過去回想は軸になるから作る時は慎重にの時間(甲)
お久しぶりの投稿です。
今回から過去回想へ少し入ります。予定では甲乙丙丁と続くつもりです。
これはモモキが現実世界から守護者になるまでのお話。
30年前。不良な女子中学生がいた。
中井ヒメキ(なかい ひめき)。受験生にして学校にもたまにしか顔を出さない不良だ。
学校に行っては喧嘩をし、先生に暴言を吐き、周りからはその横暴ぶりとその態度に合わない顔立ちの美しさにヒメキの事を漢字を当て姫鬼と呼んだ。
この女こそが後のモモキである。
そんなヒメキの中学3年の冬、大晦日の出来事だった。
「ヒメキ、ぐーたらしてないで鐘でもつきに行ったらどう?」
そうコタツで横たわっているヒメキ告げたのは母親だった。
「うっさいなぁー。私はゴロゴロしてるの。見ててわからない?」
「まあ!親に対してそんな口聞いて!」
こんな会話は何回しただろうか。事あるごとに突っかかってくる母親に腹が立つ。いわゆる反抗期だ。しかし、ヒメキの反抗期が長く続いている。気の強い性格のせいか、素直になれない性格のせいなのか、、、いや、両方だろう。
「そんなんだからあんたは[姫鬼]なんて呼ばれるのよ」
半ば呆れた態度で言われた。そんな言葉もいつも言われる。何かあれば[姫鬼]って。それにこそヒメキは飽き飽きしている。
ー何が[姫鬼]だ。この世界ではみんな名前がカタカナなのに…そんな、私は姫みたいに可愛くもないし、鬼みたいに強いわけでもない。実際みんなが弱いだけなのに。
ヒメキは[姫鬼]と呼ばれる事に嫌気がさしていた。そろそろそんな日々からおさらばしたいのだ。
そう呼ばれないよう鐘をつきに行こう。そうすれば煩悩でも、なんでも取り除いてくれる。神様というものはどうも信じ難いがして損はないだろう。そんな気持ちで外へ出るのだった。
「あら、ヒメキがあんなに素直だなんて…」
そんなヒメキの態度は母親も感心するほどだった。
真夜中歩く道は楽しかった。誰にも邪魔されることが無い。だけど少し寂しかった。
みんななら今頃、約束して一緒に鐘をつきに行っているのだろうか。そう思うたび自分の劣等感に嫌気がさす。
ーけど、来年からは高校。せめて友達の1人や2人は…
そしてようやく寺院に着く。
だがその寺院には人が指で数えられるほどしかいなかった。この携帯などもあまり普及していない時代に年越しは鐘つき恒例行事のはずなのだが…
ーまぁ空いてるのはありがたい。こんなところで学校の奴らに会うのも嫌だったしな。
「次、じょうちゃんだよー、ドーン!とついちゃいな」
順番待ちはなかった。みんなついた後の余韻を楽しんでいるのだろう。
ヒメキは撞木から垂れた縄をしっかりと握り、ひと思いに腕を振った。
ゴーーーーーーン
音はその辺りの地域一帯に広がった。
思ったよりも大きな音だった。いつぶりだろうか、この音を聞くのは。小学生の低学年の時以来だろうか。反抗期を迎えてから今の今まで鐘をつくことがなかったのだ。
しかし異変に気付いたのはその直後の事だった。
ー鐘もついたし、すぐ帰ろう。。。
そう思って鐘から振り返り帰ろうとした時だった。
ーあれ?みんなは、、、
振り返ってみるとそこには、いたはずの人達の姿がなかった。さっきまで余韻に浸っていた人。寺院のお坊さんも。
『お待ちしていました。』
その声は背後の鐘から聞こえた。
そして振り返ってみるとそこにはお世辞でもなく男前な顔つき、深い緑色の髪の男が片膝をついていた。時代に合わない白を基調とし、胸には金色でfのロゴが入った服装。ヒメキには初めてみるような服装と髪の色だ。
『お前、、、誰だよ。いきなり現れやがって…』
『申し遅れました。私は元は人間、そして今はリーベ様の下で世を過ごすリベリスト。名はワイレと申します。』
『な、なんだよ、いきなり現れるなり知らない単語並べやがって。それにお前の名前、次の元号に使われそうな文字だな』
ヒメキに向けて発せられる新しい単語はのちにワイレによってきめ細やかに教えられた。
読者は説明の反復になってしまうので省略させていただく。
『まあいい、それよりもこの状況を説明してくれ』
そうなのだ。ヒメキが、そして読者も知りたいのは何故周りの人が消えたのか。そして何故ワイレがいるのかだ。
『よし、今からみっちり教えてやる』
ワイレはさっきまでの礼儀正しの態度とは打って変わり、まるで先輩かのような言葉遣いに変わる。
ヒメキも少しは驚くが、敬語を使われるよりも慣れたタメ口の方が話しやすい。
『よし、まず教えるなら何故みんなが消えたのか。だな。まぁついてこい』
『勿体つけないで早く教えろよ。』
そう言いながらも実際にはついて行ってしまっている。夜をよく徘徊するヒメキにとっては抵抗があまり無いのだろう。
そして、寺院の敷地から出てあるところへ向かう途中。
『何故周りの人が消えたのか。それはズバリ世界が変わったから。』
『世界が変わった?!』
一瞬で起こった出来事がスケールが壮大で少しパニックになるところだが、、、ヒメキは違った。
『ま、まぁ否定しようが無いもんな…』
案外すんなりと受け入れてしまった。そんな簡単に受け入れるヒメキには驚く半分、説明しやすくありがたいと思うワイレ。そして説明を続ける。
『んでだなぁ。お前は神隠しにあったんだ。』
衝撃の一言。だが、ヒメキだって負けていない。
『それで?私が聞きたいのはこれからどーなるかだ』
『それは今からわかる。』
目的地に着いたようだ。そこは民家が全く無い草が生い茂る空き地。そして唯一の光源は一本の外灯の光。とは違う妙な光。光と言うよりは輝きのようだ。
また、その草むらにポツンと置いてある真っ赤な謎のオブジェが不自然さを増す。
『そこのオブジェに手をかざしてみて』
ワイレがその不自然なオブジェを指差す。ヒメキは少し不満そうに手をかざして見せる。
するとまばゆい光に包まれた。視界はあまりの眩しさにしばらく白い。
そして視界に色がついた時は天国。と言われても疑う事ができないゲームの王国の街並みが広がっていた。暗闇に灯された青白い街灯の光が白い外壁を照らす。
『ここは?』
『ようこそ我らのリーベ様の神国へ。』
リーベの神国。リーベの信徒たちが主に住まう街らしい。リベリストの布教活動の中心もとい聖地である。
リーベがいるであろう立派な洋風の城を中心に周りを取り囲むように高い石垣の塀。そしてそのまた周りにリベリスト達が住まう家が
広がる。
『まずはリーベ様のところに行こう。』
『え、そんなところに行きなり?!』
やや強引だがヒメキを王のもとへ連れて行く。
ついて行く途中見える街並みは、陽が完全に落ちているのにも関わらず家の明かりがどこもかしこもついていた。よく見てみると賭け事で賑わっていた。まさに自由の国にふさわしいと言えよう。
そして街を抜け城壁をくぐる際、ワイレと同じ服装の人間達が門の前に立っていた。ワイレはその人達と軽く目でサインを送り合い連携を取り門を通過する。やはり神国だけあって警備もしっかりしているのだろう。しかしながら警備をするのにも誰も兵装をしていない。何か訳があるのだろうか。
やがてヒメキとワイレは城の前の大きな門へと着く。
『コードネーム、ワイレ。ハントして参った。』
そうワイレが門の向こうに言葉を発すると大きな扉がゆっくりと開いた。
そして門の開いた先にはだだっ広い空間。そこに引かれた赤色のカーペット。その先が導くのは大きく派手な椅子に踏ん反り返って座る女。そしてその両方には耳の長い男が2人。その3人、そしてヒメキ、ワイレの5人以外には誰もいない。
『リーベ様。連れて参りました。』
《うむ。よく連れて参った。こっちへ来い》
ワイレの言葉に座っていた女がゆっくりと立った。
この女が自由を謳う神。リーベである。
背は思ったよりも小さい。ヒメキとあまり変わらない背丈だ。そして近づくに連れてヒメキが思った事は…
『すごい可愛い…こんなのでみんなをまとめてるの?』
思わず声が溢れてしまうほどだった。腰のあたりまで伸びた銀色の髪。そしてキラリと輝く真っ赤な瞳。美人というよりはロリ可愛いの分類だ。そんな幼女とも思える神が勢力をまとめているとは考えにくい。
『おい!リーベ様に向かってなんて態度だ!、、、申し訳ございませんリーベ様!ほらお前も謝れ!』
神に対するヒメキの失言を慌ててワイレは謝罪しヒメキの頭を鷲掴みし頭を下げさせる。
《まぁ良い。頭を上げよ。我も慣れておる事だ。》
『お前、本当に勢力をまとめているのか?そんな優しさでトップに立てるとは思えない』
ヒメキは自分の立場の事など構わず想いをぶちまける。
『貴様!リーベ様をお前だと?!立場を分かってるのか!?』
またしてもヒメキの態度にワイレは怒りを上げる。
『立場?そんなのしらねぇーよ。勝手に連れて来させられて何が立場だ。』
『貴様っ!!』
《そこまでにせい。それ以上は我が許さん》
怒りが爆発したワイレを一声で止めた。
『しかし!』
《もういい。ワイレは一度下がれ。》
リーベは怒りが収まらないワイレを下げさせる。ワイレはなんとか怒りを抑え外へ出て行く。
《すまぬかったな。お主の恐れぬ態度気に入ったぞ。》
『褒められる筋合いは無い。』
ヒメキの神にも怯まない態度は男顔負けのものだった。
《やはりおもしろいのぉ。じゃがお主の質問は間違っておるぞ?》
どこから出したかもわからない扇子でパタパタと仰ぎながら笑いヒメキの質問に答える。
《この勢力は力、厳しさだけでは成り立たないのだよ。真の自由とはのぉ、全てを許すほどの優しさがなければ成り立たないのだよ。》
『全てを許す優しさ?』
仰いでいた扇子をパタンと閉じ、答える。
《そう。どんな事が起ころうとも許す優しさじゃ。それが例え自分に不利益であろうとも。じゃ》
『そんな優しさ…』
と、ヒメキが続けて言おうとしたが頭の中で今までの行いが横切った。今まで自分勝手、自由気ままに過ごしてきた自分が優しさなどを語れるだろうか。そんな思いが邪魔をし言葉が出なかった。
言葉が詰まるヒメキを見てリーベはクスクス笑う。
《さっきまでの威勢はどうしたのじゃ?まぁ良い。この街には娯楽がたくさんあるわい。当分の間この街でゆっくりして行くが良いわ…リベレストとしての》
『それは無理だ。リベレストには私はならない』
本来ヒメキにとって自由気ままな暮らしとはさよならをしようと鐘をつきにきたのだ。ここでリベレストになってしまうと本末転倒である。
《それは我が許さぬぞ?》
リーベはヒメキの返事に即答だった。そしてその目は暗く光っていた。
《お主にその自由なぞ無い。》
その返事にヒメキは恐怖を感じる。
《お主が連れて来られた理由は知っておるのか?》
あまりの恐怖心に言葉が出ず顔を横に振り反応する。
《そうか。お主はワイレに告げられておらぬようじゃの。なら我が教えてやろう》
ヒメキは唾を飲み込んだ。
《お主はまぐれでもなく我の手によって神隠しにあった。そして、神隠しにあったものは我に仕える。それは義務じゃ》
自由を謳う神から告げられた言葉。義務。
勢力を強める為には神為的に神隠しを起こし神の下で仕える義務を課す。これがリーベのやり方だった。おそらくワイレもその1人なのであろう。
そんな事態にヒメキは黙っていなかった。
『義務?そんなお前の自由で私が、はいそうですかって聞くと思ってるの?もう帰らせてもらうぞ。』
ヒメキは神の命令を拒絶し背を向けて帰ろうとした時。
《お主は我の言う事が聞けぬと言うのか?残念だが帰る場所はここだ!》
リーベは扇子を力強くヒメキに向かって指し告げると両方に立っていた男が襲いかかる。
2人の男は直立不動の姿勢を傾け浮いて追いかけてくる。
『なんだお前ら!気持ち悪いなぁ!』
ヒメキは相手の様子を疑いながら扉へと走る。そして2人の男の背中から黒いモヤを鎌の形にして降りかかろうとした瞬間。
ピカッ!と光る稲妻が屋内であるにもかかわらず2人の男に襲いかかる。
その間にヒメキは城を抜けようと思ったが既にヒメキは城の外の街にいた。
『どうやってここに…』
ヒメキが見上げた先にはさっきまで居たはずの城とそれを囲う大きな壁。瞬間移動でもしたのだろうか。
『おい、イリィガルが逃げたらしいぜ。膨大な懸賞金が付いてるらしい。』
ヒメキは人の声に気づき慌てて消えの陰に隠れる。
『リーベ様のところから逃げれるとは大した奴だ。まぁ、イリィガルだから可哀想なところもあるが…』
さっきから会話で飛び交う聞き覚えのない単語。イリィガル。
ーこんなところにいたらいつか捕まってしまう。。。なんとか逃げないと…
ヒメキはそのまま家陰をバレないよう出来るだけ城から遠くに進んで行く。
早く逃げたのが功を奏したのか、城から遠く離れた街ではまだヒメキが逃走した事は伝わっていないらしい。
やがてヒメキは街の端までたどり着いた。そして気づいた。この街もまた城壁と同じく囲まれている事を。
ー弱ったなぁ。いつになったらここから抜けれるのか。
そう。ヒメキは城から離れたはいいものの出口が一向に見つからない。捕まってしまうのも時間の問題だろう。
『おい嬢ちゃん。』
壁に扉がないか探していた時、やけに機嫌が良さそうないかつい男に声をかけられる。
ーしくじったっ!
慌ててヒメキは逃げようとするがその時にはもう遅かった。
腕を掴まれやすやすとその男の家であろう所へ連れて行かれる。
その家は1人で住むには広く、ビリヤード、ダーツ、ルーレットなど娯楽設備が整っていた。
『おい!やめろっ!離せよおっさん!』
ヒメキが必死に抵抗し、やっとで掴まれた腕を離す事ができた。そしてすぐに家を出ようとした時。
『外に出ても捕まるだけだ。ここで相手してくれるならリーベ様にも黙っててやる。』
読んでくださりありがとうございます。
最近執筆できる体ではなく今もなお少しずつしか書けない状態です。
しかし、できる限り楽しんでもらえよう頑張りたいと思います。
P.S.
ずる賢い人はツキが回ってくるんですね。一生懸命な人に申し訳ない




