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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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加藤の帰還

「もうわかっていると思うが、君らをせたのはワシじゃ」

 と言った老人は、和室の中央部に座っていた。

 鬼塚おにずか川島かわしまは、かしこまって部屋のはし正座せいざしている。

「はぁ。それでワシらみたいなもんに、士会鬼しかいき様が何の御用ごようで?」

 士会鬼しかいきと呼ばれた老人は

夜叉やしゃが死んだ」

 と、伝えた。

「やはり、そうでしたんか。私も何か夜叉さんのたましいのようなモノを感じましたんや」

 鬼塚は、しみじみと言った。

「それは、夜叉からの知らせじゃ。君を後継者こうけいしゃに選んだのじゃ」

「私が夜叉さんの後継者?」

 鬼塚はおどろいて士会鬼しかいきの顔を見た。

ーーうわっ。さすがに、鬼の始祖しそと言われるだけあって、シワだらけのおじいさんやなーー

 などと鬼塚が思っていると

「君らは鬼神にるのじゃ」

 士会鬼しかいきは意外なことを言った。

「私たちが鬼神でっか?」

 鬼塚は、よく理解できていない。

「私もですか?」

 川島も戸惑とまどっている。

「そうじゃ。鬼塚君は夜叉の後継者こうけいしゃとして、川島君はワシらがあたえた試練しれんに合格したので、十分に鬼神の資格がある」

「川島の試練しれんて、何でんねん?」

 鬼塚がたずねた。

「元々、鬼神に近い実力を持っていた川島君に、鬼塚君を鬼神に育てあげるように夜叉がたのんだのじゃ」

「なるほど、そういう事でしたんか」

ーー川島が俺に、うるさく言って来てたのは、そういう理由があったんかーー

 鬼塚はスッと立ち上がると

「帰るぞ、川島」

 と言い、部屋から出ようとした。

「ちょっと、社長。士会鬼しかいき様の前で失礼ですよ」

 おどろいて川島が止める。

「私は鬼神になるつもりはありまへん。それよりも早く帰って妻の元に行かないとあきまへん。父親を亡くして、きっと悲しんでいるでしょうから」

 鬼塚は部屋から出て行こうとした。

「社長!」

ーーまずい、社長が鬼神にらなければ、私も成れないではないかーー

 川島は鬼塚を、追いかけようとした。



 白鬼はっきすべての邪悪じゃあくなエネルギーを吸い取られしまっていた。

 しかし、西王母せいおうぼの方は邪気じゃきエネルギーを吸い取られまいと、頑張がんばっていた。

「もう、あきらめて、西王母さんも邪悪エネルギーを吸い取ってもらいましょうよ」

 加藤かとうすすめて来た。

いやよ。そうだ、今のうちに、さっさと白鬼をブチ殺して『久宝蓮華きゅうほうれんげ』の術を止めれば良いんだわ」

 西王母は、剣を持って白鬼に近づいて行く。

「よくも、やってくれたな西王母」

 白鬼も剣をかまえて、むかつ気である。

 ついに、2人が決着をつける時が来た。

 しかし、西王母は近づいてみて、あまりにもの白鬼の姿の変わりように剣を下げてしまった。

「アンタ。元は、そんな姿だったの?」

 西王母がおどろくのは無理もなく、白鬼は華奢きゃしゃな色白の美少年の姿になっていた。

「それが、どうした。かかって来い」

 白鬼は強がって言ったが、邪悪じゃあくなエネルギーを完全に吸い取られて、戦闘能力は普通の少年並しょうねんなみに落ちていた。

「西王母パンチ!」

ボコッ!

「くふっ」

 白鬼は西王母の右ストレートで、呆気あっけなく倒れた。

「アホの加藤。コイツは連れて帰るわよ」

 西王母は、気を失っている白鬼の足をつかんでいる。

「とどめはさないのですか?」

 疑問ぎもんに思った加藤はたずねた。

「もはや、この男は無害よ。とりあえず連れて帰るわ」

「わかりました。でも、西王母さん『久宝蓮華きゅうほうれんげ』の術を早く止めないと、まだ邪気じゃきを吸い取られてますよ」

 加藤の言うとおり、西王母から黒い邪気エネルギーが9個の玉に吸い取られ続けている。

「あわわ。大変、忘れてたわ」

 加藤に指摘してきされ、あわてて『久宝蓮華きゅうほうれんげ』の術を解除かいじょする西王母であった。



 鬼塚が部屋から出て行こうとした時

 他の鬼が部屋に入るなり、士会鬼しかいきに何かを伝えた。

 士会鬼しかいきは、少しおどろいたような表情をして

「鬼塚君、少し待ちなさい」

 と、鬼塚を止めた。

「なんですの?」

「君の意見を尊重そんちょうしようと思っていたが、今しがた事情じじょうが変わった。白鬼はっきが鬼神の力を失ったようじゃ」

「えっ、あの白鬼さんが?」

「そうじゃ。西王母と戦いで力を失い、鬼神では無くなったようじゃ」

「まさか」

「もはや君たちに選択権せんたくけんは無くなった。いやおうでも鬼神になるのじゃ」

 優しげな表情であった士会鬼しかいきの顔が、意見を言うことすら、はばかれるほどきびしい形相ぎょうそうへと変わっていた。

 鬼塚は、拒否きょひする事をあきらめた。



 加藤はひさしぶりにDSPの宿舎しゅくしゃに帰って来た。

「いろんな事があってつかれたな。今日は、ゆっくりと休もう」

 リビングに行くと、んなが、そろって夕食を食べているところである。

「あっ。加藤が帰って来たで」

「ホントだ。この野郎、よくも帰って来れたな」

 小太郎こたろう狂四郎きょうしろうが、そろっていやそうに顔をする。

「そう言うな、ワシは今しがた白鬼をたおして来たところなんだから」

 加藤はつかれた声で言った。

「えっ、あの鬼神の白鬼をでっか?」

 おどろいて小太郎が聞き直す。

「そうだ。西王母せいおうぼさんと一緒にだが」

「西王母さんって誰でんねん」

「西王母は、崑崙こんろん山に住む伝説の聖女だ」

 説明を聞いても、小太郎と狂四郎は、あまり理解できなかった。

「しかし、よく白鬼を倒せましたね」

 岩法師いわほうし素直すなおに感心している。

「そういえば、拙者せっしゃと岩法師は白鬼に会った事があるでござる」

 虎之助とらのすけは一度、白鬼と戦ったことを思い出して、加藤の顔をじっと見つめた。

ーーこの男が、あの白鬼を倒したのでござるか。ただの馬鹿ばかだと思っていたけど、なかなかの手練てだれでござるなーー

 加藤も虎之助の顔をマジマジと見た。

ーーこのむすめ、ほんとに西王母さんにそっくりだな。外見がいけんてるが、2人とも変な性格で乱暴者らんぼうものだしーー

 2人は、じっと見つめ合っていたが、何故なぜか、そこに愛は生まれなかった。

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