個人情報は厳密にの時間
6月中に投稿できて一安心。
ゲーム残り時間5分。
学校内からは発砲音、金属同士がぶつかり合う音が至る所から響いているように聞こえる。他のプレイヤーもどこかでやりあっているのだろう。
屋上から階段で降りたマストたちは降りた先の4階で相手を待った。その際向こうの校舎ではマストに向かってはいない発砲音が聞こえる。この音は間違いなくキルトのペアだ。どこかと戦っているのだろう。そして下の階では大きな金属音。一回一回大きくそして重く鳴り響く。おそらく下にはサグのペアがどこかと戦っている。そしてマストの前には弓を持った少女が立っている。どうやらここでも戦闘が始まりそうだ。
「俺は女でも手加減はしないぞ」
右手で持った槍を相手に向け警告する。だが相手もただの女ではない。全く動じない。
「聞いたことのある声だ。どこか懐かしいな。だが私も本気でやらせてもらう」
マストの声を聞いたことのある人間。もしかすると知り合いかも知れない。それを裏付ける理由はもう一つあった。初めて女の声を聞いたマストだが同じく聞き覚えがある。それもついこの間。しかし顔がわからない以上なかなか分からない。
『貴様、ヴァルの矢から逃れられると思うなよ』
相手の弓からはペアのヴァルの声がする。
女は少し間を置いた後、弓を構えた。普通の弓は背中に掛けた矢筒に入った矢を弦にかけ放つのだが不思議なことに女が何も手にせず弓の弦を引っぱると紫色に光る矢がみるみると創り上げられる。
ーなんだあれ?!
➖あれは妄想力の応用だな。キルトの弾丸もあの原理を使ってるはずだ。
妄想力の応用は実に様々だ。ヴァルとキルトの攻撃方法は妄想力で威力を増している。サヤのペアの場合は現実にないものまでも創り出し、無限の可能性を見出していた。
妄想力自体にダメージは通せないのだがヴァルの弓、キルトの銃から発射されると攻撃力を持つようになる。しかも、妄想力を使っているが故に軌道を変えたり、変形させたりとする事も可能である。それにはそれなりの妄想力が必要となるのだが。まだキルトのペアは使いこなせていなかったが、この女はどうか…
弓を構える今にも放とうとする女に対しマストはじっと構えている。リーチから考えると圧倒的に弓の方が有利だ。
「その間合いで大丈夫か?」
女は勢いよく矢を放つ。放たれた矢は一直線にマストに飛んでくる。
ーキルトの弾よりは遅いな、これなら。。
キルトと戦った時に使用した防御方法。妄想により生み出されたもので防ぐ策だ。これもまた妄想力の応用である。
マストはすぐ様、その時に使用した学校に昔あった投擲板の壁を生成した。だが、、、
「うそっ?!」
作った壁はすぐに砕けてしまった。マストは守られていた壁がなくなり服がはだけてしまったかのように恥ずかしくなってしまう。
『キルトの攻撃より重いなぁ』
『当たり前だ。あんな奴より俺ははるかに強い!そもそもあの連射力で俺より強いってなったらバランス取れないだろうが』
ーついにヴァルもメタ発言しちゃったか…この物語のキャラはメタいやつ以外存在しなさそうだな。
確かに二つの意味で正解だ。一つ目の正解はメタいやつ以外存在していないという事だ。このアホ作者はメタが一種のお笑いだと勘違いしているためだ。
二つ目の正解はヴァルの攻撃は意外と強力であるという事だ。確かにゲームバランスを考えれば連射も可能なキルトに対して単発でしか撃てないヴァルの攻撃は不利である。そのための補正と考えれば納得できる理由である。
「もう終わり?次、当てるよ?」
女はまた弓を大きく引く。二発目がくる。このまま防御を続けていてもきりがない。さてどうしたものか。もっと分厚くて頑丈で攻撃のチャンスを掴めるような方法は、、、
ー試してみる価値はあるな
試すのはサヤのペア、自称ミカンと名乗った男と戦った時に使用した妄想力の応用。
➖次、くるよ。
そして次の瞬間、また勢いよく矢が飛んでくる。しかし前とは少し違った。その矢の軌道にマストは泡を喰う。
矢は途中で二股に分かれふたつの矢が飛んでくる。
ー何じゃこりゃ、聞いてねぇよ!だけど試す価値は、あるっ…
マストはより鉄壁で、薄く、防御時視界を遮らない防御壁を強く想像する。
ー早くっ…
展開するのに少し時間がかかる。現実のものを想像するより抽象的だからだ。そうしている間に矢は休まず二手から向かってくる。
ー間に合え、間に合え!
矢がマストに直撃しようとしたその時。キンッと弾き飛ぶ音がしマストは確信した。
「よっしゃ!完成!」
マストが展開したバリアは薄い赤色に淡く光り、六角形をつなぎ合わせたサッカーのゴールのような模様をしている。そのバリアが見事女の攻撃を防ぎきった。
ーそれにしても重いなぁ…
いくら防げたとはいえ妄想力で守護者による攻撃を防ぐには限界がある。今のバリアでヴァルの矢を防ぐには一つのバリアで完全に防ぎきれるのは十発程度が限界といったところだ。どちらにせよ攻撃に繋げないことには始まらない。その為には距離を縮めること。
「じゃんじゃん撃ってきやがれ!」
マストは子供のような挑発で女の気持ちを逸らせる。だがやはり女は冷静である。弓を構え照準を合わせる。女は静かに笑いながら答えた。
「ご希望答えますよ?」
女は弦から手を離した。又も矢が飛んでくる。マストは淡く紫に光って飛んでくる矢をまた見事に防ぎ弾いた時妙案を思いついた。
ーなあモモキ?
➖なんだ?
ーもう一度聞くけどあれは妄想力を使ってるんだよな??
➖ああそうだけど…
ーならいい手があるじゃねぇか。。。
そうモモキに改めて聞いて何かを確信したマストは気が狂ったのか尻を地に着け足を組み座る。
『何やってんだよマスト!?』
正気ではないマストの行動にモモキは思わず声が漏れてしまう。それにしてもモモキの声に何故か冷静な女が取り乱している。少し気になったが今はそれどころではない。弓を構えて相手に対し尻をつけて座るなんて自殺行為に等しい。
だがマストはどこか余裕そうな表情が見える。
「安心しろって」
そして再び女に対し挑発を仕掛ける。
「これに負けちゃあ恥だなぁ。よーく狙えよ?」
マストは両手で自分をアピールしている。
「そうだな。今回の勝負は私が勝ちをもらう!」
マストの挑発が効いたのか冷静だった女だが冷静さを失ったのか、口調が聞き覚えのある親しげな話し方に変わってくる。
ーやっぱりつい最近聞いたことのあるような、、、あっ!?
頭の中に鳴り響く女の声があらゆる記憶の扉を叩く。そして遂に1つの記憶の扉からの返信が返ってくる。
➖マスト?!もしかして誰かわかっちゃったのか!?
そう言えばそうであった。このゲームではプライバシーだなんのとでお互い、敵の顔が仮面で分からないようにされている。声でバレてしまう件については考えていなかったのだろうか。設定の詰めの甘さにため息が出る。
だが、プライバシーがなんだ。今は敵だったとしても後はみんな仲間で。今回の場合は相手も友達であり良きライバルじゃないか。
マストは自分のつけている仮面を取り外した。
え?仮面なんてつけてたのかって?一応つけていましたよ?別に説明しそびれたわけではないですよ。。。
マストが外した仮面は地面へカコンッと転がる。その音を聞いて女も構えた弓を下げ、仮面を取り外し地面へ転がす。
「やっぱりマストだったのね?馬鹿げた。」
女はマストの顔を見てマストである事を知っていたかのような事を言う。
「なんで俺だって分かったんだ?」
マストも面白がって聞いてみる。もうプライバシーもクソもない。
「モモキさんが"マスト"って叫んじゃったでしょ?w」
ーだってよ。個人のプライバシーは大切にしような?w
少し前に戻ってみよう。確かにしっかりと名前を口にしていた。笑いながら話す女の声とマストのからかいはモモキの心をえぐる。2度目だ。このゲームが始まる前にもサグとモモキのせいでマストの名前がバレてしまっている。本来ルールを最も厳守するべき立場であるのにもかかわらずこんな事態になるとは。
➖申し訳ない…
ー別にいいよ、どうせ知る事になるんだからな、、
「んで、お前が相手なら倒し甲斐がありすぎるな」
マストは槍を相手に突き出して言った。
「こちらこそ。さて、勝負の続きをしましょ?」
女もノリノリだ。また激しいバトルが幕開けしそうだがマストは座ったままの状態である。この状態でどう勝とうと言うのか。
「おう!今回も勝たせてもらうぜ!虎嶋コーポレーションのお嬢さん。」
今幕があがるのはゲーム《キノコ胞子の大冒険》の永遠のライバル同士の対決。
[神崎マストvs虎嶋カルク]
読んでくださりありがとうございます!
次回も6月中に投稿できたら(観測的希望論
新たな挿絵を描いていただきました!!
マストの戦闘態勢ですね(╹◡╹)
とてもカッコいい(〃ω〃)
描いてくださったのは
やきほこ 《@pamdaudonn0331》さんです!
special thanks
P.S.
焼肉食べ放題でサイドメニューばかり注文すると気味がられるので注文を…




