謎のカッパ星人
加藤は、白鬼と対峙していた。
「死ね、白鬼!」
疾風の如く速さで斬りかかる加藤。
グシャ!
「未熟者めが」
しかし、白鬼の拳が加藤の頭部を破壊する。
「未熟者は、お前だ白鬼」
ズバッ!
加藤の刀が白鬼の腹を切り裂いた。
「おのれ、分身の術か」
頭部を破壊されたのは分身の加藤で、本体の加藤が背後から切りつけたのである。
「ワシの刀には猛毒が塗ってある、いかに鬼神でも無事ではいられぬぞ」
加藤は白鬼を睨みつけた。
「ほう、我に毒など効くと思っているのか」
斬られた白鬼の腹部が、いつの間にか治っている。
「なんだと。この特製の毒が効かないとは、お前は変態か?」
意外そうな顔をしている加藤。
「人聞きの悪いことを言うな。これも、修行の賜物だ」
「ならば、これはどうだ」
加藤は、御札を取り出し呪文を唱える。
すると、黒い着物を着た男が現れた。
「玄武、奴を殺せ」
加藤から玄武と呼ばれた着物の男は、右手を白鬼に向けると、着物の袖から大量の蛇を出して白鬼に向かわせた。
「玄武の出す蛇の毒は、いかに鬼神でも死を免れんぞ」
勝ち誇る加藤。
さらに玄武は左の袖から大量の亀を出して来た。
「おい玄武、亀なんか出すなよ。そんな物は役に立たん」
加藤が玄武に注意すると
「なんだと。俺様の亀をバカにするのか。亀どもよ、アイツを殺ってしまえ」
怒った玄武は、亀を加藤にけしかけた。
亀たちは、足を甲羅に引っ込めると、そこからジョット噴射を行い高速で飛んで加藤に襲いかかった。
「なんだ、コイツら飛べたのか。もう良いから止めさせろ玄武」
「もう遅いわ。お前らは2人とも死ぬのだ」
玄武は、白鬼ともども加藤も始末する気である。
「自分の出した式神に裏切られるとは、やっぱり、お前は間抜けだな」
蛇を始末しながらも白鬼があざ笑う。
「うるせぇ、お前なんか蛇に噛まれて死んでまえ!」
加藤は亀から逃げながら悪態をついた。
「何をやっているの、アホの加藤?」
遅れて到着したヘスティアが、状況が分からず不思議そうに尋ねてきた。
「俺の式神が暴走したんだ。それよりハーデースとポセイドンは、どうした?」
「もうすぐ来ると思うわ。でも、あなた大丈夫なの?亀にお尻を噛まれているけど」
「ホントだ、痛って!くそっ、玄武の野郎、調子に乗りやがって」
加藤が尻から亀を引き離していると
「あの白鬼と戦っているのは誰だ?」
ハーデースとポセイドンが遅れてやって来た。
「あれは俺が出した式神の玄武だ。今は暴走しているから近づくな、空飛ぶ亀が襲って来るぞ」
加藤は2人に注意するが
「亀なんぞ俺が追っ払ってやる」
と、ポセイドンは三叉の槍をかまえて、高速で海水を放出した。
玄武が出した亀たちは、海水が苦手のようで、慌てて逃げて行く。
「やるな、ポセイドン」
加藤が感心していると、白鬼も、ようやく蛇を退治し終えたようで、こちらに向かって来ている。
「クロノスが来たわ、ぬかるんじゃないよ2人とも」
ヘスティアがポセイドンとハーデースに指示する。
「わかってる、今度こそ奴を殺す」
ヘスティアに言われるまでも無く、2人とも復讐心に燃えていた。
モスクワ空港で、帰りの飛行機を待っていた鬼塚は異変に気付いた。
「夜叉さんが死んだ」
と、鬼塚が小さな声で呟いた。
「あの夜叉さんが、本当ですか?」
一緒にいた川島が驚いて聞き直す。
「ホンマや。今、夜叉さんの何かエネルギーの様な物が、俺の身体に入って来たんや」
ーーなるほど、確かに鬼塚社長から、薄っすらとではあるが、オーラを感じるーー
「とにかく、大阪に帰って確かめましょう」
夜叉は鬼塚の義理の父親でもある。川島は言葉を選びながら鬼塚に接している。
とりあえず、まだ、死んだと決めつけてはいけない。
「そうやな、帰って仇を取らなアカンな」
だが、鬼塚は夜叉の死を確信しており、恩師であり妻の父親でもある夜叉の仇を取ることを誓うのであった。
DSPの宿舎では、皆んなで夕食を食べていた。
「お前ら鬼神を倒したって凄えな」
狂四郎が珍しく興奮している。
「まあ、鬼神いうたかて人の子や、大した事あらへんわ」
小太郎は自慢げに謙遜したが
「鬼神は、人の子じゃないだろう」
と、岩法師から突っ込みが入った。
「じゃ、誰の子ですの?」
小太郎が尋ねる。
「カッパ星人の子でござる」
何故か虎之助が答えた。
「ええっ、鬼神って宇宙人の子供やったんですか!」
驚く小太郎。
「カッパ星人は、インドで生まれたヨガの達人でござる」
さらに説明する虎之助。
「へえ、さすが姉さんは詳しいでんなぁ。でも、なんで宇宙人やのにインドで生まれたんでっか?」
「両親がインド人だからでござる」
ーーそんなバカな!ーー
近くで2人の会話を聞いていたボルデ本山は、耳を疑った。
「なるほど、それならカッパ星人がインドで生まれたのも納得できますわ」
何故か小太郎は、感心して虎之助の話を聞いているが、ボルデ本山は
ーーなんでインド人の両親から、宇宙人が生まれるんだよ!コイツら、やっぱり、とてつもないアホだーー
と、心の中で激しく突っ込むのであったが
「カッパ星人は、キュウリとナポリタンが大好物でござる」
「へえ、勉強になりますわ」
「カッパ星人は、雨が降っても傘をささないでござる」
「それやったら、濡れてまいますやん」
「カッパ星人は、雨の日は雨ガッパを着るでござる」
「それなら安心でんなぁ」
「カッパ星人の好きなタイプの女性は、ぽっちゃり系メガネ女子でござる」
「シブいでんなぁ」
「カッパ星人は、カエルと会話が出来るでござる」
「そりゃ便利でんなぁ」
「カッパ星人が野球をするときは、右投げ左打ちでござる」
という具合に、虎之助による、信憑性が低く、どうでも良いカッパ星人の説明が、延々と続くのであった。