彼の手の温もりに包まれて(桜葵さんへの誕生日プレゼント)
「なんだか気が重いな…」
仕事で失敗して上司に怒られちゃった。
会社を出たら、すっかり暗くなっていた。
「えっ?」
いきなり手を取られて、引っ張られた。
彼だった。
「おいで」
何が何だか解らないまま、私は彼について行く。
彼に連れて来られたのは近くの公園だった。
「目を閉じて」
彼は私の手を包むようにして何かを握らせてくれた。
「誕生日おめでとう」
指輪だった。
「今はこんなのしか買えないけれど」
そう言って、頭を掻く彼。一目で安物だと判る指輪。彼にしてみれば、精一杯のサプライズ。
でも、私にはお似合いの指輪だと思った。
そして、私の手を包み込んでくれている彼の手がとても温かかった。素朴だけれど、心の優しい人。
私はその指輪を星空にかざしてみた。彼はその指輪を私の左手の薬指に。ちょっと大きくて私の指でくるくる回っている。
「つまり…。そういうこと…」
照れくさそうな彼の顔が赤くなっている。こんな誕生日…。きっと、どこの誰よりも私は幸せ。今度は私から彼の手を取った。
「ずっとこうしていてもいい?」
「ボクで良ければ…」
桜葵さん、誕生日おめでとうございます‼︎