なんでそんなに可愛いんですか?
あれから、一ヶ月。
ある、パーティーでのことだった。
国王に参加を命じられたから、何かあると思ったけど。
「わが愚息、マエストーソとクラリス嬢の結婚を発表する」
まさかこんなことだとは思わないよねー。
…どうでも良いけど、殿下の名前ってマエストーソっていうんだねー。
はらほら、みてみて。
みんな、驚き仰天してるよー。王子殿下も含めてねー。
…って、知らされてなかったんかい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
流石、国王陛下が主催なだけあって段取りも準備も超早かった。
なんと明日、結婚式をするらしい。
…明…日……明日…明、日?
いやぁ早いねえ。
コンコン
ん?
「私だ」
おお!殿下だ!
殿下がノックを覚えた!
「…さっき、父上から婚約発表があったが…」
うんうん、あったが?
「私は、お前が戻るまでは絶対に愛さないからなッ!!」
バタンッ!
…oh…びっくりするくらい予想通りの要件だった…。
まあねぇ、自分が男だったとしても、こんな女は愛さないしねぇ。
こんな女と結ばされる殿下に、同情すらおぼえるよ。
まあ、王族ってそんなもんだとも思うけど。
そんなこといちいち報告に来るなんて……びっくりするくらい生真面目な人だ。
それにしても、あー…………。
私の頭を悩ませるのは………。
うん、取り敢えず、お姉様に癒されにいこうか。
うん、そうしよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お姉様ぁー!私、明日結婚なんです!」
「ああそう良かったわねッ!というか、私にわざわざ言いに来るその神経、どうかしてますわ!」
私が向かった先は例の牢獄。
私は、何度も出ることを推奨したのに、ずっと意固地になって入ってる。
んもー、頑固なんだからぁ☆
まあ、ここ、牢獄って言っても、檻がある以外は、普通のスイートルームって感じだから、不便は無いだろうけどね。
流石、公爵令嬢。伊達じゃない!
「私、マリッジブルーです!お姉様、慰めて下さい!」
「貴女、言ってることが本気か冗談か分かりにくいんですわ!」
「失礼ですねぇ。私はいつも、この上なく真面目です!」
「その言い様がふざけて聞こえるんですわ!」
私は、お姉様と会話し、全力で癒された。
そしてその後、何気無い口調で聞いてみた。
「…お姉様は、殿下のこと、好きですか?」
すると、概ね予想通りの答えが返ってきた。
「あんな屑、本気で好きな人は貴女くらいですわ!」
その真顔……いやぁ、本当に合わないんですね。
「では、私のことはどうですか?」
お姉様は目を見開いた。
虚を突かれたとでもいうかのように、呆然と私を見つめてきた。
「なんですか?」
私は、慈愛の笑みを浮かべてみる。
「…ッ、貴女…」
あー、真っ赤になっちゃって。
素直じゃないところ、本当に可愛いですね。
「…ッ、もう! ええ、ええ、私だって貴女が好きでしてよ!」
今度は私が目を見開く番だ。
じっと、お姉様のアメジストみたいな瞳をみつめる。
「なんですの、その驚きの目は!
…私だって、自分に自分で呆れてますわよ!」
慌ててるお姉様を、私は温い目で見ていた。
ふふ、私の欲しい言葉をくれるのは、今では貴女だけですよ…。
…出来れば、もっと違う形でお会いしたかった…。




