雨に隠れて
私は、今日死んだ者。
今日死んだけど、何処だか分からない所に居る。
寂しい。
冷たい。
寒い。
色んな感情が入ってくる、死んだ頭の中に。
気づけば何処だか分からない停留所が見えてくる。
だが雨が止む気配は無い。
雨は絶え間なく降り続き、当たるはずもない髪や体に当たる。
気づけば停留所で座っていた。蜘蛛の巣がかかっている寂れた停留所は、何処か温かく感じる。
何処かで見覚えがある。
「ひゃ~雨だぁ~!! うひぃ…………」
女の子がずぶ濡れのまま入ってきた。
大きさからするに、私と同い年かな。
鞄を傘代わりにしたせいで教科書から水が滴っている。
すると、女の子が此方の存在に気付いた。
「あれ、貴女。なんで濡れてないの?」
彼女はそう言う。
私は濡れていない自分の肌を見て、次に服を見て、次に地面を見る。
私の近くには何処にも水滴は無い。
「…………私はずっと居たから……………死んでから………」
「ふぅん、そうなんだ……………雨、止まないね………」
彼女はいかにも楽しそうな顔をして、曇天の空を見上げる。
私には分からない。
彼女が何故楽しそうにしているのかが、全く分からない。
怖い。
彼女がとても怖い。
「あ、貴女震えてるの? やっぱり濡れて来たんでしょ?」
彼女は満面の笑みで私に言い放つ。
私は震える右腕を押さえて、彼女から目を反らす。
なんだあの子は、あの目は。
私の事を見ているようで、全く見ていない。
これが恐怖。
ついさっきナイフを自分に刺すことに躊躇いはなかったのに、なんで今。
なんで今、彼女に恐怖を抱くの。
「あはは、目を反らさないでよ…………。何かあったんでしょ?」
彼女は向こうの曇天を見てそう言った。
何も言うことは無い。
「………………雨って………好き……?」
私は何も言おうとしていないのに、口が動く。
なんなんだ、この清々しい気分は。
まるで、誰かに認められたような気分。
「え? 私は雨は嫌いだなぁ。遊べないし、つまんないもん」
彼女は嫌な顔をしてそう言う。
そこでふと私は思う。
彼女は、嘘が吐けない。
「そうなんだ…………私は好き…………何でも許してくれるから………………楽しければ良いって事じゃないし………一歩ずつ歩けるなら、歩きたいから………」
勝手に口が動く。
体が熱い。
いや、熱くない、暖かい。
ママのお膝の上みたい。
パパの背中の上みたい。
なんなんだ、この感覚、この感情、この幸せ。
「へぇ、変なの。……………んじゃ、私はそろそろ行くね!! 部活が遅れちゃうよ」
彼女はそう言って高校のバックを持って走り出した。
彼女は小さいのに、大きく見えた。
また、会いたいと思った。
空に、五色の虹が出ていた。
「うひっ!? なんだぁ、部長でしたか。一緒に行きましょうよ」
「な、なんで赤司が…………よーいどん!!」
「ちょま………反則ですよっ………!!」
彼女らを見ていると、昔を思い出すな。
だけど、戻れない。
時間は、戻せない。
私は、消える。
じゃあね、楽しい子。
ども、音韻です。短編小説という事で、はりきって書きました。人間の暖かさ。やっぱり大事です。




