甲乙丙丁の次は戊って知ってた?の時間(戊)
さぁ過去回想が止まりません!どーなるんでしょうな…
『何だあれは…』
突然現れたのは空中に浮かぶ大きな国を乗せた島。
その島は不思議なオーラで覆われており、中には巨大な建造物も見える。面積はおよそ街一個分と言ったところか。島の下にある街一帯は島のせいで暗闇に包まれる。
5人はただ見上げることしか出来なかった。あまりにも突然で音もなくいきなり現れたのだから。これは現実世界で作られたものだろうか。それにしては非現実的かつ突然すぎる。
『あれを見て!』
何かに気づいたカカが何かを指す。示す先には島から垂れる一本の螺旋階段があった。他に島に行くための手段は見えない。
『どうするみんな?行ってみるか?』
ヒメキは何故かわからないが行くべき所だと感じた。ただ興味を持っただけかもしれないが、とにかく行きたい。
『俺はいいぜ!』
快く返事をしてくれたのはサグだ。そして他の人の様子を見ると軽く頷いてくれた。
この公園に来てから20何年。ヒメキは生まれてから今日までの三分の一ここに居たことになる。少し名残惜しい気はするが、どこからか嬉しさを感じられた。それは我慢してずっと待ってきた達成感か。はたまた、これから仲間と一緒に同じ目的の為、同じ場所に向かうからだろうか。こんな経験、現実世界じゃ出来なかった。いや、してこなかったんだ。
あと1人を待つかどうかも悩んだが、今までから考えて来るとしても何年後。そんなに島で長居するわけでもなければ行けるかどうかすら危うい。だからあと1人は後回しにする事に決定した。
こうして5人は浮島に行く事になった。誰が作り、そしてなんのためかは分からないが恐らく島1つ作るほどの能力を持っていたとするとまた別の勢力の神だろう。だが恐れていては何もならない。手に残った銃のバッチと手紙の入った袋を手に取り公園を後にする。
浮島と繋がっているであろう階段まではかなり遠かった。変わった街並みを見るたび時の流れを感じた。古びていた商店は立派なアパートが建っていたり、以前は田んぼが一面に広がっていたはずの場所も今では一軒家が建ち並んでいる。
その道中だった。他の4人がが見覚えのある事をしていた。ヒメキは周りの景色に見とれていたのと今までずっと待つことしか考えていなかったせいですっかり見逃していた。
『なぁそれ!どーやったら出来るんだ?!』
20何年前にケミスがしていた楽しみ。人の人生を見る事が出来る能力だ。ケミスから軽い説明は受けたが実際に試したことが無かった。
サグは自分が映し出す人生を指差し聞かれ少し戸惑う。周りも同様。
『ヒメキ。お前まだ来てないのか?』
ヒメキの頭にハテナがいくつも並ぶ。
『これは勝手にできるもんなんだ。説明しづらいがなんか頭の中になんか降りてくる感覚があるんだよ。それが見れるようになる人の誕生だ。それで少し念じるだけで見れるんだけど…それが来てないのならなぁ〜』
普通は現実世界での人の誕生の知らせがこの世界いるものに告げられる。それは早ければこの世界に来て1日目でも、遅くても2日目には告げられるバズなのだが20年近くもそのお告げが来ていないイレギュラーなヒメキにサグは頭を悩ませる。例えヒメキのような神隠しによってこの世界に来てもカカのように使えるはずなのだが。
『聞いたことがないなぁ。。もしやお前、マガツイの者か?!』
この世界に詳しそうなヴァルでさえも聞いたことがないらしいが、何かに気づいたようだ。それは知らない単語だった。
『マガツイ??』
『その表情と言うことは違うのだな。。マガツイって言うのはリーベのようなまた別の勢力だ。他にも色々と勢力はあるのだがお告げがこない例はマガツイにしかないものでな』
お告げが来ない勢力があるみたいだ。後々聞いてみるとマガツイとは悪魔の様な勢力らしい。まあお告げが聞けないのも納得はいくのだがヒメキはその勢力に加担した覚えもない。本当におかしな話だ。
ヒメキは人の人生を見れない事を残念に思いながら才能がないのだと割り切って諦めた。
そして遂に螺旋階段の麓へと辿り着いた。近くで見ると公園から見た時とは違いとても幅もあり一段一段の段差が激しい。階段を上ると言うよりは登るという感覚が正しいだろう。だが生憎この世界は疲労という概念が存在しない。もし存在していれば今頃ヒメキなど空腹や寝不足で草木の肥やしになっていたところだ。
一行は階段をゆっくりと登っていく。そこから見下ろす景色はヒメキの元いた世界とは全く違う。遠くの方には高いビルが何本も建っている。文明の進化とはいいものだ。吹き抜ける風が気持ちいい。
そしてついに島へと辿り着く。そこに広がるのは階段から見下ろした時と同じような近代化された街が広がっていた。その中でも取り分け大きくそびえ立っていたのは立派な学校だった。
『なんだこの街は?』
サグが島の上にある立派な街を見て間抜けな声を出す。その後、足を螺旋階段から離れた所へ進める。妙な事が少しあった。まぁ何故空に出来ているのかというのもそうだが、人1人とも出会わないという事だ。公園から螺旋階段までの道のりには数は少ないがそれなりにこの世界のリーベなどの勢力に加わっていないであろう住人がいた。これは公園を出るまで知らなかった事なのだが、背の高い男もサグも知っていたことだ。けれどもここには誰もいない。そしている気配すら感じない。出来立てホヤホヤの島だから仕方ない事なのだろうか。
そんな事を考えながら街を歩いていた時だった。
突然何もないだだっ広い場所へとたどり着いた。広さでいうと大体、東京渋谷のスクランブル交差点くらいと言ったところか。何せびっしりと現代の建物が建ち並ぶこの島では大きくそびえ立つ建物よりも何もない空間の方が目立っていた。この空間は意図的な物なのかそれとも作るのに失敗した、、とは考えづらい。
そしてまたしてもカカが何かに気づく。
『あれ、人じゃないかしら…』
何もない場所の奥に人がポツンと1人立っているのがぼんやりと見えた。その人はどこか向こうを向いていた。
『人、、だな。行ってみるか?何か知ってるかも。だからな』
背の高い男…もうヴァルって言っても良いですよね?そうヴァルが珍しく興味を持つ。ヴァルがこうも言うとなんだか従うを得ない雰囲気になる。
そうしてポツンと立つ人にゆっくりと皆んなで近づく。近づいて分かったが男である。そして懐かしい服装。
『お前は…』
ヒメキはその服装の意味を悟る。同時にヴァルとサグも服装を見て顔の表情が険しくなる。
『そのデザインは…リーベのところか!』
白を基調とし胸にはFのロゴ。これはリーベの領域でかつくらいの高い人の出来るものだ。
そしてヴァルの声に気づいた男。ゆっくりと顔だけ振り向き5人を睨みつける。フードからはみ出る藍色の髪、鋭く冷酷な青い瞳。そんないかにも強そうな姿にヴァルとサグは強大な敵を目の前にしたかのように身を構える。
だが、ヒメキにはしっかりと見えていた。仲間であると。
『お前が盾の持ち主…ウロス。』
その瞬間4人の頭にハテナが浮かぶ。
20何年前に受け取ったケミスの手紙にはこう書いてあった。
ヒメキが持ってある6つのバッチだが実は7つ目が存在しているんだ。それは盾のバッチだ。そいつは俺が先に見つけておいたもう1人の同志に託している。今後どこかで何かの機会で会う事になるだろう。名はウロスって言ってな。藍色の髪の毛に青い瞳を持ったクールな男だから会えばすぐにわかると思う。
ウロスはヒメキのくる数年前にリーベの領域から出てこの世界を壊す作戦に取り掛かっている。そういやあ、俺のこの世に3着しかないローブの一着を勝手に着て行きやがった。まぁこれからの作戦はウロスが全て知っている。いつになるかはわからないが快く協力してやってくれ。
目の前にいるのは藍色の髪、青い瞳。そしてケミスの持っていた3着しか存在しないローブ。これらの特徴からウロスであると言うしかない。
『俺の事を知っているのか。。っ!?』
低く心地よい声で話すのはウロスだった。しかしウロスは自分の存在を知っていたヒメキを見て面食らう。
そしてヒメキを凝視しながら足早に近づく。
私に何か付いてます?と聞きたくなるところだが、ウロスの眼孔が大きく開いていた。
『あの、、なにか…』
『お前は、ケミスさんが観るのを楽しみにしていた女の子じゃないのか??』
『っ…』
返す言葉がなかった。ただでさえウロスはケミスのように神隠しなどの神勝手の行動を許せなく、この世界を壊そうとしているというのに、さんを付けて呼ぶあたり敬称を使うまで信頼し尊敬しているであろうケミスの楽しみであった現実世界の人生が、その神勝手な行動で奪われたと知ったらウロスはどんなに悔やみ、嘆くだろうか。つい、そんな事が頭によぎってしまった。
『まぁ何も言わずともわかる』
思っていたよりも落ち着いていた。だけど内心はとても腹立たしく思っているに違いはない。
『そしてここにいるという事は同志という事だな。』
ウロスは5人を見渡し問う。そして5人は重くゆっくりと頷く。全員の表情が固くなる。しかしウロスは5人を見て思うことがあった。
『なんでお前ら5人しか居ないんだ?』
そうここにはまだ必要とされた人数に達していない。盾のバッチを持つウロス。槍のバッチを持つヒメキこと後のシル・モモキ。剣のバッチを持つ後のサヤ。弓のバッチを持つ後のヴァル。槌のバッチを持つサグ。星のバッチを持つツォト・カカこと後のルル。必要人数7人にはあと1人、銃のバッチを持つ人が必要だ。
『実はまだ集まってないんだ。あと1人なんだけどいきなりこんな島ができたもんだからついきてしまった』
『まあ焦っても仕方がないか...』
少し残念そうな顔を見せるウロスだがどこか嬉しそうにも見えた。作戦が順調に進んでいるのが素直に嬉しいのだろう。
ヒメキたちは先程から太陽の光が眩しく感じる。陽は暮れていき丁度ウロスの頭上で止まっている。
『ああ、ここで立ち話もなんだ。こっちへ来い。』
ウロスはそんなヒメキたちの眩しそうな表情を汲み取りある場所へ案内してくれる。言葉と態度は尖っていても根は優しいのだ。
そして案内され着いたのは学校だった。今から6人で作戦の把握。これからの作戦などを話すには会議室もあれば黒板もある学校はもってこいである。中に入ると懐かしさと時代の変化を感じさせられる。だんだんと暗くなっていく世界に歩く人に反応し蛍光灯が勝手についてくれる。これには驚いた。カカは外国とは違う学校の形に目をまん丸にして辺りを見回す。
どうやらここは現実世界にある高校がモデルになっているらしい。そして足を進め一行が着いたのは図書室。ウロスが黙って入っていく。それに続いてぞろぞろと入っていく。中にはヒメキは初めて見るホワイトボードがあり長机と椅子がずらりと並んでいる。なかなかに広い図書室だ。入って左手の奥にはベランダのようなところがあり校庭が見渡す事もできる。
6人は椅子に座る。性別、国籍、年齢が違えどそこに座るのは同じ志を持つ者だ。
『よし。今から俺が知る限りのケミスさんの作戦内容と補足点を話す。質問は後にまとめて受ける。いいか?』
5人は首を縦に振った。
手紙では書かれきれなかった作戦。ついに全貌が明らかになる。その期待に息を飲む。
『なら話そう。ケミスさんがおっしゃった作戦は色々な段階、言わば下準備がある。
まず一つ目は7人が揃う事。これについてはあと1人という現段階だ。
二つ目は現実世界の人間を7人集める事。この意味は履き違えないで欲しい。神隠しやらではない。ケミスさんが言うには"その時"が来れば出来るらしい。残念だが"その時"ってのはいつ起こるかは分からない。詳しく聞いてみたところ、どうやら現実世界の人間の脳にアクセスし、そのアクセス先の人間に強い‘妄想力'とやらを引き出せば、こちらの世界に呼び寄せる事が出来るらしい。勿論その人間はこの世界から帰れないなんていう事は無い。なんならこちらの世界に呼び出した時、その人間の体や意識も現実世界にあるままらしい。どういう原理かは知らないがまあ何せ安全性は確かだ。
そして三つ目。現実世界7人の強化。ここで驚くべき事実なのだが…』
話に聞き入ってたところ気になる止め方をする。
今までの内容をまとめるととりあえずまずはこの世界の人間と現実世界の人間7人を集める。現実世界の人間を集めるには"その時"ってのを待たないといけないらしい。
そしてその現実世界の人間を強化するにあたって驚くべき事。それは一体何なのかとヒメキたちは身を乗り出してしまう勢いで座っている。。。いや、サグは話が長くて寝てしまっていた。お気楽なものだ。まあ他のウロスを除く4人はサグがそういう性格だという事はある程度把握しているためあえて何も言わない。
読んでくださりありがとうございます!
まだ終わらなかった件については…ね?
次回はすでに上がっているかと思います
P.S.
次回、過去回想最終回!(本当です




