神に抗う者の時間
久々の投稿ですね。
最近執筆のペースが落ちている為投稿するペースが落ちると思いますが相変わらずまったりとしていこうと思います。
それではお楽しみください!
「待ってくれよモモキ!どーしたんだよ?」
さっきまで激しい銃声とは変わり静寂に包まれる。しかしまだ銃声のようにマストの声が響く。
その声は届いているのかはわからないがモモキは階段を上っていく。足を止めることは無かった。
やがて登る階段はなくなり屋上へ着いた。普段上がることのできない屋上は入られないことを前提に構造されているためか柵などの仕切りはない。ただ並んでいるのは空調器械の類だ。
そしてモモキはたたずんだ。
『ねぇマスト。会いたいものに会えない時ってどうする?』
「それは…」
モモキが発したその声は芯など通っていなかった。
マストは家族のことを思い出した。
数年前の事故。マストだけが生き残っていた。どうして事故になったのかよくは思い出せない、いや、覚えていないが会いたい。
『会えないってずるくないか?会えるのもずるくないか?』
「それは…」
モモキは思うがままにつぶやく。そしてその声は強さを増していく。
マストはその度に家族との事故までの思い出が込み上げてくる。
『なんで私たちは会えないんだ?これまでの行いのせいか?それともなんだよ!神の気まぐれか?』
「それは。」
モモキの声は憎しみで満ちていた。
『私たちは神のおもちゃじゃないんだ!!』
「それは俺も同じだっ!!」
マストのその張り上げた声にモモキは固く拳を作る。
「俺だってねーちゃんに、家族に会いてぇ!なのにお前だけ泣くなよ!俺だって泣くのずっと我慢してたんだ!」
マストが心の奥に秘めていた思いをぶちまける。この言葉が最低だと思われてもいい。ただずっと見てくれたはずのモモキがこんな事を言うなんて許せなかった。
「お前がどんな生活をしていたのかはしらねぇ。だけど俺だって…」
マストが言葉を失う。こんな事を言って何になるんだ。モモキの事を知らないくせに自分を語るのか。そもそも泣く原因を作ったのは自分だろ。そんな感情がマストの喉を潰す。
しばらく外の鳥のさえずる音さえなくただただモモキが泣くのだけ聞こえた。
「俺が悪かった。確かに俺だって会いたいのに会えないのは辛い。だけど今俺は、なんでモモキが泣いているのかわかってやれなかったのが辛い。」
マストは喉を潰す感情の傷から出た言葉を並べた。こんな言葉を並べても自己満足でしかない。
「知りたい…」
『…え?』
マストの本当の思いが漏れ、モモキも思わず声を出した。
「モモキ、いや、シルの事を知る時が今じゃないかと思った。」
『…』
モモキは答えず屋上にある段差に腰を下ろして隣をポンポンと叩き招くがマストはそれに気づかない。
そして涙を拭き早く来いとアピールをしてみせる。
『マストは…知りたいんだな…?』
いつもの気の太いモモキはとは思えない弱々しい声で問う。
「お互いのために、俺は知りたい。」
覚悟を決めそう告げた。
そしてモモキも腹をくくりこう言った。
『私たち守護者は、人間だ。』
マストは別に驚きはしなかった。実際人間の容姿をしているわけだし。
だけどこの答えは、マストが知りたかった事だ。
『そして、この世界は存在しちゃいけない』
「それって?」
存在してはいけない世界が存在している。こんな所に何故マスト達がいるのか、ゲームが始まっているのかと、さまざまな疑問点が浮かび上がってくる。
『この世界は神の玩具って呼ばれてるんだ』
「神の…おもちゃ?」
『少し昔の話をする。』
今から約100年前ほど前。この世界は誕生した。いや、誕生してしまった。そう、神達の力によって。
この世界はある神の意向で作られた。名前は『彷徨える現実』。ここは主に成仏できなかった魂、または記憶喪失として消えた記憶が集まる所だ。
この場所は現実世界とは姿形はほとんど変わる事なく、現実世界で新たな建物が立つのなら間も無くこちらの世界もその建物が立つ。そこに魂や記憶などと言った人達が人間の姿として年は衰えず彷徨っているのだ。
この世界がなんのためにあるのかは主に現実世界でのオカルト現象を無くすためである。もしこの世界がないのなら、現実世界では霊的現象が日常茶飯事に起きている事だろう。
しかし、今現在この『彷徨える現実』が『神の玩具』と呼ばれるようになったのは理由がある。それは、この世界が神々の娯楽として使われるようになったからだ。
神々は常日頃遊んでいるわけではないのは、現実世界での話だ。神は災害を起こす事だって豊作にする事だって出来てしまう。しかし、神々の世界でも規定があった。現実の世界では人間の進化を求め、災厄、僥倖を均衡に保たなければならないのだ。
そう、これが定められているのは現実世界での話。この『彷徨える現実』は例外だ。
そうして神々の持て余した力はこの世界を喰らうのであった。しかし、その中でも神々の争いがある。それはこの世界に彷徨う民を巡ってだった。
大きく分けて勢力は4つある。
この世界での自由、娯楽を謳う神
『リーベ』
この勢力はとても大きく、自由を愛し自己の利益だけを考え生きる事を掲げる神だ。
そしてその神の下を歩くのが『リベレスト』と呼ばれる。
この世界での平和、僥倖を謳う神
『エイレ』
この勢力は『リベレスト』に匹敵する勢力をもち、この世界でも現実世界と変わらず、平等、平和を掲げる神だ。
そしてその神の下を歩くのが『エイレスト』と呼ばれる。
この世界での災厄の神
『マガツイ』
この勢力はとても小さいが、全ての派を嫌い非人道的な神、いや、悪魔と言っても過言ではない。
そしてその神の下を歩くのが『マガイモノ』と呼ばれる。この派は特に強い怨みを持った死者などが多く属している。
そして最後、
この世界の終わりを謳う人間
『フィジ』
この勢力は近年強まりつつあるが神の勢力には力が及ばない。その勢力をまとめ上げているのが人間だ。この世界の終結を願い神に抗い続けている。
そして、その隣で歩くのが『マキナ』と呼ばれる者たちだ。
この世界をなぜ終わらそうとしているのかはある事が原因だった。
『神隠しがあったんだ。』
神隠しとは行方が急にわからないくなる事だ。そして実際には神が勢力確保のため現実世界からこちらの世界へと誘うのだ。その神隠しが原因で戻るはずの記憶が戻らない記憶喪失が起きるということが分かったという。
『そして私たちこの戦いをしているのはみんな《マキナ》なんだ。そして私はその中でも神隠しに分類される。』
「モモキは元人間で、、そんで神隠しでこの世界にいるって…」
マストは驚きを隠せなかった。その中でも、神に対する憎悪が溢れてくる。
「じゃあ、なんでここで戦ってるんだ?」
その通りだ。本当に闘わなければいけないのは他の勢力。そして神に天誅を下さなければならないはずだ。
しかし、モモキの表情は変わらない。
『私達は神に届かない。』
何も言い返す言葉はない。どこに行こうともどこの世界であっても人間は神に届かないのは分かる。
『だから、私達は神に届く存在を鍛えあげるんだ。』
「神に届く存在?!」
神に届く存在。そんな人間の話は昔話でしか聞いたことがない。そして、それはいつも作り話かわからない。
マストら、このゲームのプレイヤー達はそんな確証の持てない不確かな存在だと言う。
『これが分かったのも全部フィジ様のお陰なんだ。』
「そのフィジ様って奴も何者なんだ?人間なんだろ?」
気になっていたフィジ。人間にして神に抗い続ける教祖的存在。
『フィジ様はただの人間ではない。私より年が若いのに、私達人間にあるまじき妄想力を持ってるんだ。そして、その妄想力で大きな国を作ってしまった。』
「それはすげぇ、てか、年上なんだ。」
妄想力の規模の大きさに身を震わせる。そして屋上にいるからかより大きく思える。
そして気になる点がいくつも出てくる。
『女が年齢を言うのはおかしい?私はこの見た目だけど、こっちに来てからもう30年』
「そして俺よりも年上っ!?」
まだプリキュア的ふりふりなドレスを着てもギリギリ許される見た目に反してマストよりずっと年上だった。しかもこの世界に来てから30年と言うことは、見た目10歳+30ってことは40代だ。
『心だけが年老いてくれて助かった。だけど現実に戻る。この想いは変わらない。そのためにはマストの力が必要なんだ。』
「そうか、俺が神を倒せばいいんだな?なら、俺が倒してやる!」
神と闘う。普通なら想像がつかなくても身が引けるがマストは違った。意外にもやすやすと引き受けてくれるマストにモモキは思わず涙する。
読んでくださりありがとうございます!
次回はモモキの過去回想となります。重たい雰囲気の話が長く続きますがご辛抱してください…
そして!なんと、私の作品の挿絵を描いてくださる絵師さんが決まりました!!5月以内には発表出来ると思います(╹◡╹)
P.S.
キューピーのロゴのキューピーちゃんって男なの?天使なのに




