なんでそんなに怯えるんですか?
一晩寝たら記憶が戻って……いなかった。
まあそりゃそうか。
世の中そんなに簡単に出来てないよね。
取り敢えず私は身支度を整えるべく、ベッドをおりた。
クローゼットを開けると、なん十着ものドレスが収納されていた。
…生活感漂うね。本当に私、王宮に住んでるんだね。
…家族とか、どうしてるんだろ。
扉に付いていた鏡が目に入る。
…わあ、綺麗な人。自分だと分かっててもそう思った。
大きなアーモンド形のピンクの瞳。小さくてふっくらした唇。長くて艶やかな金褐色のピンク髪。
顔も身体も全てが整っている。
まるで、人々の理想を詰め込んだみたい。
…これで性格も良かったとか…。
周りの人間も、人ができてたんだね。
私だったら、確実にアンチにまわる。
コンコン
「失礼致します」
扉が鳴って、女官さんが入ってきた。
「お目覚めのお時間で…ッ!!」
「あ、もう支度終わりました」
私はもうドレスを着て、髪まで結び終わったとこだった。
それにしても…女官さんまで付いてるなんて。
女官さんって、貴族出でしょ?
庶民に付くとか、屈辱じゃないのかね?
「どうやったのですか!? コ、コルセットは…」
「適当にやったら出来ましたよ?」
「その髪…」
「これですか? 何となく、こんな髪型が良いかなって思いまして」
これは、確実に昔取った杵柄だろう。
「……」
女官さんは驚いて目を見張るばかりだ。
「因みに女官さん」
「…ッ!! は、はい! 何でしょう!!」
…そんな驚かなくても良いでしょーに。
「私の両親って、今どうしてるんですかねぇ?」
「え!? …あ、ク、クラリス様のご両親は他界したと、伺っております…」
ふーん。
あ、それで王子から集ろうと思ったのかな?