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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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左近の退院

 警察病院けいさつびょういんでは、左近さこん退院たいいんするところであった。

「やっと退院か」

 病院前のロータリーまで行くと、安倍顧問あべこもんが車でむかえに来てくれていた。

「いつもすいません」

 車に乗りみながられいを言う。

きずは、もう良いのか?」

「はい、もう大丈夫だいじょうぶです」

「何度目の入院だ?」

 安倍顧問あべこもんが、たずねる。

「えっ、たぶん5回目ぐらいだと」

「お前も、わかっていると思うが、最近は出現しゅつげんする鬼が強くなって来ている」

「そのようですね」

「もう、お前のけんだけでは、この先のたたかいはきびしくなるだろう」

 左近は、だまっている。

「これからは、岩法師いわほうし法力ほうりきや、虎之助とらのすけ忍術にんじゅつのような特殊能力とくしゅのうりょく必要ひつようとなって来る」

 まだ、左近はだまっている。

「いいかげんに観念かんねんして、俺の陰陽道おんみょうどうまなべ。お前なら誰よりも強くなれる」

「でも、俺にはけんが」

「わかっている、お前は武士ぶしの出だ。だが、そのせいで余計よけいなプライドも持ってしまっている」

左近は、まただまった。

「そんな物はてろ。俺も陰陽師おんみょうじとしてのプライドは、とっくにてている」

安倍顧問あべこもんが?」

「そうだ。安倍一族あべいちぞくは、血統けっとうではなく実力で任務にんむが決まる。一番才能いちばんさいのうがあるやつ京都府警きょうとふけい、二番目が警視庁けいしちょう顧問こもんとなる」

「では、大阪府警おおさかふけいにいるアンタは?」

「俺は安倍一族にまれ、当初とうしょ秀才しゅうさいてはやされていた」

 左近は、だまって聞いている。

「だが、後でまれて来た弟2人が天才であったため、すぐに陰陽師おんみょうじとして弟たちにかれてしまった。今は次男が京都、三男が東京へと任務にんむいている。

 俺も任務にいた当初とうしょは、弟たちにたいしての意地いじがあり、陰陽道おんみょうどうで見かえそうとしたが、陰陽道おんみょうどうにこだわり過ぎて任務にんむに失敗し、一般市民いっぱんしみん犠牲者ぎせいしゃを出してしまった。

 以来いらい、俺は陰陽師おんみょうじとしてのプライドをて、じゅうでも何でも使える物は使うようになった」

ーーそうだったのか。今までエリートだと思っていたのだが、人にはいろんな事情じじょうがあるものだ。俺もけんに対するプライドにこだわっていては、この先、一般市民を守って行くことがむずかしくなるだろうーー

「お前には、人並ひとなみはずれた忍耐力にんたいりょく集中力しゅうちゅうりょくがある。俺が指導しどうすれば、弟よりも優秀ゆうしゅう陰陽師おんみょうじになれるやもしれん。しかし、そのためには武士ぶしとしてのプライドをてなければならない。だが逆に、そうしなければ忍者にんじゃ僧侶そうりょで負けることになる」

「わかりました、俺に陰陽道おんみょうどうを教えて下さい、だれよりも強くなってみせます」

 左近は安倍顧問あべこもんに、ふかぶかと頭を下げるのであった。



 安倍顧問あべこもんと左近が熱くかたっている同時刻どうじこくに、はるか遠くはなれた場所では、それ以上に熱いおとこがいた。

 鬼ロボに火星までばされた銅鬼どうきは、タコ型の火星人のタコ太郎と友達になっていた。

 タコ太郎の話では、火星は『山田タコ14世』と呼ばれる独裁者どくさいしゃ圧政あっせいいており、火星人たちは苦しんでいるという。

 土地はせており、作物は不作ふさくが続いているが、ぜいは高く農民の生活はまずしい。

 さらにぜいの取り立てはきびしく、はらえない者は火星王家かせいおうけ親衛隊しんえいたい逮捕たいほされ、ダコにされて『山田タコ14世』の朝食にされるらしい。

「『山田タコ14世』か、とんでもない外道げどうだ。ゆるせぬ!」

 銅鬼どうきは、その生涯しょうがいけ『山田タコ14世』をたおすことを決意けついするのであった。



 翌朝よくあさ、DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎しゅくしゃでは、いつものように転生者てんせいしゃたちが朝食をとっていた。

「また、このうすっぺらいトーストでござるか」

 朝食のトーストと目玉焼めだまやきを食べながら、虎之助とらのすけ不満ふまんをもらした。

関西かんさいでは5枚切りが主流しゅりゅうだが、DSPは予算よさんの関係で6枚切りだ」

 岩法師いわほうしが、事情を説明している。

「関西ではって、他の所はちがうのでござるか?」

「全国的には、一斤いっきん6枚切りが一般的いっぱんてきだな」

「DSPは、金が無いねんなぁ」

 小太郎こたろうは、目玉焼めだまやきを食べながら、つぶやいた。

「今日は、なぜか人数が少ないでござるな」

 今朝の宿舎は、虎之助と小太郎・岩法師の3人しかいない。

狂四郎きょうしろうは、お前になぐられて入院中で、左近は安倍顧問あべこもん奈良なら修行中しゅぎょうちゅうだ」

「左近は修行しゅぎょうでござるか。拙者せっしゃも修行中は、つらかったでござる」

ねえさんの修行って、やっぱりきびしかったんでっか?」

きびしかったでござるが、拙者せっしやは5万年に一人の逸材いつざいと言われていたので、なんとか免許皆伝めんきょかいでんできたでござる」

「5万年って!もしかして、その中にはネアンデルタール人もふくまれてるんでっか?」

ふくまれているでござる」

「さすが、姉さんは、人類史上じんるいしじょうでも規格外きかくがいの強さでんな。それはそうと、左近さんの安倍顧問あべこもんとの修行しゅぎょうって、もしかして陰陽師おんみょうじの修行してはるのかなぁ?」

「さあ、拙僧せっそうは、くわしくは知らんが。しかし、DSPが手薄てうすな時にかぎって、いつも鬼どもがあばれだすからのう」

規格外きかくがい拙者せっしやがいるから、大丈夫だいじょうぶでござる」

 虎之助は平然へいぜんと、トーストを食べている。

バタン!

 とびらはげしく開く音とともに、桜田刑事さくらだけいじんで来た。

「みんな、任務にんむよ。鬼が出たわ!」

「なんと!」

 岩法師は、自分の悪い予感よかんが当たっておどろいた。

「みんな、早く車にって!」

「鬼は、ドコに出たんでっか?」

阿倍野あべのよ」



 阿倍野あべの区の街中まちなかで、10人ほどの鬼が人々をおそっている。

 到着とうちゃくした虎之助たちは鬼を見つけると、すぐに乱戦らんせんとなったが、それほど強い鬼はないようである。

 しかし、鬼の一人が異様いようなエネルギーを出している事を、虎之助は感知かんちしていた。

 鬼ロボである。

「あの、ん中にいる鬼は普通ふつうの鬼とちがうでござる。危険きけんなので、小太郎は近づかない方が良いでござる」

 と、虎之助は小太郎に忠告ちゅうこくした。

「わかった、姉さん。俺にまかしといてや、ブチ殺して来ますさかいに」

 小太郎は、逆に鬼ロボ目掛めがけて走り出して行く。

「小太郎!そっちに行ったらダメでござる」

 虎之助がめるが、小太郎は、そのままんで行った

 鬼ロボの方でも、虎之助に気付きづいており、コチラに向かって来ている。

ーーアレが、鬼塚おにずかたちが言っていた小娘こむすめダナーー

「死ねや!」

 小太郎が鬼ロボにりかかった。

「じゃまだ、クソざこ」

 鬼ロボは、刀ごと小太郎をはらった。

「うへ〜」

 小太郎はんで、近くのコンビニの中にんで行く。

 鬼ロボは、そのまま虎之助にかう。

「お前が、みんなが言ってイタ小娘こむすめか。思っていたより弱ソウダナ」

 虎之助の刀が鬼ロボの首を切った。

ガキッ!

 はずであったが、鬼ロボの首は鋼鉄製こうてつせいであり、刀の方がれた。

「ソンナかたななど、俺には通用シナイ」

 鬼ロボは、素早すばく虎之助の胴体どうだいを持ち、天高てんたかほうり投げた。

「これは火星マデ、行ったナ」

 鬼ロボは、勝利しょうり確信かくしんした。

「おぬし、ただの鬼じゃないでござるね」

 火星まで投げたはずの虎之助が、なぜか目の前にいる。

「なぜだ!お前は、さっきげたハズダ!」

「おぬしが投げたのは、おぬしの仲間の鬼でござる『わりじゅつ』でござる」

「今度コソ、飛んで行け」

 鬼ロボは、ふたたび虎之助を天高てんたかほうり投げた。

「今度こそ、ヤッタゾ」

 鬼ロボが、ふたたび勝利しょうり確信かくしんするが、またもや目の前に虎之助がいる。

「また、仲間を投げたでござるね」

「オノレ、こうなったら全員、投げてヤル」

 ブチ切れた鬼ロボは、手当てあたりしだい、まわりにる者をほうげ始めた。

「これはマズい」

 岩法師は法力ほうりき姿すがたかくすと、退避たいひして行く。

 気がくと、鬼ロボは仲間の鬼を全員投げてしまっていた。

だれもいなくナッタ、あとは、お前だけダ、もう『わりじゅつ』は使えんゾ」

「使う必要ひつようないでござる。今度は拙者せっしゃから行くでござる」

 虎之助は、鬼ロボめがけて突進とっしんする。

ーーバカな小娘こむすめだ、俺ニハ、奥の手てがアルーー

 鬼ロボには加速装置かそくそうちが付いており、数秒間すうびょうかんだけであるが、すさまじく早く動くことができる。

 加速装置かそくそうち起動きどうさせると、今まで見えなかった虎之助のすばやい動きが、スローモーションのようにハッキリと見える。

 鬼ロボは慎重しんちょうに虎之助のウエストをつかむと、おもいっきり上空にほうり投げた。

「やっと飛んで行ッタカ」

 鬼ロボは、今度こそ勝利を確信かくしんした。

拙者せっしやは、ここでござる」

 またしても、目の前に小娘こむすめがいる。

 なぜだ。鬼ロボが自分がげた物を、望遠ぼうえんレンズで見て確認かくにんしてみると、虎之助の服を着た丸太まるたであった。

「丸太ナンテ、ドコにあったノダ?」

 不思議ふしぎがっている鬼ロボに。

唐沢家からさわけ忍術にんじゅつ雷遁らいとんじゅつ

 虎之助が、鬼ロボのヘソに掌底しょうていを打ち込みながら、じゅつを使った。

 数百万ボルトの電流でんりゅうが鬼ロボの体内に流れ、すべての電子回路でんしかいろを焼き切って行く。

「プシュー」

 と、言いながら鬼ロボは前のめりにたおみ、機能きのう停止ていしした。

「さすが姉さん。見事みごとに鬼どもをたおしはりましたね」

 鬼ロボをたおした直後ちょくご、ふっばされていた小太郎が、コンビニで買ったアイスを食べながらもどって来た。

「でも服が、もったいなかったでござる」

 虎之助は、わりじゅつを使ったさいに服をいでしまっており、下着とスニーカーという格好かっこうである。

「ほんまや、姉さん下着だけですやん。でも、姉さん良く食べるわりには細いでんなぁ」

拙者せっしゃは、ダイエット中でござる」

「そんなん、やってましたっけ?好きなだけ食べてるように見えまっけど。しかし、姉さんは、あいかわらず強いでんな」

拙者せっしやの強さは、チンパンジーの赤ちゃんも裸足はだしで逃げ出すほどでござる」

「さすが姉さん、上手うまいこと言いはるわ」

 2人はゲラゲラとわらい出した。

「なにが可笑おかしいのか全然わからないけど、いつまでも、そんな格好かっこうしてないで、とりあえず、これを着てなさい」

 桜田刑事さくらだけいじが怒りながら、車にんであった自分のジャンバーを虎之助にわたす。

「かたじけないでござる」

 虎之助は、桜田刑事さくらだけいじのジャンバーを羽織はおるが、サイズが少し大きいようだ。

桜田さくらだは太っているから、仕方しかたないでござるね」

「なんですって!もう一度言ってみなさい。一週間グランドの草むしりに、夕食抜ゆうしょくぬきの厳罰げんばつにするわよ」

「あわわっ!桜田さくらだこわいでござる」

 岩法師はたおれた鬼ロボを観察かんさつしていたが、何かに気付きづいた。

桜田刑事さくらだけいじ、こいつはロボットだ」

 おこっていた桜田刑事さくらだけいじも、さすがにおどろいた。

「ロボットですって?」

 岩法師が指をさしている場所を見ると、鬼ロボの頭部とうぶれて機械きかい頭脳ずのうが見える。

「鬼に、こんな技術力ぎじゅつりょくがあったなんて。とにかく、しょ鑑識かんしき連絡れんらくしておくわ」

「やはりこいつは、電気式のカラクリ人形だったでござるね。どうりで心臓音しんぞうおんわりに、機械音きかいおんが聞こえてたでござる」

「ゴッツいパワーやと思っとったら、ロボットやったんか」

 4人がたおれた鬼ロボを観察かんさつしていると、数人の警官けいかんがやって来た。

「あとは彼らにまかせて、いったん帰るわよ」

 警官けいかんたちにぎをすると、桜田刑事さくらだけいじはメンバーに撤収てっしゅうつたえる。

拙者せっしやは、あべのハルカスで服を買ってから帰るでござる」

「ダメよ、そんな格好かっこう街中まちなかを歩いたら」

「そうですよ姉さん、下着にジャンバーじゃ、ちょっと、まずいと思いまっせ」

「しかたない、お気に入りの服だったでござるが」

 虎之助が残念ざんねんそうに、つぶやいた。

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