意味がわかると怖い話 死の鏡
僕らは今、ある国に観光にきている。
彼女と旅行だ。
僕らはそこでひとつの鏡と出会った。
その鏡はとても大きくて横に並んだ僕ら二人を悠々と映してしまうくらいだ。
「死の鏡…だってー!なんか怖い名前…」
鏡の下に付いた小さなプレートをみて、彼女が言う。
「ん?なになに…この鏡を大切な人と並んで見つめてください?」
僕らは顔を見合わせた。当然のように僕らは並んで鏡を見つめてみる。
「なーんだ、なんにも起こらないじゃん。まあ、当たり前か。」
考えてみればそうだ、ただの鏡なのだから。
試しに僕は彼女の方を見て左腕を挙げた。
鏡の中の僕も左腕を挙げる。
彼女は僕の方を見て右腕を挙げた。
僕らは見つめ合い、微笑みあった。
それから僕らは足を挙げたり、ウィンクしたり、ピースをしたり、いろいろなことをした。
もう鏡なんて関係なかった。僕らはお互いしか見ていなかった。
「そろそろすることもなくなっていたし、いこっか」
気づけばもう陽が落ちかけている。
「あれ?」
プレートには鏡に正しく映らぬ者は近い内に死ぬ、そう小さく書かれていた。
「小さくて、気づかなかったけど、特に何もなかったよね!帰ろう!」
彼女は元気な声で言った。
大切な人との時間を大切に。
そう鏡から声が聞こえた気がした。
解説
僕は左腕を挙げた。ならば、鏡の中の僕は右腕を挙げるはず。
しかし鏡の中の僕は左腕を挙げた。鏡に正しく映っていない。
僕は近い内に死ぬのだろうか、大切な人を残して。




