球体
ある日、地球にひとつの球体が落下した。だがその物体には、何の変哲もない、小さな白い玉だった。
科学者たちが話す。
「あの中には、何が入っているのだろう」
「こじ開けでも、してみようか」
「よせ。何か得体の知らないものが入っているかもしれないぞ」
「しかし、気にはなるだろう」
こんな会話がなされ、まずX線が当てられた。しかし、中の様子をうかがい知ることはできなかった。
そのため、最終的に厳重な管理下の元で、こじ開けてみようということになった。
まず、球体に、何トンもの圧力が加えられた。しかし、効果がなかった。玉はただ、そこにあった。無理をすると、装置のほうが壊れてしまった。
次に、何千度もの炎が当てられた下、依然として、球はすすひとつつかずにそこにあった。
それから、マイナス二百七十度の冷気をあてたり、ダイヤモンドの刃で切断しようとしたが、いずれも効果がなかった。最後には核まで使われたが、結果は同じだった。
「これは、未知の物質に違いない」
と科学者は考え、この球体を切断すべく、さまざまな道具が発明された。
そしてついに、その球が切断された。
しかし、球の中身は空っぽだった。
「何だ、何もないじゃないか」
そうして、研究は終わった。
それから数年後、地球にまた、今度は前回の数倍の大きさの球が落下した。
科学者たちはその球を、前回の道具で切断した。すると、中から宇宙人が出てきた。
科学者たちは宇宙人に聞く。
「あなたが来る前、小さな球が地球に落下したのですが」
「ええ、私たちのものです」
「どうしてこんなことを?」
「生物がいるという星に宇宙船が着陸しても、すべて知能が高いのか、友好的なのかはわかりません。下手なことをすれば大勢の宇宙飛行士が死んでしまいます。これは、それを確かめるための方法なのですよ。さて、母星に連絡しましょう。この星は、知能が高く、友好的な生物のすむ星のようだ」