手の内は見せろの時間
2日連続投稿できました〜(╹◡╹)
実に5000戦。今までにゲーム《きのこ胞子の大冒険》でマストとカルクが勝負をした数である。結果はどちらも2500勝2500敗で引き分けの状態になっている。
最初はそのゲームをやり込んでいたマストが圧倒的な力を見せつけたがカルクが徐々に力をつけ今やマストと同じくらい、いや、それ以上の実力を持っている。だがまだまだマストも負けていられない。なんとかカルクに食らいついて今の戦歴に至る。
場所は変わって今、勝ち越し掛けた戦いの幕が上がろうとしていた。
「次も俺が勝つぜ」
「"次は"でしょ?それに私が勝つのよ?」
その会話の様子は実におかしいものだった。1人は弓持って戦闘態勢。もう1人は戦おうというのにもかかわらず尻をつけて座っている。これは決して余裕を奢っているわけではない。マストにはこの負けられない戦いにおいてしっかりとした作戦があるというのだ。
「それにしても座っているけど、、、私の勝ちでいいのかしら」
カルクはそういうと容赦なく弓を大きく構える。今まで見た矢よりもでかく感じられるのは気のせいだろうか。いや、確かにでかいというか大きく見えるというかとてもオーラの強さがさっきまでとは違う。こんなのをまともに受ければ3発程度でノックアウトだろう。だが、マストはどこか満足げな表情をしていた。
「ちゃんと狙えよー?」
「言われなくてもそのおかしい頭を射抜いてあげる」
「頼むわ…」
マストは少し笑ってみせる。
怪しげに笑うマストを見てカルクは躊躇なく矢を放つ。矢はまた二手に分かれ、、、いや、それ以上だ。速度も以前に比べ増し正確に数える暇もない。しかしながらマストは座ったまま全てを覆うかのように巨大な防御壁を展開する。そして全ての矢はその壁によって弾かれ落ちていく。
「弱いなぁーこんなもんなのか〜?」
マストの表情がどんどんと壊れていく。まるで遊び足りないピエロのようだ。
➖マスト平気か?
モモキもつい心配になってしまった。突然座りだしたりとさっきの不気味な表情と様子が変だ。
ー安心しろって、、演技だよ、演技。
➖演技?!
一杯食わされた。しかしその演技には何の意味があるのか。そうモモキが考えているとマストが伝えてくれた。
ー俺らは友達だ。多少たりと手加減はしてくるだろ?だから変な奴を装えば少しは本気でくるって魂胆だ。
➖ん?そうだとしても、相手を本気にしたらまずいだろ?
いくら攻撃を防げるからと言ってなにも相手を本気にさせる必要はないと思うが…
そう会話して考えている間にもカルクの攻撃は手を休めない。その度にマストは障壁を築き防ぐ。しかも飛んでくる攻撃は工夫されていた。例えマストが座っているからと言って反撃の隙を与えないよう途中で別れて飛んでくる矢はそれぞれ速度や方向を変えている。これはヴァルの指示か、それともカルク自身の考えか。どちらにせよカルクの妄想力を適応する能力がこの短時間で上がっているのがわかる。
「その程度なの〜?んじゃあープレゼント」
マストは演技を続ける。そして左手で矢を全て防ぎながら右手で火の玉を投げつける。これも妄想力だ。
マストの攻撃をカルクは攻撃の手をやめすぐ様避けた。火の玉は後方にベクトルを変えず窓にぶつかり軽い爆発を起こす。その衝撃に窓が開く。
➖カルク。あの攻撃は避けなくてもいい。あれは妄想力だ。効きはしない。
ーありがとうヴァル。なら安心だ。
お忘れかも知れないがマストやカルクらのプレイヤーは体力がある。その体力がゼロになれば負け。体力は各チームが持つ守護者による攻撃、もしくは妄想力を使う際に消耗する。つまりはそれ以外の攻撃。妄想力による攻撃は体力になんら影響ない。逆に妄想力で攻撃しようとしている方にダメージがある。
「もう小賢しい真似は通用しないぞマスト」
そう言ってカルクはまた攻撃を再開する。だがマストもやめなかった。左手で攻撃を防ぎ、右手で火の玉を飛ばし続ける。
マストにとって妄想力による体力の消費は痛くもない。マストは妄想力をどれほど使おうと全くと言っていいほど体力を消耗しない体質らしい。
妄想力による体力の消耗は個人差がある。そのため普通は妄想力を使うにしても限界があるのだ。
マストが飛ばす火の粉は全く避けないカルクに直撃する。勿論ダメージはない。特に言えば顔に飛んでくる火の玉と直撃後の爆破が視界が少々遮る事だろうか。
その状況はしばらく続いた。すると異変が徐々に現れてきた。
「どうした?威力もなければコントロールができてないぞ?」
矢を放ち続けるカルクを見ると息を荒げていた。これがマストの狙いだ。
➖カルク!妄想力の使いすぎだ。このままじゃ…
ー分かってるけど…どうすれば。。。
良い案はなくどんどんと威力は衰えていく。マストは軽く矢を防ぎ火の玉を飛ばす頻度が増えていく。そしてその玉が直撃する度に視界が遮られる。
「これでも喰らえ!」
そう言ってマストが先程よりも大きな火の玉を連続で何発も繰り出す。その全てはカルクの顔付近へと走る。
カルクの視界は完全に火の玉に覆われまともに弓で狙えない。どうにか振り払おうと弓で火の玉を弾くと、当たった瞬間に爆発する。やはり大きいだけあって火力も充分だ。その破裂音に思わず身を引いてしまう。
カルクはすぐ様態勢を立て直し弓を構えるがそこにマストの姿は見えなかった。
「どこ!?」
さっきまで座っていたマストが突然姿を消した。一瞬これも妄想力かとも思えたがそんな能力は使えないらしい。そう考えて天井に居ないか壁に隠れていないかと見ていたその時だった。
➖カルク!後ろだ!!
振り向こうとすると背後には既に槍を構えたマストが視界の端に映っていた。
「おせぇーよっ!」
マストの突き出す槍はカルクの背中に直撃する。カルクはダメージをなんとか堪えながら弓で槍を払い、ベクトルをずらす。そしてすぐ様間合いを取り矢を放つ。
「逃げさせるか!」
カルクの放った矢はとても弱々しい。妄想力が不足している。さっきの槍を浴びたダメージといい、矢を放つ度に消耗した体力は残り少ない。
マストはこの好機を逃すまいと追撃を仕掛ける。だが、カルクも必死で弓を使って槍を受け止め睨み合いが始まる。
「はぁ…マストもやるねぇ、、、」
「カルクもなかなかじゃねぇか。でも、もうそろそろ限界だろ?」
カルクの体力は限界に近い。肩が荒げる呼吸に合わせて上下に動く。それに比べてカルクよりも多くの妄想力を見せているマストはピンピンしている。しかしながらカルクは引かない。力を振り絞り槍を押し返そうとする。
そんな状況の中、カルクはふと不思議に思った。
「なぁ、マスト。さっきどうやって後ろに来たん…だ?」
マストは言葉では答えず少し目を後ろにやる。マストの一瞬見た先には空いた窓がある。もしやと思いカルクは自分の後ろをちらりと見る。予想通りそっち側にも窓が開いていた。
「そういう事、、か。でも、飛べるのか?」
「あー、相当な妄想力を使うかもしれないがな」
ならばカルクの予想は確信へと変わる。
今までの無意味に思えるマストの行動は全て意味のある行動。座ったのは油断を誘いカルクに妄想力を少しずつ消費する攻撃をあえてさせ体力を削るため。
そして肝になったのは攻撃力を持たない爆破する火の玉による攻撃。最初に撃った火の玉はカルクを狙っていたわけではない。後ろの窓を開けるため放ったのだ。そしてそれを怪しまれないよう撃ち続け、カルクの体力が切れ出したところを見計らい視界を遮るのに十分な火の玉を放ちその隙に立ち上がって窓から空いた窓へと妄想力の翼で飛び背後を取ったのだ。
「多分だけどカルクの考えたことは正解だと思うぜっ!」
正解へと達したカルクを褒美を与えるかのようにマストは有り余る力で弾き飛ばす。
カルクはなんとか態勢を保とうとするが足がふらつく。すぐ様マストは攻撃を仕掛ける。攻撃を見事に弾き防いでいくカルクだが押されている。そしてついに尻餅をついてしまう。
「これで俺の勝ちだな」
「ま、、だ終わってない!」
カルクは残る力を使い矢を放つが簡単に防がれてしまった。
「大人しくしろよ。今日は俺の勝ち!」
マストはそう言って槍を勢いよく振りかざす瞬間、カルクは笑っていた。
「残念、引き分けだぞ…」
振りかざす槍の先がカルクに当たろうとした時だった。
〜キーンコーンカーンコーン〜
響き渡るその音は有無を問わず、元の世界へと引きずり出す。
ーくっそ〜…
最後に放たれた矢。あれが無ければとどめはさせていた。そう後悔するマスト。
完全にステータス的にも実力的にも負けていた。自分の弱さを憎むカルク。
第5001戦目、両者引き分け。
読んでくださりありがとうございます!
まさか2日連続投稿出来るとは…
次回は6月末かな…
P.S.
後書きでストーリー内容話した事ない気がする。なので意地でも話さない(謎のプライド




