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学校にはいろんな人が  作者: OYRAR
1/5

βとθのおはよう

ギリシャ文字って、なんかかっこいいじゃないですか。



そういうことです(←どういうこと

β「朝か...」


目が覚める。まだ瞼が重い。目をこすりながら洗面所へ向かう。

顔を洗う。これでようやく覚醒する。俺の一日はここからはじまる。

制服を着る。いつものYシャツだな。一年間も着てるから違和感もない。


β「いい匂いがするな...」


台所へ向かう。美味しそうな匂いは朝でも胃をつついてくる。腹が減った。

匂いがするということは、台所には人がいるわけで...


θ「あ、お兄ちゃん、おはよう。朝ごはんで来てるよ」

β「おはよう。今日はスクランブルエッグか」


妹のθと朝の一言目を交わすのだった。


β「なあ、θ」

θ「どうしたの、お兄ちゃん」


机と朝食を挟みながら、向い合せになった俺達はベーコンを口に入れながら言葉を交わす。


β「その『お兄ちゃん』っての、いい加減やめてくれないか?」

θ「え、なんで?お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょ?」

β「お前は二年生になったんだから、そろそろ呼び方を変えるべきだと思うんだが」

θ「だって、『ベータ』ってなんか他人行儀じゃん。私たちは兄妹なんだから。お兄ちゃんだって別に嫌じゃないでしょ?」

β「それはそうだが...まあ、θがそれでいいなら俺は何も言えないか...」

θ「じゃあ、決定だね!お兄ちゃんは生涯私のお兄ちゃん!!」

β「はあ...」


こいつは俺のことを『お兄ちゃん』と呼んで譲らない。俺は正直どう呼ばれてもいいのだが、こいつは今年度から中学二年生だ。そんな歳になって未だに呼び方がそれでは妹の兄離れが心配である。俺の記憶では、こいつは俺のことを『お兄ちゃん』以外の名前で呼ぶところを聞いたことがない。どうしてそこまで兄弟関係をこだわるのか、俺にはわからない。以前その理由について聞いたことがあったが、適当にはぐらかされてしまった。追求すべきでないと俺の第六感が伝えているので、この話題についてはこの時以来持ちかけていない。まあ、いずれわかるだろう。

妹と他愛のない会話をしながら朝食を平らげる。歯磨きをし、忘れ物が無いか確認する。


β「よし、OKだな」

θ「お兄ちゃん、ハンカチ忘れてる!」

β「おっと、忘れてた」

θ「お兄ちゃん、筆箱忘れてる!」

β「そういえばそうだった」

θ「.....お兄ちゃん...」

β「なんだ?」

θ「上履き...」

β「あ...」

θ「もうお兄ちゃん鈍いよ!お鈍ちゃんだよ!」

β「うぅ...すまん」

θ「やっぱりお兄ちゃんは私がいないとダメだね!」


兄妹離れできていないのはむしろ俺の方であった。


なんだかんだで準備を済ませ、玄関の前に立つ。


θ「お兄ちゃん、ネクタイ縒れてるよ」


そう言いながらθは俺の正面に立ち、上目遣いで俺のネクタイを手に取る。準備ができていないのは荷物だけじゃなかったようだ。

というか、妹よ、近い。女の子特有の甘い匂いが鼻をくすぐる。


β「いいから、自分でできるから。指摘してくれてありがとな」

θ「いいの!お兄ちゃんは私がお世話するの!」


俺の発言は軽く打ちのめされ、妹は少し気分を害したのか、おでこにシワを寄せながらネクタイの撚れを直す。おい、なんでもっと近づく。離れろって。恥ずかしくないのかよ...

俺の思いは届くことなく、妹はネクタイ直しを終わらせる。


θ「今の私達って、なんだか夫婦みたいだよね」

β「へ?夫婦??おいおい、冗談はよせよ、θは俺のなんなんだ?」

θ「妹であり未来のお嫁さんだよ!お兄ちゃんの全ては妹の所有権により守られているんだよ!」

β「というか、ネクタイ終わったのなら離れろよ遅刻するぞ」

θ「今日学校が終わるまでのお兄ちゃん分を補給してるの!これがなければ私の行動力は半減するの!.....すぅぅ~~~.....はぁぁ~~~..........よし!補給終わり。それじゃ、私は先に行くね!行ってきまーす」


そう言って家を出る妹を見送った俺も靴を履き、出かける。


β「朝から元気すぎるんだよな、あいつは。まあ、今に始まったことでもないけどな。んじゃ、俺も行くか。クラス替えはどうなったかな。教科書も忘れないように買わねーとな」


学校生活は正直だるいしめんどくさい。しかも朝から妹とあんなことがあったおかげで若干の疲労感を訴えつつ、まだ少し眠気がある。でもそんな俺が少しテンションが高いのは、訳があった。

なんたって、今日は、高校二年生の始業式なのだから。春休みはいろいろあって、あまり遊べなかったから、久々に友人にも会えるわけだし、少しばかり楽しみなのである。当然、今日限りだけどな、明日から授業あるし。


そんなことを思いながら、俺は家のドアを開けた。


この一年間がどんなものよりも、そう、カルピスの原液なんかよりも濃い生活になることを知らないまま。

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