表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学校にはいろんな人が  作者: OYRAR
5/5

αのため息、δの手助け

α「はあ、」

α「ふう、」

α「はあ......」


溜息をつく。しかも三回。それだけ今日はいろんなことがあったわけだ。


α「なんで私、あんなキツイ態度をとっちゃったんだろ。でも、βが鈍感なのが悪いわけだし、あーでも、それならもっと積極的にアタックすればよかった......それこそ、μ先輩みたいに腕に抱きついてやれば......」


~妄想~


β「おい、くっつくなって歩きにくいだろ」

α「えへへー、βの腕ー」

β「どうしたんだよ、急に。やけに積極的だな、今日は」

α「あんたがなにもしてくれないから、もう我慢できなくなっちゃったの。責任、取ってよね」

β「責任って、俺は何をすればいいんだ?あまり無茶なことは言うんじゃねえぞ?」

α「付き合って」

β「え?付き合えって?え?」

α「そう、付き合って。買い物とか、そういうのじゃないからね」

β「え?それって、つまり......」

α「私と、恋人になって......β」

β「......」

α「だめ?私、ずっと待ってたんだよ?こんなに好きなのに......」

β「ダメなわけ、無いだろう。」

α「えっ?じゃ、じゃあ、」

β「ああ、俺からもお願いしたい。俺と......付き合ってくれ。俺もアルファのことが、好きだ」

α「っ!は...はい!喜んで!!」

β「恋人になった証、作らないか?俺も、もう、我慢できない」

α「βこそ、積極的だよ......でも、いいよ」

β「α、好きだ」

α「β、好き」

β「α...」

α「β...」


~妄想終わり~


そして私たちはそのまま......キャーーー!!

おもいっきり顔を赤くしてしまい、思わず顔を隠す。最近あいつと会っていなかったせいか、妄想の抑えが効かなくなっていた。現実ではそんなこと起こらないって分かっていても、妄想しちゃう。だって、私はアイツの事......

ようやく興奮も落ち着いてきたのか、顔を離してみる。周囲を見渡すと、生徒はだいたい席について、各々談笑している。またおんなじクラスだ、頭いいんだよなあ、あの人って、とか考える。この一年はこのクラスか、と眺める間にも、私の目は無意識にβの姿を探していた。


α「やっぱり、居ないよね。違うクラスだもん、しょうがないよ」


そう、私とβは、クラスが違うのだ。二年生は全部で四クラス。βは一組、私は四組。うぅ、よりにもよって一番離れてるなんて、運は私の味方にはなってくれないのね......これからどうしようか。今朝があんなだったから、これからの登校が気まずくなるかもしれないなぁ。はっ、もしかして、私、あいつに嫌われた?いや、鈍感なアイツの事だしそれすら気づかないかも。でもよりによって嫌いになる要素は反応してるかも!あーーーーもう!どうしたら良いのかなぁ......いっそのこと、あいつのことは諦めて、新しい出会いを探す?でもあいつが他の女と一緒にいるところは見たくないし。幼馴染として守ってあげなきゃ、これは義務よ、うんそうよ。


α「はー、疲れた。ちょっと寝よう......」


自分の積極性の無さに反省しつつ、顔を机に伏せる。冷たくて気持ちいい。暑くなった顔が冷めていくのを感じる。


α「すぅぅ~.......」


つん。

.........

つんつん。

......

つんつんつん。

...ちょっと、つつかないでよ、眠いんだから、ちょっと!


α「δ、やめてよ......眠いんだから......」

δ「おいおい、これから始業式だってのに寝る方がどうかしてるぜ。学校来る系の不良かよ(笑)」

α「あ、もうそんな時間なの。ごめん、迷惑かけたね。あと、同じクラスだったんだ、よろしくね」


むしろ不良に見えなくもない容姿のこの人は、名前をδという。男っぽい口調で、行動もボーイッシュな、産まれてくる性別間違えました、って感じ。去年同じクラスになってから、いろいろあって仲良くなった。δの方は、女友達も男友達もたくさんいる。先生とも仲が良いそうだ小耳に挟んだことだが、小学生の時点で、この性格は既に確立されていたらしい。クラスのムードメーカー的存在で、クラスメイトからは熱い支持を受けている。今年度もそうなりそうだ。


δ「どうせ、長々と校長の話があるんだからさ、そこで寝ろよ。」

α「うーん、そうするー。ふぁぁ~~~~」


教室から二人して出る。他の教室からもぞろぞろと出てきたのか、廊下が非常に騒がしい。一組の方を見たけど、βの姿は見つけられなかった。もう体育館に行ったのかな。


δ「そういえばお前さ、さっきからため息、すごかったぞ。周りが談笑してなかったら聞こえるレベルだぞ。なんかあったか?っと、お前のことだ、どうせ、βの野郎のことだよな」

α「察しが良いのね。まあ、δになら隠すつもりもないけど」

δ「悩み事か?ウチでよけりゃ聞くぞ」


これだけ活発な性格故か、良き相談相手として頼りにしている。男友達のおかげで、人脈は大変広く、恋愛事も相談の範疇なのだ。私から相談するのは今回が初めてじゃないけど、内容はいつものごとくβに関して。

とりあえず、今朝登校中に起きたことを事細かに話してみる。家を出たら、遠くにベータの姿を見つけたので、誘って、一緒に学校に行こうとしたこと。どうやって誘おうか、言葉を選んでいると、βがミュー先輩に絡まれていたこと。その光景がムカついて、βにきつく当たってしまい、気分を悪くさせてしまったかもしれないこと。いつもと同じような質問の気がするけど、今はそんなこと気にしていられなかった。


δ「おまえなー、その性格、マジで直さなきゃやべーぞ。でなきゃ、いつまでたってもその距離感は埋められねーぞ」

α「そんなこと言ったって......あいつ目の前にしたら......言いたいこと全部飛んじゃうんだって。性格云々の話じゃないって」

δ「(絵に描いたようなツンデレなんだな...正直αとβ(こいつら)を見てるのは楽しいが、いい加減何か進展があってもいいものを......だったら)じゃあ、ウチが見本見せてやろうか?」

α「んー、見本になってくれるのは嬉しいんだけど、あいつとδって、傍から見たら男友達みたいなんだよね、お互いに意識しなさすぎて」

δ「ま、とりあえず見とけよ。役には立つだろ。......あと」

α「ん?」


やっぱりδは頼りがいがある。勉強だけは私が教える側だから、教わりっぱなしってわけじゃ無いんだけど。それにしても本当に男っぽいなあ。女子からはよくそう言われるらしいけど、本人は気にしていないらしい。δ曰く、『体鍛えりゃ、スポーツでも男子とタメ張れるじゃん。憧れてたんだよな』だそうだ。実際、運動はすごくできる。体育の授業では、スポーツテストで男子に劣らない記録を出し、試合でも他の女子と違って女子用のハンデは与えられない。彼女自身が断ったらしい。さらに、種目問わず得意なようで、暇な時には部活の助っ人にも借り出される。一緒に帰った覚えがあまりないのはそういうことだ。そもそも通学路が違うから一緒に帰れないのだけど。

急に真面目な顔を見せたと思ったら、今度はニヤリと笑みを浮かべて、こちらの耳に口を近づけて......


δ「そのまま、βをウチのものにしちゃおうかな......ニヤ」


騒がしい廊下の中で、その一言だけは妙にはっきりと聞こえたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ