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転生したらAカップだったでござる  作者: 渡辺 孝次郎
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銀鬼VS虎之助

 DSP[デビルスペシャルポリス]の宿舎しゅくしゃに、岩法師いわほうし左近さこんかついでもどって来た。

「どうしたの?左近君、血が出てるじゃない!」

 桜田刑事さくらだけいじが、あわてて飛んで来た。

牛鬼ぎゅうきにやられた。拙僧せっそう応急処置おうきゅうしょちはしたが重症じゅうしょうだ、手当てあてをたのむ」

「とにかく、警察病院けいさつびょういんへ運びましょう」

 桜田刑事は車に左近を乗せると、岩法師と一緒いっしょに警察病院へと向かった。

「それで、アナタは大丈夫だいじょうぶなの、怪我けがしてない?」

拙僧せっそうは大丈夫だ。ヤモリからの知らせを受けて、けつけたのだが。『姿すがたくらまし』を使って左近を助けるのが精一杯せいいっぱいで、牛鬼ぎゅうきと戦うどころではなかった」

「それが賢明けんめいよ。牛鬼ぎゅうきのことは、左近君を病院に運んでから考えましょう。一応いちおう安倍顧問あべこもんには連絡れんらくしておくから」



 桜田刑事と岩法師が左近を病院へ送り届けたあと、宿舎しゅくしゃもどって来ると、ちょうど虎之助とらのすけ小太郎こたろうが帰って来た。

「ただいまでござる」

「あれ、お2人さんも出かけてたんですか?」

 と、小太郎が聞いて来た。

「左近君が牛鬼ぎゅうきおそわれたんで、病院に連れて行ってたところよ」

「左近さん重症じゅうしょうなんですか?」

 小太郎は心配そうである。

「命に別状べつじょうは無いらしいけど、しばらく入院することになるわ」

「左近は、入院ばかりしてるでござるね」

 虎之助は、興味きょうみなさそうにスナック菓子がしを食べている。

「鬼という者は、そんなに強いのか?」

 岩法師より先に帰っていた狂四郎きょうしろうが、たずねた。

牛鬼ぎゅうきは特別よ。普通の鬼なら左近君が負けるはず無いもの」

ーーそうなのか。俺も早く鬼と戦ってみたいーー

「まあ、拙者せっしやより強い鬼はないから、心配しんぱいしなくて良いでござるよ」

 虎之助が狂四郎に向かって説明する。

ーーたしか桜田刑事が、このはバカだって言ってたな。可愛かわいむすめだが、真面目まじめに話を聞くのはよそうーー

 狂四郎は、自分のアホさをたなに上げて、バカである虎之助は相手にしない事にした。



 オフィスで働いている黒瀬くろせは、金鬼きんきと虎之助のことが気になっていた。あれから2日たっても日下くさか部長は出社しゅつしゃして来ない。

 給湯室きゅうとうしつでコーヒーを入れていると、突然とつぜん誰かにむなぐらをつかまれた。

「誰だ」

 見ると、日下くさか部長である。

「黒瀬君、話がちがうじゃないか」

「どうしたんです部長、休まれていたのでは?」

「あれほどの化物ばけものとは聞いて無かったでゴンス!あれは人でも鬼でも無い、おそろしいバケモノだ。両手と下半身かはんしんり落とされて死ぬ所だったでゴンス。今朝やっと体が再生できたところでゴンス」

ーー出たっ!5年に一度出るか出ないかの、日下くさか部長の超不機嫌ちょうふきげんな時にしか出ないゴンスぶしだーー

 黒瀬はひさしぶりに、ゴンスぶしを聞いた。

「でも、金鬼きんきである部長とり合ったんでしたら、相手のむすめも無事ではないでしょう?」

「なにをぼけた事を言ってるんでゴンスか君は!僕は、かすりきず一つわせられなかったよ。もう、トラウマになって、しばらく若い女がこわくなったでゴンス」

「それは災難さいなんでしたね」

「正確な情報じょうほうをくれないと、こまるでゴンスよ。僕は、まだ死にたくないでゴンスから」

ーーこれほどまでに金鬼きんきおびえさすとは、予想よそう以上におそろしいむすめだーー

 なやみのたねであった虎之助が無事で、なぜか安堵あんどする黒瀬であった。



 大阪府警おおさかふけいの近くにある、家電量販店かでんりょうはんてんヤマダカメラの一階フロアに、夕刻時ゆうこくどきになると、ほぼ毎日のようにあらわれる少女がいた。

 フロアの内壁うちかべかがみになっており、少女は鏡にうつった自分の姿すがたを見ている。

 鏡であることは虎之助も承知しょうちしているのであるが、全身がハッキリうつる、この場所が気に入っていた。

 なぜなら、千代ちよに会えた気がするからである。

 服装ふくそうは当時の千代とはちがうものの、かがみの中には千代ちよ本人がるように思える。

 背丈せたけ五尺二寸ごしゃくにすん(約156cm)ほどで、華奢きゃしゃな体型であり、外見がいけんは千代そのものである。

 ただ一つかなしいかな、Dカップはあったと思われる千代とはちがい、バストが何故なぜかAカップである、という事である。

 しばらくかがみながめてから、虎之助は宿舎しゅくしゃへの帰路きろへと向かう。

 そんな虎之助を、けて来る男がいた。

 普段ふだんであれば気配けはいで、すぐに気が付く虎之助であるが、千代に会った余韻よいんが残る今は、まったく気づいていない。

 男の正体は、銀鬼ぎんきと呼ばれる凶悪きょうあくな鬼である。

 銀鬼ぎんきは虎之助に対して、復讐ふくしゅうしんに燃えていた。

 用心ようじんして、殺気さっきを消しながら付けて来る。虎之助が路地ろじに入ると、銀鬼ぎんき背後はいごから音もなくおそいかかった。



 鬼塚おにずかが自分のオフィスでアイコスをっていると、川島かわしまが入って来た。

「社長。日下くさかから連絡れんらくがありましたよ」

 鬼塚は、みをかべながら

「やっと、あの小娘こむすめったか?」

 と、笑顔で聞いてきた。

「それが、一方的いっぽうてきにやられて、逃げて来たそうです」

「なんやて!」

ーーそんなアホな、あの金鬼きんきが一ー

「あと、長期休暇ちょうききゅうかを取って、しばらく旅に出るゴンス。と言ってました」

「あちゃ、あいつがゴンスって言い出したら、もうダメや。わりの者をさがさなアカン」

「しかも、今日、自分のデスクから、私物しぶつを持ち帰ったそうです」

「あいつ逃げやがったな」

「しかし、金鬼きんきほどの鬼が逃げ出すって、いったいどんなむすめなんですかね?」

「なんや、見た目は可愛かわいらしいらしいで。としはウチのむすめと同じぐらいちゃうかな」

「じゃ、高校生ぐらいですね」

「そうやな。むすめも高校ぐらいになると、あつかいずらくなって来てな。学校から帰ったらすぐ部屋にこもって、スマホばっかりさわっとるわ」

「ラインやらSNSちゅうヤツですかね」

「たぶん、そんなんやわ。親にスマホ代を出させといて、愛想あいそないでしかし。先月なんか3万円ぐらい請求せいきゅう来たで」

「それは、ちょっと高いですね。ゲームか何かに、課金かきんしてるんちゃいます?」

「そやろ?でも、注意しよう思ても、なかなかむずかしいねん」

「女子高生ともなると、うかつに部屋に入れませんもんね」

「ほんまやで。小さいころは、なついてたんやけどな」

「彼氏とか連れて来たら、どうします?」

いややな。タトゥーとかピアス付けてるやつやったら、しばいてまうわ」

「でも、彼氏しばいたら、むすめさんおこるでしょう?」

「そうやねん、どうしょうか?」

恋愛れんあいって、まわりが反対したら、よけい熱くなりますから物分ものわかりの良い父親をえんじた方がいいですよ」

「そうやな。君トコは、どうやねん?」

「ウチは、男の子が2人なんで、そんなに気は使わないですね」

「やっぱり、男の子の方が楽なんかな」

「そうでも無いですよ。妻からは、2人とも言うことを聞かないって、いつも愚痴ぐちられてます」

反抗期はんこうきやな」

「そうですなぁ。って!ちがいますよ、金鬼きんきの話をしに来たんですよ!」

「ああ、そうか。金鬼きんきの話をしてたんや」

「あのむすめどうしましようか?」

「どうするって言われても。そや!金鬼きんきには弟がおったやろ、たしかギン……何とか」

銀鬼ぎんきですよ。ギンまで言ったら、もう出るでしょう」

「そう、その銀鬼ぎんきに、仇討かたきうちさせたらどうやろうか?なんや弟の方も、そうとううでが立つちゅう話やで」

「そうですね、かなりの手練てだれだとは聞いています。それに銀鬼ぎんきは兄の金鬼きんきと仲が良いですから、かたきちたいはずです。じゃ、さっそく手配てはいします」

 川島が上着うわぎのポケットから、スマホを取り出すと同時に着信ちゃくしんがあった。

「はい、川島です」

 川島は話し出した。

「なんだと!ふざけた事ぬかすな!」

 川島がスマホに向かって怒鳴どなっている。

「わかった、社長には、俺から報告ほうこくしておく」

 電話をえると、すぐに「どないしたんや?」と鬼塚が聞いてきた。

「私の部下からの報告ほうこくによると、銀鬼ぎんき独断どくだんれいむすめおそって、返りちにあい、命からがら田舎いなかに逃げ帰ったそうです」

「だめダメやん」

 鬼塚と川島の話し合いは、おどろくほど無駄むだであった。



 宿舎しゅくしゃの夕食の時間には、入院中の左近をのぞいたメンバーがそろっていた。

 狂四郎きょうしろうは、どうしても昼間の稽古けいこ納得なっとくがいかないようで。

岩法師いわほうし。もう一度、俺と勝負しょうぶしてくれ」

 と、たのんだが

ことわる。左近が入院中に、怪我けがでもされたらDSPの戦力が落ちる」

 岩法師に、もっともな理由でことわられた。

「そんなに稽古けいこしたいのなら、拙者せっしやがしてやっても良いでござるよ」

 虎之助が、夕食を口にみながら提案ていあんしたが

「ダメですよ。姉さんを相手にしたら、狂四郎が死んでまいますやん」

 と、小太郎が止めた。

「そうでござるね。拙者せっしやの強さは、とらの子もビックリでござるからな」

「さすがは姉さん、上手うまいこと、言いはるわ」

 小太郎と虎之助は、ゲラゲラ笑っている。

ーーこの2人はバカだから何を言ってるのか、さっぱり分からんが、岩法師はあなどれんーー

稽古けいこより、お前たちはいくさの多い時代に生まれたゆえ、勉学べんがくをする機会きかいが無かったように思う。それで、拙僧せっそう寺子屋てらこやのように、みんなに勉学べんがくを教えようと思うのだが、どうであろう?」

 と、岩法師が提案ていあんして来た。

「それは、ありがたい。よろしくたのむ」

 狂四郎はうれしそうである。

「俺も、お願いします。まだ、現代げんだいの事が良くわからなくて」

 小太郎もり気である。

拙者せっしやは、かしこいから大丈夫だいじょうぶでござるよ」

 虎之助だけことわった。

ーークッ!こいつ一番バカのクセに。仕方しかたないが、おだててみるかーー

「いや、かしこい虎之助こそ、名誉めいよ教授きょうじゅとして参加してしいのだが」

 岩法師は、こころにも無いことを言ってみた。

「そうでござるな。拙者せっしや知識ちしき若輩じゃくはいの者につたえて行くのも、博識はくしき者のつとめでござるな」

ーーやはり、バカなだけあってだましやすいーー

 むろん岩法師には、虎之助を教授きょうじゅにするつもりは無い。みんなと一緒いっしょ生徒せいととしてあつかう予定であるが、とりあえずは出席しゅっせきさせる必要ひつようがある。出席しゅっせきさせてしまえば勉強にはなるだろう。

 ひょいと、虎之助が狂四郎の夕食のアジフライを1つ取った。

「なにしやがる!」

 狂四郎は、当然とうぜんおこリ出す。

「モグモグ、拙者せっしやはボスだから、1つもらうでござる」

「俺は、お前の子分じゃねえぞ!」

 虎之助は、狂四郎がおこっている事などまったく気にせず、食べながら狂四郎のアジフライを、もう1つ取った。

「このアマ!もう、かんべんならねえ。くらえ!新田家仙道にったけせんどう透視術とうしじゅつ』」

 狂四郎が、両手の指を丸めて眼鏡めがねの形を作り、虎之助に透視術とうしじゅつを使おうとした。が、その瞬間しゅんかん

ボカッ!

「女に、そのじゅつを使うな」

 岩法師が、岩のような大きなこぶしで、狂四郎の頭を、おもいっきりなぐった。

「くふっ!」

 狂四郎は、そのまま朝まで失神しっしんした。

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