円周率はπでいけの時間
お久しぶりでございます(╹◡╹)
「私の名はニコっ!」
急に現れた女。なんの前触れも無く、、、とは言えないが全く存じあげないアホそうなやつが突然部室へと入って来た。
その女は初めて動物園に来た幼稚園児のように物珍しそうに部屋を眺める。
「なにこのひつじ!?お金持ちっぽい〜!」
「おいアホ。この人はひつじじゃない。執事だ」
「へ〜、ジンギスカンじゃないのかー」
ニコに続いてツッコミながらゆったりハラノが帰ってきた。
「誰だこいつ、お前が連れてきたのか?!」
「ああそうだが」
「お前何かいい事を思いついたって出て行ったけどもしかしてこいつの事か?!」
確かハラノはカルクから少しのざっくりしすぎた状況を説明を受けいいことを思いついたと言って出て行ったのだ。その時、考える様はまさに天才を感じさせるもので、何かこの状況の改善点をI.Q 140の力で解決してくれるのだと思っていたのだが、、、
「お前らがちょっとすると暇になると思ってな。暇をカオスに仕上げる仕事人を連れてきたのさ。」
「天才の持ち腐れだ…」
「でも確かにニコさんも面白い方ですし、いいことですよ?」
カルクは決して否定しているわけではないが、フォローしてもらっているニコは空気清浄機の蒸気を鼻から吸い込み遊んでいる。そんな姿を見ているとカルクの情けが哀れに見えざるを得ない。
「そろそろ落ち着けよなっ!」
マストが落ち着かず部屋をうろちょろするニコを軽々と持ち上げソファーへ座らせる。
「もぉ〜マストさんもなかなか大胆ねぇ〜」
アホとは言え女子の体を触ってしまったマスト。
「そーゆーのじゃねぇ!…てか、なんで俺の名前知ってんだよっ?!」
体を触ってしまったことに対して頬を赤らめたマストだが、名前はマストから告げた覚えはない。なんならちゃんとハラノにも自己紹介していないのにニコが知る由もない。
「そんなの覚えているからに決まってるでしょ??」
「え?」
マストは一度もこの女とは会ったことがない。今が完全に初対面のはずだ。
「あー、言い忘れていたがニコも私と同じ特別クラス。お前たちが言う怪物クラスか?」
特別組。またの呼ばれ名は怪物クラス、化物クラス。このクラスに所属する生徒は曰く付きだ。このハラノのようにとてつもない賢さを持つ人や人並みではない運動能力を持つ人などとにかく曰く付き。
「と、言う事は…」
「その通り。ニコ。江戸川ニコは絶対的な記憶力の持ち主だ。」
ハラノが連れてきた時点で薄々は気づいてはいたもののこのアホそうなニコが記憶力の天才だとは思えなかった。
「顔と名前を全員覚えたら友達ができると思ったけどなんだか気味がられるの」
「それはそーなるな」
乙女のような悩みではあるが、知らない人が名前も顔を初対面にもかかわらず知っているとなれば気味がられるのも当然だ。
「でもあれだなー。暗記系のテストは満点なんて楽勝だな」
「勿論0点だよ!」
「はあ?!」
絶対的な記憶力をもってすれば暗記のテストなんて楽勝にこなせるはずだ。
「こいつはやる気のねぇ事は全く覚えないんだよ」
「だって〜勉強やだもんっ」
どうやらこちらも宝の持ち腐れになってしまっているだろう。どうして才能を持つ人はその力を持て余してしまうのだろうか。
「でも円周率はずっと言えるよー!えーとね…3.14159265358979323846264338327950288419716939937510582097494459230781640628620899862803482534211706798214808651328230664709384460955058223172535940812848111745028410270193852110555964462294895493038196442881097566593344612847564823378678316527120190914564856692346034861045432664821339360726024914127372458700660631558817488152092096282925409171536436 789259036001133053054882046652 1384146951941511609433057270365759591953…」
「もう止めねぇよ…」
円周率を延々と唱えるニコ。最初は自慢そうに暗唱していたのだが、10桁を超えたあたりから顔は真顔になっていき、今では坊さんのように時折息をついては数字を唱える。
そもそもこの円周率を聞かされたところで確かめようがないのだ。知っていたとしても10桁程度まで。そこからは未知の領域。嘘っぱちの数字を並べられても分からない。
マストたちはこの数字をBGMにしながら話を進める。
「まぁあれだな。この記憶力があれば人探しもはかどりそうだ。」
「そうですね。顔と名前が分かっているのなら意外と早く済みそうです。」
幸運にも同級生の顔などの特徴、名前を完全に暗記しているニコがいれば、マストたちが覚えている相手プレイヤーの特徴を言えば個人を特定はできなくとも数人に絞ることが可能になる。
「こんなに円周率が言えるなら期待値大だな。」
「とりあえず一安心ね〜」
話がまとまり会話が止まる。3人は一息をつく。ただ聞こえてくるのは不規則に並べられる数字だけ。
「いい加減うるせーよっ!」
「うわぁっ!?」
マストは無表情で唱え続けるニコの目の前で勢いよく手を合わせ叩き眩ませる。
「いつまでやる気だよ!?てか、どこまでおぼえてんだ?!」
「んー数えた事ないけど30分間くらい?」
「「30分?!」」
凄いとは把握していたつもりだが桁違いの記憶力にマストとカルクは声を揃えて驚く。
「30分ってまず単位間違えてるだろ!てかどうやってそんなにも覚えたんだよっ!」
「サイトに10万桁まで書いてあるサイトがあったからそれを一回で覚えたっ!」
100000字を一度で覚えるという事はとてつもない事だということは言わずともわかるだろうがどれだけ凄いのかを一応説明しておこう。
人には瞬間的に覚えられる短期記憶の数が存在する。それが《マジカルナンバー》である。そのマジカルナンバーは一般的に7±2と言われている。つまりは瞬間的に覚えられる桁数は5桁から9桁までという事である。ニコは単純計算で一般人、もしくは記憶力に優れている人の100倍以上はゆうに越えていることになる。
「100000桁!?」
「一時期流行ったじゃん?!その時覚えたの!」
「確かにあったなーそーゆーやつ。なんでかあの時は無限に続く数字に変に魅力を感じたもんな」
「俺はそんなことはしなかったがな」
「賢いアピールか?」
誰もが小学4年生あたりで知る円周率は3.14…からなる無限少数である。私も円周率を何処まで覚えれるかを級友と競ったものだ。ハラノはそれが恥ずかしいのか、競い合う友達がいなかったのか、はたまたキャラ作りなのかは分からないが謎の意地を張る。
「おいマスト、この小説の作者はでしゃばりなのか?」
ちょくちょく入ってくる作者の言葉に少し気が立ったのだろうか。どこか苛立ちの顔をしている。
「仕方ないんだハラノ。ここの作者は自己顕示欲の塊だから、隙さえあれば直ぐに入ってきやがるんだ。」
「そうなのか、つまりは作者の知能指数が可哀想だということか…」
「おいっ!あんまり言い過ぎると!!」
何かを察したマスト。この小説ではたった一つのタブーがあるのだ。それは…
「作者への愚弄。それはここの掟を反すること。直ちに排除せよ。」
突然緊迫した空気の中、さっきまでずっと静かだったじぃはロボットのようにそう発した。すると、ニコが元気よく続けて言った。
「マスト、ハラノ没シュート!!」
これが作者からの罰。マストとハラノの座っていたソファーが突然ぱかっと開き果てが見えない闇へと落ちていく。
「「なんで穴がぁぁぁああ!…」」
勢いよく落ちていく2人は声を合わせて叫ぶが既に穴が閉じられたソファーからはその声は聞こえないのだった。
読んでくださりありがとうございます!
次回は土曜日にはあげられると思います(多分
ずっと出そうと決めていたニコがついに登場できてとても嬉しかです(╹◡╹)このキャラには当分ボケを担当していただくつもりですw
P.S.
私はとてもと言っていいほど忙しいんです。だから小説なんて書いている暇なんてないんです。後書きなんて書く暇もないんです()




