表情ひょうじょうには、余裕よゆうがある。

面倒めんどうでござるね」

 虎之助は、霊鬼れいき腹部ふくぶ手刀しゅとうを向けて

唐沢家忍術からさわけにんじゅつ火遁かとんじゅつ」』

 と、となえた。

「火なんかで、アタシをたおすことは出来できないわよ」

「これは、ただの火では無いでござる。悪霊あくりょうをも焼きくす、加具土命カグツチほのお』でござる」

「なんですって!お前のような小娘こむすめが、なんで、そんな高度こうどじゅつを使えるのよ!」

 そう言いながも、霊鬼れいきの身体はえ始めている。

「熱い!」

 必死ひっしに、ほのおを消そうと手ではたくが、炎は消えず、霊鬼れいき苦痛くつう表情ひょうじょううかべた。

「助けて」

 小さな声で、霊鬼れいきは助けをもとめる。

パン!

 虎之助が、両手を強くたたくと、今まで霊鬼れいきいていたほのおが、とたんに消えた。

「どうして、助けてくれるの?」

 霊鬼れいき不思議ふしぎそうな顔をしている。

「おぬしが『助けて』って言ったのでござる。では、拙者せっしやは急ぐのでこれで」

 そう言うと、虎之助とらのすけは走りって行った。



 桜田刑事が到着とうちゃくすると、岩法師と小太郎が現場げんばのこっていた。

「他のメンバーは、どうしたの?」

 岩法師は、今までの経緯けいいを話し

「今しがたまで、キツネがくりすけ監視かんししていたのだが、キツネの気配けはいが消えた。おそらく殺されてしまった」

 と、力なく答える。

「なんですって!」

ーーなにかマズいことが起きそうだわ。とにかく、くりすけわなければーー



 狂四郎が追いついた時には、鬼は全員、くりすけに首を切らて死んでおり、くりすけはまだ刀を持ったまま立っていた。

 どうやら、最後の鬼をたおしたところのようだ。

「さすが、京都からのすけだ。やりますね」

 狂四郎は感心かんしんしながら、くりすけに近づいて行く。



 安倍顧問あべこもんは、急いで電車にみ大阪に向かっていた。

 要注意人物ようちょういじんぶつくりすけと、正体不明の虎之助が師弟してい関係かんけいにあったとは、いや予感よかんしかしない。

 普段ふだんは、速いと思っていた大阪行きの電車が、やけにおそく感じる。

ーー気の、まわしぎであれば、良いのだがーー



 やっと、くりすけの所に、虎之助が到着とうちゃくした。

「お師匠ししょう様、大丈夫だいじょうぶでござるか」

 くりすけ足元あしもとに、狂四郎が腹部ふくぶから血を流してたおれている。

「狂四郎!」

 虎之助は、急いで狂四郎にって声をけるが、意識いしきが無いようである。

「そいつは、鬼にられた」

 くりすけが、当然とうぜんのように言った。

 狂四郎の容態ようだいを見ながらも、虎之助はくりすけの足元に、切られて落ちている御札おふだを見つけた。

ーーたしか、これは式神しきがみのキツネの御札おふだでござる。誰かにられようでござるーー

「これは、鬼の仕業しわざでは、ないでござるな」

 虎之助が低い声で言った。

「なにを言うんだ虎之助。鬼以外に、誰が狂四郎を殺すというのか?」

「お師匠ししょう様!なぜ、狂四郎をしたのでござる」

「バカなことを言うな!拙者せっしや味方みかたである狂四郎をわけがなかろう」

「この腹部ふくぶきずは、鬼の物では無いでござる。お師匠ししょう様の刀のきずでござる」

「くっ、あとで鬼の金棒かなぼうでも、しておこうと思っていたが。そうだ、拙者せっしやがこいつをした。さすがに、お前の目は、ごまかせんな」

 くりすけは開きなおり、虎之助に対して刀を向けた。

「どうして、狂四郎をしたでござる?」

 虎之助も刀に手をかける。


ーーなんだか、変な展開てんかいになって来たわねーー

 虎之助の後方に、霊体化れいたいかした霊鬼れいきがいた。

 こっそり後をけて来ていたのだ。

 焼かれた部位ぶいは、すでに治癒ちゆしており、姿を完全に消してすきをみて虎之助を殺そうと思っていたのだが、なにやらDSPで仲間割なかまわれが始まっているではないか。

ーー敵同士てきどうし仲間割なかまわれは良いけど、あのイガグリ男は、どうして仲間をしたのだろう?ーー

 くりすけの行動には、てきである霊鬼れいき興味きょうみを持った。


「虎之助よ、これから鬼も転生者てんせいしゃも、全員死ぬことになる」

 くりすけは、虎之助に向かって言った。

「なにを、言っているのでござるか?」

「『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』が動き出したのだ、彼らは鬼や異能力者いのうりょくしゃ存在そんざいを、排除はいじょする巨大国際組織きょだいこくさいそしきだ」

「そのダサすぎる名前の組織そしきと、お師匠ししょう様と何の関係があるのでござるか?」

排除はいじょされたくなければ『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』に忠誠ちゅうせいちかうしかない。拙者せっしやは転生してすぐに忠誠ちゅうせいちかった。彼らの力は巨大だ、鬼や警察けいさつも彼らの前では無力だ」

「お師匠ししょう様は、DSPを裏切うらぎったのでござるか」

「お前も仲間になれ『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』に入らねば、死んでもらわなければならない」

「名前がダサいから、いやでござる!」

「また、いくさをするつもりか。転生前てんせいまえ大阪方おおさかがたいて、徳川とくがわ敗北はいぼくし殺されたのを忘れたか?」

「忘れてはござらんが、そんな組織そしきには入らないでござる!」

「では、死んでもらう」

 くりすけは刀をかまえ、虎之助とらのすけに向かって来る。

「いかに、お師匠ししょう様といえど、拙者せっしやたおせぬ。拙者せっしやは5万年に一人の逸材いつざいでござる」


ーーなんなの?『国際電器保安協会こくさいでんきほうあんきょうかい』っていう組織そしきが気になるわーー

 霊気れいきは、まだ様子ようすを見ている。


拙者せっしゃは、お前の師匠ししょうだ、強さも弱点も知りくしている。組織そしきに入らないのであれば死んでもらう」

 くりすけは、殺気をめて刀をかまえた。

「お師匠ししょう様がやる気なら、仕方しかたないでござる」

 虎之助も刀に殺気をめる。

 師弟していすさまじい死合しあいが、始まろうとしていた。



 一方いっぽう、火星では『山田タコ14世』が山田タコ王朝おうちょう建国記念日けんこくきねんびいわっていた。

 貴族きぞくたちが宮殿きゅうでんに集まり、豪華ごうかな食事や酒を楽しんでいる。

『山田タコ14世』もご機嫌きげんでシャンパン飲みながら、イカゲソを食べていた。

 そこへ、一人の将校しょうこうかけんで来て

「大変です!『タコ山五十六やまいそろく将軍しょうぐん反乱軍はんらんぐんやぶれ戦死しました!」

 と、さけぶように報告ほうこくした。

 ざわめく貴族きぞくたちに向かって、シャンパンを持ったまま、山田タコ14世は

「そんなこと、どうでも良いや、ないか〜い」

 と、笑顔えがおで答えた。

「それもそうや、ないか〜い」

 貴族きぞくたちは、おたがいにシャンパンで乾杯かんぱいしながら、何ごとも無かったように飲み食いを続けている。

ーーダメだ。この王朝おうちょうほろびるーー

 将校しょうこうは、あきれはてて、部下を反乱軍はんらんぐんくわわる事になるのであった。

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