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雨に隠れて

作者: 杠 音韻
掲載日:2016/08/02

私は、今日死んだ者。

今日死んだけど、何処だか分からない所に居る。


寂しい。


冷たい。


寒い。


色んな感情が入ってくる、死んだ頭の中に。

気づけば何処だか分からない停留所が見えてくる。

だが雨が止む気配は無い。

雨は絶え間なく降り続き、当たるはずもない髪や体に当たる。


気づけば停留所で座っていた。蜘蛛の巣がかかっている寂れた停留所は、何処か温かく感じる。

何処かで見覚えがある。

「ひゃ~雨だぁ~!! うひぃ…………」

女の子がずぶ濡れのまま入ってきた。

大きさからするに、私と同い年かな。

鞄を傘代わりにしたせいで教科書から水が滴っている。

すると、女の子が此方の存在に気付いた。

「あれ、貴女。なんで濡れてないの?」

彼女はそう言う。

私は濡れていない自分の肌を見て、次に服を見て、次に地面を見る。

私の近くには何処にも水滴は無い。

「…………私はずっと居たから……………死んでから………」

「ふぅん、そうなんだ……………雨、止まないね………」

彼女はいかにも楽しそうな顔をして、曇天の空を見上げる。

私には分からない。

彼女が何故楽しそうにしているのかが、全く分からない。

怖い。

彼女がとても怖い。

「あ、貴女震えてるの? やっぱり濡れて来たんでしょ?」

彼女は満面の笑みで私に言い放つ。

私は震える右腕を押さえて、彼女から目を反らす。

なんだあの子は、あの目は。


私の事を見ているようで、全く見ていない。


これが恐怖。

ついさっきナイフを自分に刺すことに躊躇いはなかったのに、なんで今。

なんで今、彼女に恐怖を抱くの。

「あはは、目を反らさないでよ…………。何かあったんでしょ?」

彼女は向こうの曇天を見てそう言った。

何も言うことは無い。

「………………雨って………好き……?」

私は何も言おうとしていないのに、口が動く。

なんなんだ、この清々しい気分は。

まるで、誰かに認められたような気分。

「え? 私は雨は嫌いだなぁ。遊べないし、つまんないもん」

彼女は嫌な顔をしてそう言う。

そこでふと私は思う。


彼女は、嘘が()けない。


「そうなんだ…………私は好き…………何でも許してくれるから………………楽しければ良いって事じゃないし………一歩ずつ歩けるなら、歩きたいから………」

勝手に口が動く。

体が熱い。

いや、熱くない、暖かい。

ママのお膝の上みたい。

パパの背中の上みたい。

なんなんだ、この感覚、この感情、この幸せ。

「へぇ、変なの。……………んじゃ、私はそろそろ行くね!! 部活が遅れちゃうよ」

彼女はそう言って高校のバックを持って走り出した。

彼女は小さいのに、大きく見えた。

また、会いたいと思った。


空に、五色の虹が出ていた。


「うひっ!? なんだぁ、部長でしたか。一緒に行きましょうよ」

「な、なんで赤司が…………よーいどん!!」

「ちょま………反則ですよっ………!!」


彼女らを見ていると、昔を思い出すな。


だけど、戻れない。


時間は、戻せない。


私は、消える。

じゃあね、楽しい子。


ども、音韻です。短編小説という事で、はりきって書きました。人間の暖かさ。やっぱり大事です。

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