なんで私は忘れたんですか?
私はふと、自分が記憶を失ったきっかけが気になった。
ので、女官さんに聞いてみることにした。
「女官さーん。私が倒れたってゆーパーティーってどんなだったんですか?」
「!!…パーティー、ですか」
女官さんは言いにくそうに固まった。
…なんか、事故とか?
「パーティーは…殿下とヴィヴァーチェ様との決別でした」
なんだその噛みそうな名前は。
「もともと、ヴィヴァーチェ公爵令嬢様と王子殿下は政略的な婚約だったため、反りが合わなかったのですが…そこに…」
ああ。
「私が出てきたんですね」
「…そうです。殿下は、下町での視察からお帰りになられた際にクラリス様に一目惚れをされました」
まさかの出会い下町。
「そこからは…有り体に言うと…泥沼でした」
あ、女官さんが歯の衣を取った。
「すぐに殿下はクラリス様を王宮に連れてきて、住まわせました。最初は反発があちらこちらでございましたが、クラリス様のお人柄により、瞬く間になくなり…」
王子、行動早い。
やっぱり私が王宮に住んでたのは、王子の口添えだったのか。
ってか、お人柄が認められたって、何やったんだよ私。
「ところが、ヴィヴァーチェ様からすれば、簡単に引き下がれる話ではありません。拗れて絡まった人間関係は、そう簡単には修正が効かなくなり…」
凄い。女官さんが今までで一番生き生きしてる。
「人を味方に着けたクラリス様と、権力しか寄りどころのないヴィヴァーチェ様。どちらが勝ったかは、言うまでもありません」
まあねぇ。
権力ったって、肝心の動く人がいなきゃねぇ。
種の植わってない畑に水をまくようなもんだ。
…え? 微妙に違う?
「しかし、戦いとは思いもよらないものです。全てを失ったヴィヴァーチェ様は、賭けに出られました。クラリス様を秘密裏に亡き者にしようとされたのです」
おお!
「しかし、計略は殿下によって防がれます。悪事は全て露見し、ヴィヴァーチェ様はお縄につきました」
……あの殿下にそんなこと、よくできたな…。
「その、露見した場が、例のパーティーだったわけです」
ほぇ? あ、そう繋がるの!
「ヴィヴァーチェ様は、悪事が全て明るみに出たとき、苦し紛れにクラリス様を王宮の大階段から突き落とされました」
…あの大階段から…。
今日見たけど、あの階段、高さ、余裕で人10人分はあったぞ…。
……よく死ななかったな…。
でもそうか。それで記憶喪失になったわけね。