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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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西王母

「もう、かなりのぼったな」

 加藤は、まだロープを登っていた。

 地上から数千メートルはありそうだ。

「おや、あれは何だ」

 雲の上の方に、なにか岩ような物が見えた。

 さらに登って行くと、山の頂上ちょうじょう部分だけが、雲の上にそびえ立っている。

「まさか、あれは、伝説の崑崙こんろん山」

 加藤は夢中でロープを登り山頂さんちょうに向かった。



 虎之助とらのすけが食堂に来てみると、岩法師いわほうし左近さこんに並んでボルデ本山もとやまも『かき葉寿司はずし』を食べていた。

「あっ、ボルデ本山。なんで、おぬしも食べてるのでござる?」

「ゴチになってます、ムシャムシャ」

 美味おいしそうに食べるボルデ本山。

「この方が、お前の友達って言うから、一緒に食べてたんだ」

 岩法師が説明する。

「まあ、知り合いではござるが」

 イマイチ納得なっとくがいかないが、虎之助は、とりあえず自分の分を食べ始めた。

 小太郎こたろう狂四郎きょうしろうもやって来て、みんなで食べていると、不意ふいに岩法師が

「そういえば、加藤さんは、どこに行ったんだ?左近と出かける前には居たのだが」

 と聞いてきた。

「さあ、知りませんね」

 とぼける狂四郎。

「俺も知りまへんなぁ」

 小太郎も、とぼけている。

「虎之助。お前は何か知らないか?」

 岩法師が虎之助に確認して来た。

「加藤なら、ロープで空に登って行って消えたでござる」

 バカ正直に答える虎之助。

「なんじゃと!消えたって、どこにだ?」

「加藤は宇宙に行ったでござる」

 少し話をる虎之助。

「そんな阿呆アホな」

「たぶん、海王星かいおうせいまで行ったでござる」

 大幅に話をる虎之助。

「そんなに遠くにか!」

 おどろく岩法師。

日頃ひごろから、海王星に行きたいって言ってたでござる」

 虎之助は、自分の中にある理想の加藤のイメージを想像そうぞうして言った

「そんなこと言ってたかなぁ」

 岩法師は首をかしげた。

「言ってたでござる。海王星の海で、全裸になって水泳をするのが夢だったみたいでござる」

 虎之助は、自分が見てみたい加藤を思いえがいて言った。

氷点下ひょうてんかの海王星に、海は無いと思うけどな」

 不思議ふしぎがる、岩法師。




「ほう、ここに客が来るとは、何百年ぶりだろう」

 山頂さんちょうに着くと、身なりの良い中年の紳士しんしが加藤を出迎えた。

「ここは崑崙こんろんなのか?」

 加藤は、たずねた。

「そう呼ぶ者もいるらしい」

 中年紳士が答える。

「やはりそうか。それでアンタは何者だ?」

「私は西王母せいおうぼ様の秘書ひしょで、パーカーという者だ。君は加藤段蔵かとうだんぞうだろ」

「なぜワシの名を知っている?」

「地上のことは、すべて把握はあくしている」

西王母せいおうぼがココに居るのか?」

 西王母せいおうぼとは崑崙こんろんに住むといわれている伝説の聖女である。

西王母せいおうぼ様はいらっしゃるが、君には会う資格しかくがない」

「会う資格って何だ」

人格じんかくと強さだ。君には両方とも欠けている」

「なんじゃと、ワシは『飛び加藤』と言われた伝説の忍者じゃぞ、貴様なんぞは瞬殺しゅんさつできる」

「お前のような下界の虫ケラなんぞに、私が負けるハズないだろう。バカも休み休みに言え」

 パーカーは意外と口が悪かった。

「なんだと、やるかテメエ!」

 加藤は刀を抜いてかまえた。

 その時

「お待ちなさい」

 と、パーカーの後ろから女性が声をかけて来た。

「これは西王母せいおうぼ様。へんてこりんな男が来たので、今から追払おっぱらうところです」

 パーカーは急いで振り向いて、西王母にお辞儀じぎをする。

「その、へんてこりんに私は用があります」

 西王母せいおうぼと呼ばれる女性が言った。

「この、へんてこりん、にですか?」

 パーカーが確認する。

「その、へんてこりん、にです」

ーーへんてこりんって、もしかしてワシの事かなぁーー

 と思いながら、加藤は西王母せいおうぼの姿を見て絶句ぜっくした。

「まさか、アンタは!」

「やはりおどろきましたか」

 予想通りといった西王母せいおうぼの反応である。

 加藤がおどろくのも無理はなく、高価な衣装で着飾きかざっているものの、西王母せいおうぼは虎之助にうつしであった。

「なぜだ、なぜアンタは虎之助にそっくりなんだ」

 さけぶように質問する加藤。

「それは、あのむすめやみ西王母せいおうぼだからです」

 西王母せいおうぼは静かに答える。

「虎之助がやみ西王母せいおうぼって。本当ですかそれ?」

「そうでござる。いや、間違まちがえた。そうです」

 西王母せいおうぼは少し、言い間違まちがえた。

「あれっ、今『ござる』って言いませんでしたか」

「言ってません。拙者せっしゃはそんな事、言ってません」

 西王母せいおうぼ否定ひていするが

「今『拙者せっしゃ』って言いましたよね?」

 と、また加藤にまれてしまった。。

「私は、そんなこと言いません。変な言いがかりはめて下さい!」

 少し動揺どうようする西王母せいおうぼ

「コラッ、お前!西王母せいおうぼ様に対して無礼ぶれいだぞ」

 2回も西王母せいおうぼんだので、パーカーに怒られてしまった。

「いや、そう言われても、聞こえたんだから仕方しかたないだろ」

「聞こえたとしても、聞こえていないりをするのが礼儀れいぎだ。この下等かとうなウジ虫が」

 相変あいかわらずパーカーは口が悪い。

「およしなさいパーカー、お客様に対して失礼しつれいでござる」

 パーカーをたしなめる西王母せいおうぼであるが、なぜか語尾ごびが「ござる」なのであった。

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