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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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二人の鬼神

「しかし、俺らが鬼神になるとは、夢にも思ってなかったな」

 鬼神きしんとなった鬼塚おにずか川島かわしまは、社長室でくつろいでいた。

「でも、奥さんは、お父様を亡くされて悲しんではったでしょうね」

 川島は、夜叉やしゃの娘である鬼塚の妻に同情している。

「まあな。ただ夜叉さんは、千年以上も生きてはったから、妻もそれほど落ち込んでは無いみたいや」

 鬼塚はアイコスを一口吸ひとくちすった。

「まあ、大往生だいおうじょうですね。それで、かたきは取るんですか?」

「いや、もう良いやろ。俺はあらそいより人間たちとの共存きょうぞんを望んでるんや。夜叉さんのかたきつと、相手の仲間が仇討あだうちに来るやろ、そのり返しが永遠に続く事になる」

「まあ、そのような事がり返されて、良くも悪くも、現在の鬼の立場がありますからねえ」

「もうそういうのはうんざりなんや。お前も子供を持つ身として、わからんでもないやろ?」

 鬼塚は、アイコスを吸い終えた。

「言っている事は、わかりますが。他の鬼神たちが、どう思うかですね」

 鬼塚社長の意見は理解できるが、現実にはむずかしいだろう。

「しかし、こうして2人とも鬼神になったんや。これからは上下関係なしで対等に付き合おうや」

「と言いますと?」

 川島が聞き直した。

「その堅苦かたくるしい敬語けいごは、もう使えわんで良いちゅうこっちゃ」

「今さらタメ口は無理ですよ」

「大丈夫やって。ためしに日ごろ思ってる事を、思い切ってタメ口で言ってみてくれや」

「そこまで言うなら」

 川島は少し考えてから

「鬼塚。お前って仕事量のワリに、給料もらい過ぎだよな」

 と言ってみた。

ーーおおっ。川島こいつ、いきなり生活に直結ちょっけつするシビアな事を言ってきよったーー

「だいたい、お前は、社長室でアイコス吸いながらボオっとしてるだけで、会社の事なんもわかってないやろ」

ーーうっ、ほんまの事やから、何も言い返されへんーー

「ほんで、社長のクセに、なんで小遣こずかいが月に三千円やねん」

ーーいや、それは別に良いやろーー

「お前、初めて会った時から、ねこのウンコのにおいがするねん」

ーー猫のウンコって!ーー

「あと、お前が毎週読まいしゅうよんでる『少年ジャンプ』な、実は『少年マガジン』やから」

ーーえっ、あれジャンプじゃなかったんか!ーー

「それに、お前が『ワンピース』と思って読んでるマンガ、本当は『はじめの一歩いっぽ』や」

ーーええっ、『ワンピース』と思ってたらちがうかったんや。なんかボクシングのシーンが多いと思ってたんやーー

「と、まあ、こういう感じですかね」

 川島は平然へいぜんとした表情で言った。

「なるほど、そういう感じになるんやな」

 と言いながらも、大量のあせが出て来た。

 鬼塚はふるえる手でアイコスのスイッチを入れながら 

「やっぱり、今まで通り敬語けいごで話してくれ」

 と、テンション低くく小声で言うのであった。



 虎之助とらのすけが一人でアメリカ村まで買い物に来てみると、いつも通りライアンとマーゴットにアンドロポプが、たむろしていた。

「なんだ、今日は一人か。あのえらそうな小僧こぞうはどうしたんだ?」

 ライアンが虎之助に聞いて来た。

小太郎こたろうは修行中でござる」

 虎之助が答える。

「アンタが一人で来るのは、めずらしいわね」

 マーゴットも不思議ふしぎそうな顔をしている。

拙者せっしゃもタマには、一人で来るでござる」


 その様子ようすを数人の男たちが見ていた、鬼である。

羅刹らせつ様。DPSの小娘と国際電極保安協会こくさいでんきほうあんきょうかいのアメリカ支部のやつらが居ますよ」

 羅刹らせつと呼ばれた男は

士会鬼しかいき様からDSPと国際電気保安協会は見つけ次第しだい抹殺まっさつするよう命令を受けている」

 と言うと、右手を開いて虎之助に向けて

ドスッ!

 手のひらからエネルギーだんはなった。

「おおっ、羅刹らせつ様の必殺技『』だ。あの小娘たち、跡形あとかたも無く吹き飛ぶぞ」

 鬼たちは固唾かたずを飲んで、虎之助の方を見る。


拙者せっしゃは、秋物のアウターを買いに来たでござる」

 虎之助がライアン達に向かって、アメリカ村に来た目的を話していると

「うわっ、なんか飛んで来るぞ!すごいエネルギー波だ」

 あわててライアンがマーゴットのうでつかみ、逃げ出そうとした。

「大丈夫でござるよ」

 虎之助は右手をエネルギー波に向けると、巨大な暗黒闘気あんこくとうきを出した。

 暗黒闘気あんこくとうきは『』を飲み込んで、さらに巨大になり、鬼たちに向かって行く。

ーーこれは、まずいーー

 羅刹らせつは、すぐさまエネルギー防御壁ぼうぎょへきを作って鬼たちを守る。

ゴオォー!

 爆音ばくおんひびき、防御壁ぼうぎょへきに暗黒闘気がぶつかった。

ーーこれほどの暗黒闘気を、いとも簡単に出せるとは、なんという娘だーー

 羅刹らせつ驚愕きょうがくすると共に、なぜ士会鬼しかいきが自分に大阪に向かわせたのかが理解できた。

 本来ほんらいであれば、大阪は鬼神にったばかりの鬼塚と川島の担当地域である。

 おそらく士会鬼しかいきは、義父である夜叉やしゃを亡くした鬼塚を気遣きずかって、在阪ざいはんの反鬼勢力の一掃いっそうを、武闘派ぶとうはの鬼神である自分にまかせたのであろう。

 防御壁ぼうぎょへき暗黒闘気あんこくとうきふせぎきった羅刹らせつであるが、気が付くと、いつの間にか連れて来た5人の鬼が全員、首をられて倒れているではないか。

「次は、おぬしでござる」

 小娘が目の前で、刀を向けていた。

「なるほど、素早すばやいな」

 だが、百戦錬磨ひゃくせんれんま羅刹らせつにとって、さしておどろほどのことでは無い。

シュッ

 虎之助の刀が羅刹らせつの首をねらって来る。

ガシッ

 羅刹は刀を左手でにぎって止めると、右手での手刀で虎之助の首をねらう。

ボキッ!

 しかし、手刀を虎之助の真剣白羽取しんけんしらはどりで止められ、られてしまった。

ーー予想より数倍強いなーー

 られた右手を治癒ちゆしながら

「今日は、まだ様子見ようすみだ。また、会おう」

 羅刹は高く跳躍ちょうやくして、ビルの屋上に飛ぶと去って行った。


「なんだ今のやつは。えらい強そうだったな」

 一部始終いちぶしじゅうを見ていたライアンが、虎之助に声をかけ来た。

「あんなの、たいしたこと無いでござる。それよりアウターを買いに行くでござる」

 と、虎之助は何故なぜか、マーゴットのうでを引っ張りながら言った。

「なんで私の手を引っ張るのよ」

 おどろいたマーゴットが聞いた。

拙者せっしゃは服の流行がわからないので、おぬしがアウターを選ぶのでござる」

「えっ、私が?」

「そうでござる。拙者せっしゃ似合にあうアウターを選ぶでござる」

「ちょ、ちょっと待ってよ。ライアンも一緒に来て」

 マーゴットはライアンに助けを求めた。

仕方しかたない、俺たちも行くか」 

 ライアンがシアンドロポプを見ながら言った。

「俺も行くのかよ」

「当たり前だ。お前も、あの娘のショッピングにつきあうんだよ」

 という具合ぐあいに、虎之助は3人を引き連れて、秋物のアウターを買いに行くのであった。

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