なんでそんなに薄情なんですか?
突然だが、この国は絶対王政だ。
国王が白と言えばカラスも墨も白くなるし、黒と言えば雪も雲も黒くなる。
今、この国を仕切っているのは、あの殿下のお父上である国王陛下だ。
現在の王家は、殿下と陛下のお二人しかいない。
分家である公爵家を募ればもっといるらしいが、陛下の王妃様がお隠れになって以来、正式な王族はお二人だけだ。
そんな、かなり偉い国王陛下に…私は今、拝謁している。
「貴様が、クラリスか」
「左様にございます」
「記憶喪失というのは、誠か」
「はい、陛下」
国王陛下は、殿下とは比べ物にならないほど威厳に満ちている。
「にこりともせぬな、貴様は」
「…陛下のご威光が、この目には眩し過ぎますゆえ」
「ふん、良く回る口だ」
陛下はそう一蹴した。
「貴様、これからどうする」
「はて、何のことにございましょう」
「とぼけるな。私は忙しい身だ。このままなら、あれは貴様を愛さないだろう。然れば、無為に国税を傾ける訳にはいかん。貴様、どうするつもりだ」
わー、ついにきたぁ。
そりゃまぁ、王子に愛されてもいない庶民を王宮に置くわけにはいかないだろうけどさ。
私を称えてたらしいのに、人格変わったくらいでねぇ。
薄情なこって。
というか、これ、国王がわざわざ聞くことか?
あれとか言ってたし、国王と殿下も反りが合わないのかな。
「…私は、孤独な身にございます。見放されるとあれば、藁にだって縋りましょう」
「その言葉に偽りは無いな?」
「ええ」
こうして会談は終わった。
うーん、悪魔に魂を売った気分だね。
さて、これからどうなるかな。




