過去回想は軸になるから作る時は慎重にの時間(乙)
2日続けての投稿です。気軽に読んでねー
『外に出ても捕まるだけだ。ここで相手してくれるならリーベ様にも黙っててやる。どうだ?』
噂はヒメキが思うほどよりも早く広がっていた。悪事千里を走るとはよく言ったものだ。そう感じるのも最近になって増えてきた。喧嘩をすれば近所、学校、なんならその一帯の地域までヒメキの名は広まっていたものだ。 悪い事をすると噂が広がるのが早いのはどの世界に行っても同じなのだろう。
そんな現実と変わらない世界。ここは男の言葉に乗るしかないだろう。外に出れば捕まるし、万が一この男に裏切られたとしても男1人ならなんとかなりそうだし何よりも、この白髪のダンディーな男からはあまり裏切りの匂いは感じられない。
『わかった。その代わりこの世界のこと詳しく教えてくれない?』
『ゲームに勝てば教えてやるぜ』
そうして始まったゲーム。先ずはダーツだ。今回のルールはカウントアップ。1ラウンド3投を8ラウンド行い最終的に得点の高いプレイヤーが勝利だ。
『私が負けたらどうするんだ?リーベとやらに連れ出すのか?』
ヒメキはダーツを手に取り、的の前に立った時に聞いた。
立場的有利な相手が仕掛けてきたゲームだ。それなりの覚悟が必要だ。
『俺が勝ったらか?そんな事しねぇーよ。』
男は大きく笑いながら言った。
『そうだなぁ、俺が勝ったらもう一回ゲームに付き合ってもらうぜ?』
ヒメキはそんな事でいいのかよ。と呆れながら第1投をする。
突き刺さったのは的の真ん中。インナーブルだった。衝撃の1投に男は唇をすぼめる。しかしながらヒメキは余裕の表情だ。
続いて2、3投目をテンポ良く投げ、どちらもトリプルの輪の内側に突き刺さっていた。
『残念だけど1ゲームで終わりそうだぞ?』
そう言いながら男が立っている場所を横切って壁にもたれる。
『なかなかうめーじゃねぇか。流石は(ひめおに)だ。』
『なんでそれを知ってるんだ!?』
ヒメキは男の服を強く掴みあげ、声を荒げて問い詰める。そしてその視線はは冷たく痛い。
そんなヒメキと裏腹に男の態度は相も変わらず堂々として言った。
『あーその事か、そんなに怖い顔するんじゃねぇーよ。。かっこいいじゃねぇか(おにひめ)って名前』
『全然かっこよくねぇんだよ。あと返事になってない。なんで知ってるんだ?』
ヒメキはもう一度同じ質問を問う。
『なんでって言われてもな、お前を見てたからなー』
男は少し悩んだのちサラリと答えをこぼす。そしてその答えに服を握った手が少し緩む。
『見てたって…??』
その言葉の意味が少しずつ分かってくるにつれて体温が上がっていくのがわかる。
『だから〜お前の人生をここで見てたって事。』
その男の言葉にヒメキは沸点に達する。そして服を掴んだ手で男を激しく大きく揺らしながら声はか細いながらも叫んでだ。
『な、なんでそんなのが見れるんだよっ!』
『お〜おー、そんな顔見るのは初めてだな』
なぜか男も照れながら揺れる。
ゲームはまだ1ラウンド目の後攻。弾む会話に男は投げるに投げられない。なんならヒメキに揺らされて投げたところで負け確定だ。
そしてだんだん恥ずかしくなり揺れが止まる。
『まぁ、ざっくり説明するとだなぁ。この世界にいるやつは現実世界にいる人達の中の1人の生活を見る事が出来るんだ。』
この世界の人たちはこの世界の制度として、現実世界の1人を見る事が出来る。もちろん誰を見るかはこちらの世界の人の自由である。
『まぁ見せてやるよ。』
男はダーツの矢をテーブルに置いて両手を前に広げると、その広げる動きに合わせてモニターのようなものが現れた。その動く画には誰かが三人称視点で映されていた。
後に手を下ろすがモニターは自立して形を保っている。
『これが?』
『そう、これが俺の今の楽しみだ。』
そう言って男は目を輝かせていた。この長々と過ごす場所では、何が起こるかわからない他人の人生を見る事が生き甲斐にもなっているのだろう。
『つまり、前までは私を見てたって事だよな?今も見れるのか?』
当然の疑問だ。普段見られていた人と対面してしまった以上気恥ずかしいからだ。もしこの事が知らなければ呑気に恥ずかしい生活もできたであろう。
そんな質問に男は指を鳴らすと、モニターが消え、男には似合わない怒りの表情が少しばかり現れた。
『残念だがもう見れねぇ、、、』
ヒメキはそんな男の表情に戸惑う。そんな男の表情を伺いながら恐る恐る聞いてみる。
『な、なんで?』
『リーベとやらがお前を殺したからだ。』
男は再びゆっくりとダーツを手に取り強く握りしめる。
ヒメキは驚愕した。神に殺されたのだから。しかし、
『ちょっと待って、私は死んでない。私は神隠しだって言われた』
そうこれは、ワイレとそれを行った張本人リーベから聞いた情報だ。
『神隠しなんて死んだも同然だ。お前は一生見つからない行方不明なんだ。』
『っ。なら私は帰れないの?!』
『あぁ、お前は神にも頼まない限り現実には戻れない』
男は俯いて悔しそうに言った。そしてゆっくり顔を上げた後と構えて投げたダーツは、的の円外上に勢いよく刺さる。
『だからよ、ヒメキ。』
だんだん男の声のトーンが上がっていく。
ヒメキは自分の名前が親以外に呼ばれるのは久しく思えた。何故か心を動かされるものがあった。みんながみんなヒメキを見かける度に(ひめおに)と呼ばれ、自分の名前など呼ぶ人は親くらいでしかなかったからだろう。
『この世界をぶっ壊そうぜ!』
男は初めのどっしりとした態度に戻りこう告げた。
この言葉でどれだけ救われただろうか。ヒメキは初めて友達を手にできた気がした。
そしてヒメキはゆっくりと頷いて同意した。
すると外が騒がしくなってくる。声を聞く限り、どうやらヒメキを本格的に探しているらしい。
『少し隠れてな、、』
外に聞こえないようヒメキにそう言うと、ビリヤードにかけていた大きな薄汚れたタオルをヒメキに覆い被せた。
そして間も無く数人の人がやって来る。
『おい、イリィガルが逃げたらしいんだが知らないか?』
イリィガル。意味は分からずとも逃げたというところからヒメキのことであろう。
『悪いが俺は初耳だ。何があったんだ?』
男は知らないふりをし火の粉を払おうとする。
『詳しいことは知らないが。とりあえずイリィガルの女を探せ。賞金がかかっていらしい。』
イリィガルを探す人たちは男の家も辺りを見渡しながら事を伝える。
『なら、俺も探すとするか、、、』
そう男が言うと家に来た人らは外を駆けて探し回る。ここらの街は家と家の間が暗く逃げ道となりやすく人通りも少ない。そう踏んで今はそこに人が群がる。
『出てきていいぞ』
その声でヒメキは被っていた布をビリヤード台にさっとかけた。
そのあと男のサインで奥のドアのない部屋へと入っていく。
『この世界を壊すにもここに居たら話にならん。。。これを使え』
このリーベが治める領土にいたとしても準備を整えるに整えれない。だからこの領域から出る必要がある。
男はヒメキにワイレが着ていた制服と同じ夜目立つ白のデザインのローブを渡した。それをもらうとヒメキはローブについたフードを深く被り、男ももう一つのローブを着た。
『ここには出入り口がひとつある。そこには生憎この騒ぎじゃ警備が強化されている。だがしかしだ。実はもう一つ出口がある。そこは知る人ぞ知る出入り口だから警備もいないはずだ。』
そこはこの世界において指折りしか知らないらしいのだがその男はそこを知っていると言う。この男はいったい誰なんだろうか。
『そこはこの地の城壁の西側の前。噴水のモニュメントだ。』
『そこなら見覚えあるかも、、あんなところが出口なのか。』
ヒメキも城内にワイレと向かう途中みたことがある。とてもありふれた噴水が出口だとは知っていても本当だとは思い難い。
『そこまでどーやっていくの?この騒ぎじゃ瞬殺だぞ?』
このミッションに置いて大事なのは見つからないことだ。この騒ぎの中見つかってしまえば一瞬にして捕まってしまうだろう。
『大丈夫だ。今ここの民が探してるのは家と家の間の裏通りがほとんどでこの目立つ大通りには探す人もいないはずだ。それに、俺に任しとけば大丈夫だ。』
やや、不安は残るが今ここでモタモタしていても仕方がない。しかも男の言った作戦を行うのなら、騒ぎが盛り上がっているこの時がいいだろう。
『わかった、それで行こう。』
そして2人は男の家をでて、大通りを堂々と歩く。向かうのは城壁の西側の噴水。
大通りには数人ヒメキを探す人がいるが2人を見るなり何故か裏通りに入っていく。だからと言ってヒメキに気づいている感じはしない。そう言えば、ヒメキの着ているローブ。ワイレの制服と同じ柄なのだが、リーベの領域に住む人たち全員がそんな服を着ているわけではなかった。皆、人それぞれ別の服を着ている。
そんな時だった。大通りを探す集団が2人のいく先に立ち塞がる。
『あれ、どーするの?』
ヒメキは小声で男に聞く。
『心配するな…』
男は答えるとさっきまでと変わらず堂々と歩いていく。ヒメキも不安ながらも出来るだけ姿を見せないよう男の影に入りついていく。
そして、その集団が何かに反応したかのように道を開ける。そしてその間を横切る時に妙な話が聞こえた。
『おい、あのローブはもしかしてケミス様か?』
『ああ、間違いねぇ。しかし、隣の者は誰だ?』
やがてその集団を難なく通り過ぎる。そしてまた人気のない大通りを歩く。目的地まであともう少しで着くようだ。
ヒメキは集団を通る際聞こえた事を訪ねてみる。
『なぁ、お前ケミスって言うのか?様呼ばわりされるなんて高貴なんだな』
『まあな、みんなにはリーベの側近的存在だと思われているが実は違うんだ。俺はただここに泊めてもらっているだけだ。』
神に泊めてもらうことを許され、さらに民からはケミス様などと呼ばれる。ただ者ではないのは分かっている。ただ泊めてもらっているなら他の人たち同様にみすぼらしい服を着て、名前など覚えられる事もないだろう。
そう考えている間に目的地の噴水へと着いたのだが。
『ただ泊めてもらってる人にしてはすごい待遇だな。』
『俺もこうなるとは思わなかったぜ。』
流石の驚きに笑ってしまう。そして2人はフードを脱いだ。
《ここに来ると思うたぞ。我が"刃"よ》
噴水の前に居たのはここの主、リーベ。そしてワイレの2人だった。
読んでくださりありがとうございます!
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次の投稿は6月までにはできると思います。
P.S.
次回事故が起こります。




