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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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お師匠様の登場でござる

「はぁ」

 スーパーのレジちのパート中に霊鬼れいきは、ためいきをついた。

 また、失恋しつれんしてしまったのだ。

 パチンコで負けてばかりいる彼氏が、暴力ぼうりょくるって来たのでかるはたいたら、まどガラスをって、ぶっ飛んで行ってしまった。

 それ以来いらい、3日も連絡れんらくがなく、コチラから電話しても出てくれない。おそらく逃げられたのだろう。



「この、グレープグミは美味おいしそうでござる」

「いや、姉さん、この『男汁おとこじるグミ』の方が良いんちゃいますか」

 高校生ぐらいの若い男女だんじょが、楽しそうにお菓子かしえらんでいる。

小太郎こたろうこそ、この『豚肉味ぶたにくあじアイス』を買うでござる」

「そんなキモい物、いやですわ」

 2人でゲラゲラ笑いながら、お菓子かしえらんで楽しそうだ。

ーーなんか、この2人ムカつくわーー

 失恋したばかりの霊鬼れいきにとっては、腹立はらだたしい光景こうけいである。

「オバはん、コレおくれ」

 男の方が、レジにお菓子かしを持って来た。

ーーオバはん、って。こいつ後で殺すーー

 霊鬼れいきはレジを打ちながら、女の方は、どこかで見たことがあるなぁ、と思った。

ーーだれだったかなぁ…………そうや思い出した、鬼塚おにずかが言ってたDSPの小娘こむすめや!ーー



「みんな、紹介しょうかいするわ。京都DSP[デビルスペシャルポリス]から来た、伊賀いがいがくりすけさんよ」

 DSPでは、不在ふざいである安倍顧問あべこもん左近さこん代理だいりとして、京都DSPから転生者てんせいしゃ応援おうえんに来てくれたのである。

 紹介しょうかいされた転生者は、イガグリ頭のえない中年男であった。

拙者せっしや伊賀栗いがくりすけだ。よろしくおねがいしもうす」

「俺は小太郎、最強の剣士です。こちらが虎之助とらのすけねえさん、って姉さんませんやん」

「虎之助は、どこに居るのよ?」

 桜田刑事さくらだけいじと小太郎が、食堂までさがしに行くと、虎之助がテーブルにすわり、スマホの動画どうがを見てゲラゲラ笑っている。

「姉さん、何の動画を見てはるんでっか?」

桜田さくらだ狂四郎きょうしろうが、カフェでタピオカミルクティーを飲んでいる動画でござる」

「どこから、そんな動画どうがが」

 顔をにしながら、桜田刑事は虎之助からスマホを取り上げた。

「こんな動画どうがは、消去しょうきょします」

「ひどいでござる。せっかく式神しきがみのキツネにたのんでって来てもらったのに」

「ちょっと岩法師いわほうしさん!何でキツネを虎之助にすのよ!」

「いや、拙僧せっそうしたおぼえはないぞ。なぜか最近さいきん、キツネと虎之助が仲良くしているとは思っていたのだが」

「なるほどね、桜田刑事と狂四郎は出来できてはったんか。知らんかったわ」

バキッ!

 感心かんしんしている小太郎のアゴに、桜田刑事の左フックが的確てきかくにとらえた。

出来できて無いわよ!」

「クフッ」

 小太郎は、その場にくずれ落ちる。

「小太郎!大丈夫だいじょうぶでござるか?」

「だっ、大丈夫だいじょうぶでは、ありまへん。のうがやられました」


「あのぉ、拙者せっしゃ紹介しょうかい途中とちゅうなんだけど」

 伊賀いがが、遠慮えんりょしながら言った。

「すいません、見苦みぐるしい所を見せてしまって」

 桜田刑事さくらだけいじが、赤くなったままあやまっている。

あらためて紹介しょうかいするわ。伊賀栗いがくりすけさんよ」

「お師匠様ししょうさま!」

 いきなり、虎之助がくりすけきついた。

 まわりは全員、唖然あぜんとしている。

「いきなり、お師匠ししようと言われても。だれだね、このは?」

唐沢虎之助からさわとらのすけでござるよ!」

「唐沢虎之助?はて、拙者せっしやが知ってる虎之助は、たしか男であったが」

「転生したら、なぜか妹の千代ちよ姿すがたになってたでござる」

「なんと!そういえば、おぬしには、妹が居ると言っておったな」

「そうでござる。見た目は千代ちよだが、中身なかみは虎之助でござる」

「そうだったのか。虎之助、たくましくなったな。というより、小さくて貧弱ひんじゃくになったな」

くりすけさんって、虎之助の師匠ししょうだったの?」

 桜田刑事や他のメンバーはおどろいている。

「どうやら、そのようですな」

 くりすけは、とまどいながら答えた。

「姉さんの、お師匠ししようか。きっとすごい人なんやろな」

「お師匠ししよう様は、イガグリ頭の伊賀者いがものと言われるほどの、伝説でんせつ忍者にんじゃだったでござる」

「その説明では、イマイチすごさがわからんが、よかったな虎之助。師匠ししようと再会できて」

 岩法師が優しく言った。

 虎之助はうれしそうに、ニコニコしている。

「姉さん、良かったでんなぁ」

 小太郎も笑顔えがおである。

安倍顧問あべこもん左近さこん君が不在ふざいの間は、このくりすけさんが居てくれるから、みんなよろしくね」

 桜田刑事が、あらためてくりすけ紹介しょうかいした。

「まあ、拙者せっしやが来たからには、戦艦大和せんかんやまとのような、大船おおぶねに乗ったつもりでてくれたまえ」

「お師匠ししよう様は、タイタニック号並ごうなみの大船でござる」

 虎之助は、大喜おおよろこびである。

ーーバカか、戦艦大和せんかんやまとにタイタニックって。両方ともすぐにしずんでるしーー

 狂四郎は、なぜだかいや予感よかんがした。

「どうしたの狂四郎君。元気が無いみたい」

 桜田刑事が、心配して声をかける。

「ええ、ちょっと気分がすぐれなくて。少し休めば大丈夫だいじょうぶだと思います」



 奈良なら飛鳥あすかでは、安倍顧問あべこもん左近さこん修業しゅぎょうに、はげんでいた。

「どうだ左近。式神しきがみ調子ちょうしは?」

順調じゅんちょうです」

「そうか。お前の集中力ならおぼえも早いだろう」

「おかげさまで、ある程度ていど式神しきがみなら出せるようになりましたよ」

「さすがだな、俺の思っていた通りだ」


 そんな2人を、あやしい男たちが監視かんししていた。

 奈良の鬼武者おにむしゃ部隊ぶたいと、牛鬼ぎゅうきこと若林わかばやしである。

「ヤツら、わざわざ奈良まで来て修業しゅぎょうするとは、いい度胸どきょうだな」

 奈良なら鬼武者おにむしゃのリーダーかくである、加藤かとう面白おもしろくない。

「なにやら式神しきがみを呼び出しているようですね」

 若林は、慎重しんちょうに2人を観察かんさつしている。

「今、全員で、かかればたおせます。やりましょう」

 鬼武者おにむしゃの一人が提案ていあんすると

るか」

 加藤は決断けつだんした。


「左近、なにか感じないか?」

「ええ、するどい殺気を感じます。おそらく鬼どもでしょう」

「来るぞ!」

 安倍顧問あべこもんと左近は、鬼の襲撃にそなえた。


「左近、よく見ておけ。俺の最強の式神しきがみを呼び出す」

 安倍顧問あべこもんは一枚の御札おふだねんめ、鬼の方に向かって投げつける。

 御札おふだは、みるみるうちに巨大なりゅうの姿となり、鬼武者おにむしゃたちをおそいだした。

「なんですか、あの式神しきがみは」

「オロチだ。ここのような、広い場所でしか使えんがな」

 オロチを見て、若林も牛鬼ぎゅうき変化へんか戦闘せんとうくわわった。

 オロチが牛鬼ぎゅうきおさえている間に、鬼武者おにむしゃたちが、こちらにおそって来る。

「私もやってみます」

 左近が複数ふくすう御札おふだを取り出しねんめると、3体の天狗てんぐあらわ鬼武者おにむしゃおそいかかった。

「一度に3体も出すとは、やるな」

 安倍顧問あべこもんは、左近をめた。

「安倍さんの、指導しどうのおかげです」

 鬼武者おにむしゃ天狗てんぐ・安倍・左近の戦闘せんとうが始まる。

 左近は、さらに河童かっぱ式神しきがみも3体出して、安倍顧問あべこもんおどろかせた。

 左近の天狗てんぐ河童かっぱ戦闘せんとう力はすさまじく、鬼武者おにむしゃたちを圧倒あっとうし始めた。

 やっとの事で、オロチをたおした牛鬼ぎゅうきが、鬼武者おにむしゃたちの加勢かせいに来たが、安倍顧問あべこもんあらたに巨大武者きょだいむしゃ式神しきがみを出したところで、戦意せんいうしなってしまった。

一旦いったん、引くぞ」

 加藤が指示しじを出すと、鬼武者おにむしゃたちは一目散いちもくさんに逃げて行く。

なさけないやつらだな」

 若林も仕方しかたなく、しぶしぶ退却たいきゃくして行った。


「やったな、左近」

「ええ」

 と、返事へんじはしたものの、左近は精神力せいしんりょくを使いたしたようで、たおれこんでしまった。

「おそろしく上達じょうたつしたな。後は持続力じぞくりょくさえけば完璧かんぺきだ」

 安倍顧問あべこもんは、左近の上達じょうたつの早さに感心かんしんしていたが、ふと、不安がよぎった。

 大阪支部おおさかしぶにも、襲撃しゅうげきがあるかもしれない。

一応いちおう、大阪にも連絡れんらくしておくか」

 スマホを取り出し、桜田刑事さくらだけいじに電話をかけることにした。



 安倍顧問あべこもんから、連絡れんらくを受けた桜田刑事は

「一度、阿倍野あべのに鬼が出ましたが、虎之助とらのすけが、やっつけたから心配しんぱいいりませんよ」

 と、答えた。

「虎之助が……」

「それに、京都から、伊賀栗いがくりすけという転生者が応援おうえんに来てくれているので、しばらくは大丈夫だいじょうぶだと思います」

くりすけだと!」

「なにか問題でも?そうだ、くりすけさんは転生以前てんせいいぜんは、虎之助の師匠ししょうだったそうですよ」

「なんだと!」

「どうしたんです?なにか様子ようすが変ですけど?」

「京都のヤツら、厄介払やっかいばらいしやがったな」

「どういう事です?」

くりすけうでは立つが、一緒いっしょに行動した同僚どうりょう不振ふしんな死をげることが多く、京都DSPでは要注意人物ようちょういじんぶつになっている」

「ええっ、なんでそんな人を応援おうえんに?」

証拠しょうこが無いからだ。手強てずよい鬼が多い京都では、くりすけを使い続けるのはリスクが高い。だからといって、証拠しょうこも無いのに解任かいにんするわけにもいかない」

「でも、同僚どうりょうの死とくりすけさんは、無関係むかんけいかもしれないですよね?」

たしかに、そうだ。だからこそ厄介払やっかいばらいされたのだ」

「どうしますか?」

「俺だけでも出来るだけ早くもどる。それまで岩法師いわほうし式神しきがみに、くりすけ見張みはらせておいてくれ」

「わかりました」

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